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油断しがちな小さな川も突然"危険な川"に!?夏休み本番、川の事故に注意 「雨が降っているのに水かさ減る」「川の上流に黒い雲」は危険のサイン【MBSお天気通信】

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はじめまして。気象予報士の松田貢児です。福岡出身の九州男児で、この春、長崎から大阪へとやってきました。只今、関西の情報を全力で収集中です。さて、今年、西日本では記録的に早い梅雨明けとなり、異例の猛暑が続いています。こんな時、涼しい川の近くで過ごしたいものですが、油断していると思わぬ水難事故にあうおそれがあります。夏休み真っただ中、きょうは川の急な増水についてお伝えします。

海より多い子どもの「川の事故」

警察庁発表の「令和6年における水難の概況等」によりますと、中学生以下の子どもの水難の死者・行方不明者は28人にのぼります。場所別では、「川」が64.3%と最も多く、次いで「海」が17.9%と、「川」は「海」の3.5倍以上です。海のほうが危険なイメージがありますが、川での水難事故のほうが圧倒的に多く、普段はおだやかな川も状況によっては、危険な川になります。

神戸市で5人が亡くなった都賀川(とががわ)の水難事故

2008年7月28日の午後、突然の雷雨で神戸市灘区を流れる都賀川の水位が急激に増水し、橋の下で雨宿りなどをしていた子どもを含む5人が命を落とすという水難事故が起きました。

都賀川は六甲おろしで有名な六甲山水系で、六甲山系の南斜面から神戸市を通り大阪湾に流れています。都賀川の全長(川の長さ)は1.8km。一方、琵琶湖から京都、大阪を流れる一級河川の淀川の全長は75.1kmで、都賀川は淀川の約42分の1しかない小さな川です。 

また、都賀川の川幅は15~20mくらいで、大阪の道頓堀川の川幅が30~50mくらい、小学校の25mのプールよりも狭い川幅です。

当日の神戸市の降水量は、14時から15時の間に23.5mmの強い雨を観測しています。ただ、1時間に10mmから30mm以下の雨は、神戸市では平年7月は5日くらい降ることもあり、通常であれば災害が起こるほどの雨の量ではありません。では、なぜ都賀川は急激に水位が上昇したのでしょうか?

小さな川は氾濫しやすい

川幅が広く、川の傾きがなだらかな大きな川は、水位上昇速度は比較的ゆっくりで、早くても1時間に1~2m程度です。一方、中小河川は川幅が狭く、川の傾きが急です。そのため、小さな川は流せる水の量が少ないので水位の上昇が早く、1時間に10mを超えることもあります(河川の減災マニュアルより)。そのため、小さな川の方が溢れやすいのです。

都賀川は事故当時、10分間に1.3mも水位が上昇しました。成人男性でも水深が80cm程度で歩行が困難になりますので、1.3mは子どもだと流されてしまうのです。
3増水前と増水後.jpg

こんな時は川の増水の前兆

(1)川の上流に黒い雲
川の上流に黒い雲があるとそこで大雨が降っている可能性があります。上流で降った雨がしばらくしてから下流へと流れ下ってきます。特に小さな川では川の距離が短く一気に増水することがありますので川上の空の様子を観察しておくことが大切です。       

(2)雨が降っているのに急に水かさが減る
急に水かさが減るのは、川の上流で短時間に大雨が降ると崩れた土砂が天然のダムを作り、降った雨をせき止めている時に見られる現象です。この天然ダムが決壊すると土や石と一緒に一気に川の水が流れ下ってきます。これを土石流といいます。川に流木や落ち葉が流れてくるのも土石流の前兆です。

各自治体や川では、水難事故防止の標識を設置したり、注意報が発表されたりしたら警告灯が光る取り組みをしている所もあります。特に小さな川では数10分で川の水位が急上昇して危険な状態になることがありますので、空や川の異変を察知したら速やかに川から離れましょう。

川に出かける前には天気をチェック

気象庁のホームページでは自分の住んでいる地域の情報をカスタマイズすることができます。雨雲レーダーや現在の注意報・警報や今後の推移、当日の地元の気象台からのコメントなどが同時に見られて大変便利です。

そして、川に着いたら随時スマートフォンのアプリなどで、雨雲の動きをチェックしましょう。自治体の防災ポータルサイトなどもあります。

私も子どもを川に連れて行ったときは、子どもから目を離さず、空の様子と携帯のレーダー画像を頻繁に確認していました。

ちょっとした油断が水難事故につながることがありますので、空の様子と情報に注意しながら、楽しい夏の思い出をつくってください。

文 松田貢児
毎日放送 気象予報士(南気象予報士事務所所属)
MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」に出演中。
防災士・気象防災アドバイザー有資格

2025年08月02日(土)現在の情報です

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