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【原案可決98%】県庁前では「斎藤やめろ!」それでも"着々と進んでいる"斎藤県政『県立大無償化』『子育て支援』など 再選から1年の兵庫県政を検証

解説

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 再選から1年を迎えた兵庫県の斎藤元彦知事。告発文書問題を受け辞職するも、去年11月の出直し選で返り咲き、以降は県立大学の無償化など目玉政策を着々と進めています。 一方、文書問題をめぐっては、知事に反対するデモが県庁周辺で今も行われていて、知事と県議会の緊張関係は依然続いています。 こうした状況に県民からは、「子育て支援など手厚く対応していただいている」と政策面を評価する声がある一方、文書問題については「今までの経緯などもう少し表立って説明があれば」といった意見も聞かれます。 再選から1年。斎藤知事をめぐる問題、そして兵庫県政は今どうなっているのか?大正大学・江藤俊昭教授、ジャーナリスト・立岩陽一郎氏の見解を交えてお伝えします。

改めて振り返る 斎藤知事をめぐる一連の問題

 再選から1年を迎えた斎藤知事。まずは、知事をめぐる一連の問題について、これまでの経緯を振り返ります。

<2024年>
▼3月中旬   知事のパワハラ疑惑などの告発文書
▼5月7日   県が内部調査 元県民局長を懲戒処分
▼6月13日  百条委員会 設置決定
▼7月7日   元県民局長が死亡
▼9月19日  斎藤知事の不信任決議が可決
▼11月17日 知事選で斎藤氏が再選

<2025年>
▼3月4日   百条委が調査結果を公表「違法の可能性」
▼3月19日  告発文書問題を調べる第三者委が「県の対応違法」
▼5月27日  私的情報漏えいを調べる第三者委が「斎藤知事が指示した可能性」を指摘

3つが「不起訴」 1つが「捜査継続中」

 以上のように、様々な指摘がなされてきましたが、「不起訴」となった事案と「捜査継続中」の事案があります。

▼PR会社に選挙運動の報酬支払う(公職選挙法違反容疑)
 ⇒「不起訴」
▼プロ野球優勝パレードの不正経費支出(背任容疑)
 ⇒「不起訴」
▼県に贈られたワインを知事が持ち帰る(背任容疑)
 ⇒「不起訴」
▼告発文書の作成者の私的情報漏えい(地方公務員法違反容疑)
 ⇒「捜査継続」

 PR会社への報酬支払いについては、刑事告発した弁護士などが不起訴処分を「不服」として検察審査会に審査申し立てをしています。

 また、私的情報漏えいについては「斉藤知事の指示のもと行われた」との指摘がありましたが、斎藤知事は否定。一方、知事は自身の“管理責任”に言及し、自らの給料を5割カットする条例改正案を6月の議会に提出しました。しかし、議会側は「説明も解明もされていない」として、6月と9月いずれの議会でも採決を見送り、継続審議となっています。

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 こうした斎藤知事の対応について、大正大学・江藤俊昭教授は、「再選しても起訴されなくても、百条委や第三者委の指摘に真摯な対応が必要。議会もアクションを起こすべき」と指摘。

 また、ジャーナリストの立岩陽一郎氏は、「健全な民主主義を実現するための手続きとして、公益通報者保護などの制度がある」「兵庫県だけの問題ではない」と言います。

 今後、仮に「起訴」されたとしても、知事が「失職」するという規定はありません。ただし、再び議会側が「不信任決議」を出す可能性は残されています。

議会は“モヤモヤ” 議長は“苦言”

 知事の対応について、議会側は“モヤモヤ”を抱えているようです。山口晋平議長からは、“苦言”とも取れる発言がありました。

 (10月22日 山口晋平議長 県議会定例会の閉会時)
 「(文書問題などに関する)質疑に対する答弁などにおいて、一部議論が深まらなかったという側面が否定できず、議会として決して本意ではないことを申し添えておきます」

 このコメントの背景には、文書問題をめぐる質疑において、「告発者の処分を撤回しないのか」などの質問が議員から出たとき、斎藤知事が同じような回答を繰り返していたという経緯があったようです。

「斎藤やめろ!」会見場まで響く声…県庁前の“異様な空気”

 “モヤモヤ”は議会の外でも…実は今、毎週行われている斎藤知事の定例会見に合わせて、兵庫県庁前の歩道橋に多くの人が集まり、斎藤知事に反対するデモが行われているのです。

 その中には、静かにプラカードを掲げる“斎藤知事賛成派”の人もいて、歩道橋の上で賛成派と反対派が混在している状態です。

 デモの声は会見場内にも届き、窓際に近い記者席では知事の声が聞こえづらく、知事も質問を聞きなおす場面が散見されます。

知事提出議案98%以上が「原案可決」 “分断下”で進む斎藤県政

 こうした混乱の中、兵庫県政が“着々と進んでいる”と捉えられる数字があります。

 再選以降、斎藤知事が提出した197議案のうち、194議案が「原案のとおり可決」。この中には、知事の目玉政策「県立大の授業料無償化」なども含まれていて、政策は前に進んでいると言えるでしょう。

 一方、兵庫県議からは以下のような意見も聞かれました。
 ▼「知事の議案は可決続く。議会が知事に対して“及び腰”ともとれる」
 ▼「知事は一連の問題にちゃんと対応してから政策の議論をするべき」

 つまり、現在の兵庫は「県政は進んでいるが知事と議会が“分断”されている」という状態にあるのです。

 有権者に取材をすると、「一連の問題について、しっかりと説明してほしい」「(文書問題では)結局伝わってくるのは知事の同じ言葉ばかり」などの声がある反面、「子育て支援」など政策面を評価する声も多く、この2つの思いを同時に抱えている人が多いという印象です。

 立岩陽一郎氏は「民主主義の制度を維持しながら物事を進める、というところに立ち返らないと、短期的には進んだように見えても長期的には禍根を残すことがある」と指摘しました。

 依然として混乱・分断が続きながらも、斎藤県政は前に進んでいるようです。兵庫県政のゆくえがどうなっていくのか、今後も注視していく必要がありそうです。

2025年11月21日(金)現在の情報です

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