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【空き家放置リスク】最大の課題は「所有者の無頓着・無関心」解体費用が高くて放置...やはりお金がネックに?空き家数は過去最多『900万戸』そのウラには"相続問題"が?

解説

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 11月18日に大分・佐賀関の住宅密集地で起きた大規模火災。実はこの地域は“空き家”が多く、以前から防災面での懸念があったといいます。 少子高齢化を背景に増え続ける空き家。全国で900万戸と過去最多を更新し、30年前の約2倍となっています。関西各地の自治体も、倒壊性の危険性が高い空き家を行政代執行で解体に乗り出すなど対策を強化していますが、追いついていません。 空き屋増加の現状は?なぜ活用が進まない?どう対策すれば?日本総研・調査部の下田裕介主任研究員、NPO法人・空き家サポートおおいたへの取材をもとにお伝えします。

右肩上がりで空き家増加…そのウラには「相続問題」

 今回、大規模火災が発生した大分・佐賀関地区。実は、被害のあった約170棟のうち約70棟が「空き家」でした。この地域では、4200世帯のうち561棟が空き家(2020年度のデータ)だということも分かっています。

 総務省によると、1958年以降、空き家数は右肩上がりで増加していて、2023年時点は過去最多の900万戸を記録。都市部では団地・ニュータウンなどで増えているようです。

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 空き家増加の背景にあるのが「相続」の問題です。相続財産の構成比(2023年・国税庁)を見ると、最も多いのは不動産(土地・家屋)で、36.5%を占めています。

 <相続財産の構成比>
 ▼不動産(土地・家屋) 36.5%
 ▼現金・預貯金等    31.5%
 ▼有価証券       17.1%
 ▼その他        11.4%

 このように、相続は行われているものの「教育環境が整っていない」「住み慣れた地域を離れたくない」など、現役世代は教育・利便性を重視して実家に住み替えない傾向にあり、それが空き家増加につながっていると考えられます。

火災・倒壊・治安悪化…様々な空き家リスク

 空き家には「火災・倒壊」「治安悪化」「景観悪化」「衛生問題」といった様々なリスクが。人命に関わる屋根やブロック塀の倒壊、空き家を拠点にした犯罪、ゴミ不法投棄などは「資産価値の低下」につながります。

関西の「空き家率」高い県は?

 関西の空き家率を見ると、和歌山・徳島の数字が高く、全国ワーストとなっています。

 <関西の空き家率>
 ▼滋賀   12.1%
 ▼京都   13.1%
 ▼兵庫   13.8%
 ▼大阪   14.3%
 ▼奈良   14.6%
 ▼和歌山  21.2%
 ▼徳島   21.2%
 ▼全国平均 13.8%
 (総務省・2023年度)

 高齢化・人口減少が進む地域や、実家を継がない人が多い地域ほど、空き家率が高くなっています。

やはりネックは“お金”…進まない空き家活用

 なぜ空き家活用が進まないのか?空き家活用・相談に取り組む「NPO法人 空き家サポートおおいた」によると、今回大規模火災があった佐賀関は、次のような状況に置かれていると言います。

 ▼佐賀関は海が近く魅力はあるが…利便性が低く移住希望者が見つかりにくい
 ▼持ち主が「無償で渡したい」と希望しても…見つからないこともある

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 その背景にあるのが、お金の問題。修繕には多額の費用がかかるほか、人件費高騰で解体費用も高くなっています。

 <空き家の解体費用の現状>
 ▼広島・廿日市市(木造2階建て・27.25坪)
  ⇒ 約60万円
 ▼神奈川・藤沢市(木造2階建て・42.89坪)
  ⇒ 約128万円
 ▼広島・尾道市(木造2階建て・50.72坪)
  ⇒ 約265万円
 ※クラッソーネHPを基に日本総研作成

 道が狭く重機が入りにくい佐賀関地区では、解体費用が2倍以上に増える事例も。費用がネックとなり、所有者が解体を断念した結果、空き家が放置されているのです。

「空き家・空き地バンク」マッチング進む自治体の特徴とは?

 こうした状況のなか、国は空き家の“認定方法”を変えるなど、対策を行っています。

 ▼「特定空家」(2015年~)
 放置すると倒壊等のおそれがある空き家
 ⇒勧告を受けると「固定資産税の優遇なし」

 ▼「管理不全空家」 (2023年~)
 窓の破損など管理が不十分
 ⇒勧告を受けると「固定資産税の優遇なし」

 管理不全空家については、緊急代執行費用の徴収が可能に。危険な空き家を行政が取り壊す際、所有者からその費用を徴収することができるようになりました。

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 また、国交省は「全国版 空き家・空き地バンク」の運用を開始。参加自治体は1125、掲載物件は約1万8000戸にのぼっていますが、空き家のマッチングが進む自治体・進まない自治体、それぞれに特徴があるということです。

 <マッチングが進む自治体>
 ▼積極的に修繕費の補助や移住者のサポートを用意
 ▼専門家がサポートしている地域は成功しやすい

 <マッチングが進まない自治体>
 ▼自治体職員の人手不足
 ▼相続や権利関係など専門知識不足

「民泊」「リノベ」など新しい活用例も

 今後、空き家活用はどうなっていくのでしょうか?具体的には、以下のような活用事例も出てきています。

 ▼観光資源がある地域では…
  ⇒福祉施設・商業施設として活用
 ▼団地では…
 ⇒リノベ+低家賃 若い世代が流入する成功例も
 ▼外国人向けでは…
 ⇒民泊に活用する動きも

 日本総研の下田氏によると、空き家活用には「民間企業や地元NPOなどとの協力・連携が必要」だということです。

 また、空き家サポートおおいたは「空き家を隣家や近隣の人が買いやすく、譲りやすくする制度を充実させる」ことが重要だと指摘。そうすることで、「点在する空き家をまとめ、待避所や小さな公園として使える空き地を作ることができる」と言います。今回火災のあった佐賀関地区は空き家が少なかったそうです。

最大の問題は「所有者の無頓着・無関心」

 空き家問題の最大の課題は、「空き家所有者の無頓着・無関心」にあると言います。「住むわけでもない家の管理が面倒」「手続きに費用がかかる」といった理由で長らく放置してしまうのです。

 一部の自治体では、ふるさと納税の返礼品として「空き家の管理サービス」を提供しています。
 ▼京都  舞鶴・綾部・京丹後
 ▼兵庫  香美町・朝来・養父・相生・南あわじ
 ▼和歌山 新宮 田辺

 こうした制度を利用し、費用を抑えながら管理することも可能です。空き家には適切な管理が不可欠であると、所有者が問題意識を持つことが必要かもしれません。

2025年11月23日(日)現在の情報です

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