2025年07月31日(木)公開
【水不足】日本は雨降って海に流れてしまう国 シャワー『1分出しっぱなし』で10リットル失う 補助金が出る節水対策もあるらしい
解説
厳しい暑さが続く中、深刻な水不足が起きています。兵庫県では、三宝ダムの貯水率が半分以下になり、夏の市営プールが営業中止になりました。水不足に対して私たちができる対策、さらに社会全体で考えていくべきこと、専門家や水のプロらの見解をまとめました。◎橋本淳司:武蔵野大学客員教授 水ジャーナリスト◎吉村和就:グローバルウォータ・ジャパン代表◎新田洋司:福島大学教授
近畿北部では降水量が去年のわずか10%
史上最も早い梅雨明け。気象庁の7月27日までの30日間合計降水量を見ると、大阪市では103ミリほどで平年の56%ですが、兵庫県豊岡市は20ミリで平年の10%、京都府舞鶴市は19ミリで平年比の9%と非常に少なくなりました。
日本の水資源の3分の1は「梅雨」と「台風」だそうで、災害は心配ですが、水不足という意味でいうと、台風が来てくれることで補える水もあるそうです。
丹波市立春日レジャープールは、7月23日に営業を開始しましたが、わずか3日で営業中止を発表。水源である三宝ダムの貯水率が28日午前で39.5%となっています。30%を切ると夜間の減圧給水、20%を切ると夜間断水もあり得るということです。
水不足になると、主に生活用水、農業用水、工業用水に影響が出てきます。1994年の大渇水の影響は以下の通り。
関西での取水制限
琵琶湖:43日間
木津川3ダム:50日間
室生ダム:70日間
一庫ダム:277日間
実は近畿の全ダムが渇水状態になっているわけではなく、28日午前時点で、琵琶湖ではマイナス30cmとなっています。これがマイナス90cmほどになってくると、節水なども考え始めなくてはいけないそうです。
水不足 コメにどんな影響が?
コメへの影響について見ていきます。福島大学の新田洋司教授によりますと、稲については6月中旬からは中干しと言われ、田んぼの水を少し抜いて、強い稲だけ残そうという選別期で、その時期は雨が少なくてもそこまで影響がありません。
しかし7月下旬から8月上旬は出穂期(稲が穂を出し開花し受粉)と言われて水が必要です。そのため、いま水がなくなると収穫に直接影響。高温だけでなく水が足りないことで、収穫量が減ったり、薄く小さくなったり、中身がスカスカで白濁することもあるそうです。
実は2年前にこのような状況になった影響が今のコメ不足に繋がっていると言われているので、今年また同じことが起こると、秋のコメがどうなるか心配されます。
できること3つ「水の出しっぱなしダメ」「水漏れチェック」「雨水タンクの設置」
生活用水への影響もあるということで水不足に備えて今のうちからできることとは?
まず“出しっぱなし”をやめる。1分間出しっぱなしにすると、蛇口なら12L、シャワーなら10Lの水が流れます。1分を30秒に減らすだけで、6Lの節水に。これを1週間続けると42Lとなります。
そしてもう1つは「水漏れチェック」。手順は以下の通り。
①すべての蛇口を閉める
②トイレに水が流れていないか確認
③水道メーターを確認
全ての水を使わない状態で、メーターが止まってるかどうかの確認をしてください。
そしてこんなデータも。水道管の老朽化率の全国平均は23.6%で、都道府県別で見ると、ワースト1位が大阪府の33.8%です。家の前の道までの太い水道管から家庭に引く水道管は、責任は各家庭にあるそうです。そこで水漏れが起こっているかどうかは自分でチェックして直さないといけないということです。
他に各家庭でできることでいうと、「雨水タンク」の設置が挙げられます。実は各家庭の雨水タンクの設置は2014年から努力義務となっています。ホームセンターなどでは数万円で売っていて、自治体によっては補助金が出ます。
【大阪府 雨水タンク設置の助成制度】
大阪市、寝屋川市、和泉市 購入可価格の2分の1(上限3万円)
高槻市 設置費用の3分の1(上限1万円)
茨木市 購入価格の3分の2(上限3万円)
高石市 購入価格の3分の2(上限4万円)
また、雨水を下水道に直接放流せず貯水し、地中にゆっくり浸透させつ構造の植栽空間である「雨庭」をつくる取り組みも行われていて、京都市では、2024年度末までに合計16か所の雨庭を整備しています。
年間の水資源保有量は世界平均の半分!?
1人当たりの年間の水資源保有量は世界平均約7000立方メートルですが、日本は半分にも満たない約3400立方メートルとなっています。
日本は降雨量は多いですが、人口が多いことと、海から山への距離が短くて、川の水がすぐに海に戻ってしまうことが原因だそうです。その川の循環は「1泊2日」と言われていて、水資源が目の前に多いようで、確保しにくい国という見方もあるそうです。
そうなると、貯水が大事になってきますが、どうやって水を溜めるのか?一番イメージしやすいのは「ダム」ですが、そのダムも老朽化で水漏れが起こったり、底に土砂が堆積したりと心配だらけだということです。
比較的新しいダムは、水中に堆積していく砂や土を取り除く機能を付けてるものもあるそうですが、昔できたダムの多くでは、堆積した土を取り除く技術はまだ確立されていないそうです。どんどん底が浅くなっていくということは、貯められる水の量も少なくなっていきます。
既存ダムの「かさ上げ」案 コスト面での課題も
そこで、今出てきてる話がダムのかさ上げだそうです。高さを加えるだけではなく、かかる水圧に耐えるために全体にコンクリートが必要ということでこちらもコストがかかります。
今まで上水道整備は厚生労働省、下水道整備は国土交通省と別れていましたが、去年4月から国交省に一元化されました。水道事業の経営基盤の強化、老朽化や耐震化への対応、災害発生時における早急な復旧支援、渇水への対応などを行います。
いっぽう、ダム以外で、水不足に対して利用できそうな水は以下のどれでしょう。
①海水
②下水
③雪
④地下水
海水を淡水化して利用したり、下水を上水化するのにはコストがかかります。雪は、春先までたまった水が出始めてくれるという天然のダムの役割を果たしますが、温暖化で積雪量そのものが減っています。最後の地下水ですが、かつて感染症が広がった問題などで、水道に変わっていきましたが、熊本県などは水道水を地下水から取っているということで、もう1回ここを見直すという話も出てきています。
水不足、わたし達の「水は豊かにある」という意識をスイッチしていく必要があるかもしれません。
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