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【対策費は月100万円】大阪・ミナミが"観光ごみ"で埋もれる?回収コスト負担する商店会は不安「いつまで続けていけるか...」 自動的に1/5に圧縮する『スマートごみ箱』など導入

解説

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 コロナ禍以降の観光客の増加とともに、大阪・ミナミで問題となっているごみのポイ捨て。 防犯対策などのため、これまでごみ箱を設置できなかった道頓堀商店会は、「実証実験」という形をとることで2023年、自動でごみを圧縮する最先端のごみ箱を道頓堀通りの10か所に設置しました。 一方、ごみ箱の管理・ごみの回収にかかる費用はすべて商店会が負担。“持ち出し”での取り組みをいつまで続けていけるか不安を抱えています。 観光ごみの現状や対策などについて、総合地球環境学研究所・副所長をつとめる浅利美鈴教授の見解をもとにお伝えします。

“ごみ捨て文化”の違いも? インバウンド急増で「観光ごみ」増加

 観光ごみ増加の背景にあるのが、急増するインバウンド。

 訪日外国人旅行者数(日本政府観光局より)は、
 ▼2023年 2507万人
 ▼2024年 3687万人
 を記録し、「2030年までに6000万人」という目標を掲げています(2016年決定)。

 総合地球環境学研究所の浅利教授によると、日本に住む日本人は「ごみを捨てられる場所」を把握していますが、海外の旅行者にはその理解がなく、ごみを放置してしまう場合があるようです。

 また、旅行者の中には「ごみ分別」の習慣がない地域の人もいるなど、“ごみ捨て文化”の違いも観光ごみ増加の一因となっていると言います。

大阪・ミナミの「ごみの山」 商店街が“持ち出し”で回収

 大阪・ミナミではコロナ禍以降、インバウンドなど観光客の増加とともに、食べ歩きをしたり、飲み物を飲んだりしたあとのごみのポイ捨てが横行。街のいたるところでごみが散乱するようになりました。 

 そんな様子を見かね、対策に乗り出したのが道頓堀商店会です。

 (道頓堀商店会 谷内光拾事務局長)
 「電柱のところに“ごみの山”ができるんです。毎日夕方6時ぐらいになると。『安心安全できれいな街』って言っているのに“ごみの山”で、夏やったらハエは飛んでくるわニオイがするわで、万博で来た人に恥ずかしいんで。“ごみの山”だと」

 商店街ではこれまで、大阪市の防犯対策などのためごみ箱の設置ができなかったといいます。しかし、実証実験という形をとることで2023年、自動でごみを圧縮する最先端のごみ箱を道頓堀通りの10か所に設置しました。

 これまではごみ箱がなかったため、そのまま放置されることが多かったといいますが、ごみ箱が設置されると結果は一目瞭然。分別もしてくれるといいます。

福島プレゼン ミナミのゴミendなし-000415201.jpg

 その一方で、ごみ箱の管理やごみの回収にかかる費用はすべて商店会が負担しています。

 (道頓堀商店会 谷内光拾事務局長)
 「人件費とごみ袋代とごみ処理代とで、だいたい月に100万円ぐらいかかってます。(ごみ箱設置後)確実に“ごみの山”がなくなってますので、万博が終わっても毎日5万人が来てくれているので、観光都市を目指してやってきた中で、今やっていることは間違っていないのかなと」

 ただ、観光客の増加でごみが日々増えていく中で、“持ち出し”での取り組みをいつまで続けていけるか不安を抱えています。

 そんな中、今月から始まったのが「ごみゼロカート」の巡回です。大阪市は週末や祝日の観光客が多い時間帯に道頓堀周辺を練り歩き、ごみを集める活動「ごみゼロカート」をスタートさせました。

 (道頓堀商店会 谷内光拾事務局長)
 「イメージを良くして、リピーターが欲しいんですよね。きれいな街を目指さないとリピーターは来ないと思っています。町ぐるみでみんなで意識をもってきれいにしていこうというのが必要」

インバウンド客「ごみ箱が少ない」 公共のごみ箱が減っている?

 そんな中、「公共のごみ箱は減ってきている」と浅利教授は指摘。

 1990年代以降、家庭ごみの有料化が進み、現在約3分の2の自治体で有料化されています。それにより、家庭ごみを公園のごみ箱に捨てるなどのケースが出てきたため、公共のごみ箱が撤去されるようになったと言います。

 また、1995年の地下鉄サリン事件をきっかけに、テロ対策として、駅構内のごみ箱撤去が進んだそうです。

 訪日外国人旅行者へのアンケート(2024年観光庁調査)によると、「訪日旅行中に困ったこと」の第1位は「ごみ箱の少なさ」(21.9%)。外国人観光客も「ごみ箱が見つかればそこに捨てたい」と感じているようです。

「観光ごみ」2つの基本原則とは?

 浅利教授によると、観光ごみの基本原則は次の2つ。
 ▼原則1 使って(食べて) 捨てる人が責任を持つ
 ▼原則2 売る側もごみの受け入れ体制を確保する

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 そのうえで以下3つの工夫を提案しています。

 (1)訪日前に周知徹底する
 海外では観光地に清掃スタッフが常駐していることもあるが、「日本はみんなできれいにしていること」「買った店でごみは出せること」(そのための整備必要)を周知する。

 (2)そもそもごみをつくらない
 リユース前提の食器・容器(ドイツ・オクトーバーフェストのビアジョッキなど)や万博でも導入された“食べられる食器”を利用する。

 (3)ナッジ
 肘でつつく=行動をそっと促す「ナッジ」という手法も。岡山市では、タバコの吸い殻入れを以下のように“投票箱”に見立てて…

 「もらえるとしたらどっちを選ぶ?」
 A:10万円の桃1個
 B:1万円のマスカット10個

 吸い殻をごみ箱に入れるよう促しています。

テイクアウト飲食店 ごみ箱未設置で「罰則」の自治体も

 テイクアウト飲食店については、ごみ箱未設置の場合に「罰則」をもうけている自治体もあります。

 ▼東京・渋谷区 (一部地域)
 テイクアウトを伴う店のごみ箱
 →事業者自身が設置・回収に責任

 ▼大分・由布市 (一部地域)
 テイクアウト提供飲食店のごみ箱
 →ごみ箱は市が提供
  回収費は事業者

「ポイ捨てはほぼなくなった」最先端の“スマートごみ箱”とは?

 一方、大阪・道頓堀と京都・嵐山で「ポイ捨てはほぼなくなった」と効果をあげているのが「スマートごみ箱」。

 ごみの蓄積量を感知するセンサーが付いていて、ごみが溜まると回収担当者のスマートフォンに通知してくれると言います。また、ごみが溜まると自動的に5分の1に圧縮してくれる機能も付いていて、通常のごみ箱よりもたくさんのごみが入るそうです。

 ただ、街にごみ箱を増やすことにより、タバコ・ハンディファンなどを原因とする「火災」や「家庭ごみ持ち込み」といったデメリットもあると言います。

2025年12月14日(日)現在の情報です

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