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コメは「不足」と認め増産へ...従来の「足りている」主張から180度転換 コメ農家「余ったときの対策を...」経費の増加や価格に懸念 専門家「重要なのは需給バランス。供給増なら輸出を増やすのも手」

解説

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 8月5日午後にコメの安定供給に関する政府の関係閣僚会議が開かれ、石破総理はコメの生産について、これまでの事実上の「生産調整」を見直し、「増産に舵を切る」と発表。歴代の農水大臣はコメは「足りている」としていましたが、その主張を180度転換することとなりました。 方針転換してすぐに増産は行えるのか?実際に農家から聞いた“生産者側の事情”や、流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解を交えお伝えします。

コメ増産について当事者は?

 滋賀県近江八幡市で27ヘクタールの水田でコメ作りをする三宅寛穂さんは「コメ増産のためには、雇用増→経費増を考えないといけない。この状況をふまえると、コメ価格は5kg3000円~3500円でないと厳しい」と話します。

 去年の春頃は5kgが2000円台前半だったため、それに比べると高いということになります。

 そして三宅さんは、「主食用米の農地を転作して、飼料用・加工用米を作っている。そのため増産することは可能だが、そのぶん飼料が減り、卵・肉の高騰につながる恐れもある。農地を集積しての大規模化についても、離れた農地の場合の移動コストが心配」とも話します。

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 ドローンでの農薬散布や衛星画像で育成管理するなど、スマート農業を積極活用して、兵庫県姫路市で27ヘクタールでコメ作りをする衣笠愛之さんは「増産は可能だが、水路の老朽化、ため池の減少など水の供給が安定していない。天候不順(暑さ)も懸念材料」ということで、『乾田直播』など検討の余地はさまざまありますが、現場では困惑もあるということでした。

もしも増産してコメが余ったら?

 話を聞いたコメ農家2人の共通の懸念点が「コメが余ったときの対策を示してもらわないと、コメ増産に踏み出せない」。

 コメがたくさんとれるということはそれだけ価格が下がる可能性があります。流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員は「コメ政策は需給バランスが重要。供給増なら需要も増やす必要。そのためには『輸出』を増やす」と話します。
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 農林水産省調べによるとコメ輸出の現状は、ここ数年、日本のコメ輸出は右肩上がりで、2025年1月~6月のデータを見ると前年の同じ時期と比べて14%輸出が増えています。

 海外の“日本食ブーム”というのが大きく、海外ではおにぎりが人気で、日本のコメだと冷めても粘り気がありおいしいということで、日本のコメを使うところが多くブームもあり、伸びていっているとみられます。
6.jpg そして、パックご飯の輸出量と金額も右肩上がりです。

 折笠俊輔主席研究員によりますと「日本のコメは海外需要があると思う。例えば、すしは世界中に広がったが必ずしも日本産米が使われているわけではない。海外の和食店で『日本産米使用』は付加価値になるのではないか」ということです。

「『生産者を増やす』『環境を整える』それが出来て初めて増産だと思う」

 神戸市内で開かれていたコメ農家などによる研究会。生産や流通などについて話し合う会で全国から約500人が一堂に集まっていました。研究会の最中に飛び込んできた「増産への政策転換」についてコメ農家は…

 (農家法人)「今までお米が足りないのは作る人がいなくて足りなくなっていた。そういう所を置き去りにして『作る作る』と言っても作れるものじゃない。まず『生産者を増やす』『環境を整える』それが出来て初めて増産だと思うんですよね」
 (コメ農家)「(生産調整は)政府を信用して今までしてきたこと。政府がちゃんと計算して言っていることならそれを信じますけど、勝手に『足りないから増やす』ということなら、農家はみんな憤慨するんじゃないんですか」

 コメの「増産」には今後、課題との向き合いが必要となりそうです。

2025年08月05日(火)現在の情報です

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