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2026年の日本経済は「設備投資」が鍵を握る?即時償却のメッセージで企業に20年ぶりの国内投資ブームが再来するか【りそな総研 荒木氏の解説】

解説

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 日本経済の2026年の展望。りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員が注目するのは、過去の経済政策から、企業の「設備投資」重視へと打ち出した高市政権の政策だ。経済安全保障の名の下で半導体、資源エネルギー、造船など17分野に絞り込み、設備投資に対する税の優遇策は、本当に日本経済を変えられるのか。

消費喚起と両輪 設備投資を促す税政策に注目

 2026年の日本経済は、世界経済が芳しくない中で自力成長できるかが焦点となる。りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は「特に高市政権の政治経済政策がどう効いてくるかで、成長がかなり左右される」と指摘する。

 この20~30年にわたり低成長が続いてきた日本経済。消費の押し上げと企業の設備投資は2本柱だが、これまでの政権は、消費を押し上げる戦略に力点を置いてきた。しかし、物価高が進む中で中間層の節約志向が強く、期待したような消費拡大は実現していない。

 一方設備投資については、「設備投資の押し上げに向けた方向性は示されていた一方、その具体的な施策があまり出てきていなかった」と荒木氏は語る。様々なメニューは示されたものの、企業が本格的に動き出すほどの「本気度」を感じさせる政策ではなかったという。そんな中、来年度の税制大綱で挙げた企業の設備投資についての対応に荒木氏は期待を示す。

経済安全保障で浮上した「国内生産回帰」の機運

 なぜ今、設備投資なのか。背景にあるのは経済安全保障という世界情勢の変化だ。

――経済安全保障という掛け声で企業がどれぐらい動くでしょうか。かなり強いインセンティブが必要ではないですか。

 荒木氏「経済安全保障への対応の気運がかなり高まっているのも事実です。チャイナリスクもかなり意識されていますし、トランプ関税の対応を迫られているところもあります。人件費については、国内生産に戻ってくる際に生産の自動化を同時に行うことで、海外との格差の問題はある程度払拭されます。元々人手不足で、新たな人材の確保が難しいこともあって、自動化はかなり進んでいます。」
 資源・エネルギー・農業といった分野は、元々輸入に依存していた領域だ。「それを国内で自給していこうというところは大事なポイント」と荒木氏。これらは国内需要が確実に存在する分野であり、造船業界も注目分野の一つだ。
 「かつて日本のお家芸と言われた造船は、中国や韓国に後れを取っている。防衛関係の部分とも絡んできますけれども、もう一度技術の維持も含めて、生産能力を押し上げていく」ということのようだ。

即時償却とは― 企業を動かす税制優遇策

 設備投資を促すのは「即時償却」だ。通常、企業が工場などの固定資産を取得した場合、その費用は定められた期間に分けて償却(=減価償却)する。今回は設備投資を1年で償却できる「即時償却」がポイントだと荒木氏は話す。

 「設備投資に費やしたコストを費用計上できると、企業は払う税金が減る。即時償却がトリガーになって設備投資をやろうというところもあるでしょうし、いつやろうかなと考えていたところがこの政策が出たというところで、やりましょうというところも出てくるでしょう」。
 「資源、エネルギー、食料品の国内生産は喫緊の課題であると。大企業を含めてやりましょうというところは、かなりシグナルとしては大きい」と荒木氏。

リーマン・ショック以降失われた「国内大型投資」の復活は

 「メーカーが1兆円を投資して大工場を作るとか、久しく聞いていないじゃないですか」――荒木氏のこの言葉は、日本経済の長い停滞を象徴している。

 リーマン・ショック、そして東日本大震災とその後の円高。大きな出来事もきっかけに、日本企業の投資は海外へとどんどん流出していった。ちょうどその時期は、中国が世界からの投資を集め、世界の生産拠点として台頭していたタイミングでもあった。

 半導体では熊本や北海道への投資があるが、「幅広い分野でというのは記憶にないと思います。特にリーマン・ショック以降は少ないのではないでしょうか」と荒木氏。20年以上ぶりに、国内への大規模投資ブームの再来にも期待が持てるかもしれない。

 ただし、20年前とは環境が全く違う点に注意が必要だ。「いくら企業が工場を建てたくても、建設業界が対応できなければできない」。業界の深刻な人手不足が、設備投資ブームの実現を妨げる可能性がある。

関西経済――万博後の新たな原動力

 2025年の大阪・関西万博は終了したが、荒木氏のリポートによると、その経済効果は想定と若干異なる側面があった。
 事前の予想では、通常のインバウンド観光客に加えて万博向けの客も来るため、ホテル不足になると見られていた。しかし実際には、万博以外を目的としたインバウンドの来阪が減少していたのだ。「もちろん万博による相応の効果は生まれたものの、万博の直接的な影響を受ける業界やエリアは好調だった一方、関西全体で見るとそうではないエリアも期間中にあった」と荒木氏。国内旅行客についても、万博に需要が集中したため、それ以外の観光拠点に客が来なかったという。

 2026年の関西経済には、やはり設備投資支援策に注目しているという。
 「大阪、神戸には造船に関する拠点が多いので、改めて光が当たるというところは大きな注目点になってきます」と荒木氏。さらに再生可能エネルギー分野でも関西は強みを持ち、堺でのペロブスカイト太陽電池の生産計画のほか、水素やアンモニアの活用、EV用電池の生産など「今後の脱炭素、再生可能エネルギーに関しては、かなり関西には強い企業も多い」という。また創薬・先端医療分野、フュージョンエネルギーに関する拠点も関西に集中しているという。
 インバウンドが成長を押し上げるというイメージが強い関西経済だが、「そこに加えて高市政権の設備投資支援が追い風になるエリアだと見ていい」と荒木氏は語る。

副首都構想――IT投資と企業の拠点戦略が変わる

 一方、副首都構想について荒木氏は、「そもそも副首都ってなんでしょうかねというところから始まる」と定義づけから考える。

 「現時点で想定されるのは、ハコモノが新しくできるイメージというよりも、有事の際に首都機能が別のエリアで機能できるような、ITを中心にした通信インフラの整備が中心ではないかと思っております。そういった意味を含めて、首都機能が指す範囲について」注目している。
 また、副首都の場所はわからないものの、「企業もそれに対応した動きが出てくる」と見る。大企業の本社機能の確保に伴う、新たな設備の設置や、ITインフラの構築といった流れが期待できるという。

日中関係の悪化はリスク要因

 一方で警戒すべきマイナス要因は「やっぱり日中間の関係だと思います」と荒木氏。現在、中国からの渡航制限が継続中だが、「これがエスカレートしていけば、当然観光業界のみならず、いろんな形で影響が広がってきます」。特に関西は中国と経済的な結びつきが強く、全国的に見ても警戒すべき部分だという。

 だからこそ、「なおさら国内で自力で経済成長していく必要が高いというところで、政権の手腕が問われる」という。

 「不安もありますけれども期待度も高いと思っています」
 20年以上にわたり、日本では大型の国内投資というニュースがほとんどなかった。それが今年、変わる可能性がある。「20年以上なかった、あれが再来する期待度は高いので、そうなればいろんな部分が変わってきます」。荒木氏の言葉が、2026年の展望を端的に表している。

2026年01月06日(火)現在の情報です

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