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数十cmの津波でも命の危険! どこに避難したらいい?都心部にもある「津波避難ビル」とは?【青森震度6強で警戒続く】

解説

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 12月8日、青森県東方沖でマグニチュード7.5を観測する最大震度6強の地震が発生しました。北海道・青森県・岩手県には一時、津波警報が発表され、最大70cmの津波が観測されました。 津波の高さは「予測困難」その理由とは。南海トラフ巨大地震が起きれば、大阪の街を津波が襲う可能性もあります。その時、どこに避難すればいいのか?大阪市内だけで約1700か所あるという「津波避難ビル」とは?人と防災未来センター特別研究調査員であり気象・災害担当の福本晋悟記者が解説します。◎福本晋悟:MBS記者 気象・災害担当 人と防災未来センター特別研究調査員

津波警報とは

 まず、津波警報とは、津波の危険性があるときに気象庁から発表される情報です。

▼津波警報:予想される津波の最大波の高さが、高いところで1mを超え3m以下の場合
▼大津波警報:予想される津波の最大波の高さが3m以上の場合

 能登半島地震や東日本大震災のときには、大津波警報も発表されていました。12月8日の青森での地震では、北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、岩手県に津波警報が発表されました。このとき、予想された最大の高さは3mでした。しかし、実際の観測された数値は北海道で最大50cm、青森で最大40cm、岩手県で最大70cmでした。いずれも1mに達しておらず、予想の3mとは大きく異なる結果となりました。

 この結果だけ見れば、津波注意報の高さ(20cm~1mまで)でよかったのではないか、という意見を持つ人がいることも理解できます。

なぜ予想より低くなる?予測法は?

 そもそも、気象庁はどのように津波の予想を行っているのでしょうか。それを知ることで、津波の予測が非常に難しいことが分かります。

 気象庁の津波予測システムは、地震が起きた直後に津波の高さを計算するわけではなく、事前に気象庁で、日本の周りで「どこで」「どれくらいのサイズの地震が」「どれくらいの深さで起きたか」という要素を全て組み合わせた、約10万通りのシミュレーションを実施しています。

 そして、地震が起こると「今回の地震のケースは10万通りのシミュレーションの中のどれと最も近いか」を紐づけ、「大体これくらいの津波の高さが来る」という仕組みで発表しています。

 この仕組み上、正確な数値ではないため、多少のずれが生じます。予測が低く出て、実際は高くなってしまうと、人命に関わる事態に繋がります。そのため、予測を高く出して、実際は低くなる方が良いという考え方に基づいています。

 この予測システムの計算の中には、満潮・干潮などの情報も入り、東日本大震災以降、特に沖合に多数設置されている津波観測計の情報といったリアルタイムな情報も加えて、最新の情報を伝えています。しかし、多くの人が情報を入手するのは、最も早い第一報。この情報を一刻も早く伝えるために、10万通りのシミュレーションを事前に用意しているということです。

 津波警報で「最大3m」という言い方をしているのは、3mを超えることはなく、低くなる可能性もあるということを示しています。仮に「50cm」と伝えて、実際が1mを超えると、避難が遅れる可能性があるため、そうならないように配慮されています。

津波予測「一刻も早く・最大値で予想を出す」

 津波予測で最も大切なことは、一刻も早く予想を出すことです。津波警報などの情報発表について気象庁は、地震発生から3分を目標としています。

 これは、1993年の北海道南西沖地震で、津波が2~3分で奥尻島に到達したといわれているにもかかわらず、当時の日本の気象庁の技術では、警報を出すまでに5分かかっていたという教訓があるからです。人の命に関わる避難に繋げるため1分でも早く情報を出す必要があることから、今では2分~3分を目標に情報が出されます。そのために事前のシミュレーションが不可欠なのです。

 また、東日本大震災のように、予想よりも高い津波が来てしまうことがないよう最大値で予想を出しており、気象庁は、最新情報を交えながら情報更新を常に行っています。

体重85kgの記者が一気に流される数十cmの津波

 12月8日の地震では津波の高さが数十cmでした。この数値を見て、「数十cmの津波なら助かるのではないか」と思われる人もいるかもしれませんが、数十cmの津波のパワーも侮れません。

 東京の中央大学の津波の実験施設で、記者が30cm~50cmの津波を体験すると、体重85kgの記者が一気に流される様子が確認されました。「踏ん張ろうと思ったときにはもう手遅れで、体が宙に浮いていました」と話します。

 30cm~50cmの津波は、津波注意報で発表されるレベルです。もし海に遊びに行っていて、この程度の津波に遭遇した場合、避難が遅れれば非常に危険です。
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 一般的な波は、海の表面の水の部分が風で揺れているため、水しぶきが飛んでくる程度です。一方、津波はメカニズムが全く異なり、地震によって海底にある海水が、水の塊となって全て持ち上がり、一気に押し寄せてきます。

 例えるならば、1mの津波は、プールの深さ1m程度の水の塊全てが、何百、何千、何万個と一気に自分に押し寄せてくるようなものです。長さも数km以上にわたります。そのため、耐えることは全くできません。

街中で津波に襲われたら…“避難ビル”とは

 関西で最も心配なのは、南海トラフ巨大地震です。もし大阪市内にいる場合、どこに逃げたら良いのか、避難場所を考える必要があります。

 実は、大阪市には約1700棟の「津波避難ビル」という建物があります。

 南海トラフ巨大地震が発生した場合の大阪市の津波浸水地域ハザードマップ(大阪府HPより)を見ると、JR大阪駅がある北区も浸水域に入っています。大阪市内の半分くらいが最悪の場合、水に浸かると想定されています。海の近くの区だけではなく、広範囲にわたるのです。
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 「津波避難ビル」には、ビルの出入口などにシールが貼られています。大阪市には1688棟があり、全国(約1万4700棟)で最も多い数です。これは、大阪市内には高台がないため、多くの方が逃げられる場所を確保する必要があるからです。頑丈なビルが津波避難ビルに指定されており、認定数は今も増え続けています。

【指定の要件】
▼ 原則として鉄筋コンクリート造りなどの頑丈な建物
▼1981年の新耐震基準(震度6強の揺れでも倒れることはないという頑丈さ)を満たしていること
▼ 津波が来ると想定されている深さより高い建物であること

 津波避難ビルは、大阪市などのハザードマップなどに記載されていて、インターネットで見ることができます。また、住んでいない地域を訪れたときなどにも、こうした津波避難ビルと書かれている建物を見て、「いざというときにはここに逃げられるんだ」ということをチェックしておくことをおすすめします。ぜひこれを機に、避難場所の確認をしてみてください。

2025年12月14日(日)現在の情報です

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