2025年11月14日(金)公開
兵庫県では今年度『クマの狩猟禁止』 理想の対策?兵庫県の"数の管理"とは 被害相次ぐ全国では難しい部分も「予算・人材・体制など不十分」と専門家
解説
クマによる人的被害は全国で100人を超え、過去最悪の13人が死亡しています。そんな中、11月13日から秋田県・岩手県では警察官によるライフル銃を使ったクマ駆除の運用が始まりました。 クマ対策の“正解”はあるのか?兵庫県では、20年前から“クマ管理”を行っているといいます。兵庫県の取り組みの特徴や効果、他の自治体での応用の可能性について、クマ対策に関わる兵庫県立大学・横山真弓教授への取材をふまえてMBS米澤飛鳥編集長がプレゼンテーションします。
なぜ?兵庫県では今年度『クマの狩猟禁止』

11月13日から、秋田県・岩手県で警察官によるライフル銃を使ったクマ駆除の運用が始まりました。市街地にクマが出没した際には、「緊急銃猟」の支援などを行うということもあるということです。
東北地方の状況に対し、兵庫県ではクマによる人身被害の事例があまり見られません。2023年度は0件、2024年度は2件、そして全国で被害が非常に多い今年度(※8月末時点)は、1件のみとなっています。
県によってもクマの数は違うため、一概に少ないと言い切ることができるものではありませんが、「比較的抑えられている」ということです。
全国の他の自治体ではクマの狩猟の取り組みが拡大されているところがある一方、兵庫県では今年度、クマの数が減っているためクマの狩猟禁止するということを決めています。
一体どういうことなのか?それは“数をコントロール”しているということです。
兵庫県のクマ対策に関わる兵庫県立大学・横山真弓教授によると「兵庫県はクマの頭数を把握し、設定した目安のもと数を管理している」ということです。
では、クマの数をどのようにして把握するのかでしょうか。兵庫県では20年以上前から、以下のような方法を取っています。
▽捕獲したクマたちマイクロチップをつけて放つ
▽次の捕獲期間で捕まえたクマのチップの有無を確認
▽マイクロチップ付きのクマの比率によって、年ごとの個体数を推定
捕まったクマに「マイクロチップがついてる個体」が多ければ増加の規模は大きくないとされ、逆に「マイクロチップがついていない個体」が多く捕まると増加していると考えられる、ということです。
兵庫県の施策 クマの“数の管理”とは

横山教授によると、兵庫県の政策方針は「クマを800頭ほどに調整している」ということです。
クマは自然に年15%ほどのペースで増えていくものだということですが、
▽推定生息数が400頭未満⇒狩猟捕獲はしない/有害捕獲は可能な限り殺処分せず
▽400頭~800頭未満⇒狩猟捕獲はしない/有害捕獲は原則殺処分
▽800頭以上⇒狩猟捕獲は可能/有害捕獲は原則殺処分
という原則で数をコントロールして、800頭を目安にするという施策が続けられています。
岩手や秋田では「頭数把握5年に1度」自治体での対策の難しさ

兵庫県はこのようなクマ対策をとっていますが、全国では難しい部分もあるといいます。
岩手県の担当者によると、「頭数把握は5年に1度。2022年で約3700頭。毎年調査をする余力なし」といい、秋田県の担当者も「頭数把握は5年に1度。2020年で約4400頭。把握より駆除を重視」ということです。この現状からは兵庫県のような頭数の管理をするのは難しいようにも見えますが、横山真弓教授は「実情把握しないと対応も遅れる。予算・人材・体制など不十分」といいます。
兵庫県で数の管理を続けることができているのは、まだクマの頭数が少なかった頃に施策を開始しているためと考えられます。兵庫県がクマ管理政策を始めた約20年前は100頭前後だったということで、現在とは規模感が異なるようです。
クマ対策の“正解”は?

こうした中、予算委員会の答弁で高市早苗総理は、自治体へのクマ対策の財政を支援するということを述べています。クマ被害の対策施策パッケージというのを取りまとめ、自治体への補助などを打ち出すということです。
クマの対策は地域の実情に合わせて変わってくる部分もあるということで、国もリードをしながら進めていくべきものであると考えられます。
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