2025年10月14日(火)公開
【アフター万博】ミャクミャク"爆売れ"などで万博の波及効果は3兆円超?閉幕後の関西経済はどうなる 万博の"健康的なイメージ"はIRに継承できるのか
解説
半年間の会期中に類型2550万人以上が訪れた大阪・関西万博。訪日観光客も増加し、8月には関西空港のひと月あたりの国際線旅客数が過去最高の約255万人に達しました。大阪・関西に多くの人を呼び込んだと考えられる万博が閉幕したあと、「アフター万博」と関西経済の行く末はどうなっていくのか。日本経済チーフエコノミスト・石川智久氏への取材をふまえ、万博が及ぼした経済効果とこれからの展望をまとめました。
宿泊施設や交通機関では“万博特需”

大阪・関西万博は、10月13日までに2557万8986人が来場(関係者除く)。9月27日には運営費の黒字化の目安となる2200万人を突破しました。万博が盛り上がったということは間違いないと言えそうです。
では万博ではどれだけのお金が動いていたのか。国・大阪府市・経済界が負担した建設費は2350億円、国が負担した警備費は250億円とされています。一方、運営費の黒字は230億円~280億円ほどになるといわれていて、全てを含めた万博の経済波及効果は最大で3兆3667億円とされています(アジア太平洋研究所の試算による)。
特に経済効果が大きかった“万博特需”として挙げられる業種は、宿泊施設や交通機関です。大阪タクシー協会によると、万博期間中の4月~9月は前年同月比で実車距離が7%、営業収入が10%それぞれアップしました。タクシーの運転手に話を聞くと、片道7000円ほどかかる新大阪と万博会場の間を1日で6~7往復したという人もいるといいます。
ホテルの客室稼働率は4月~8月のいずれも前年同月比で増加していたということです。また、大阪メトロの営業収益も、中央線の乗客増加に伴い4月~6月期は35%増え、過去最高の654億円となりました。
また、意外なことに万博期間中は酒類がよく売れたというデータもあるといいます。万博は公共交通機関での来場が多く、また会場内の飲食店では比較的高い価格が設定されていた一方、会場は飲食物の持ち込みも可能だったことから、飲食関係では幅広く恩恵があったということです。
倉庫と会場を1日4往復…売上絶好調だった「ミャクミャクグッズ」

そして万博の経済効果を語るうえで外せないのが、公式キャラクター・ミャクミャクの人気です。グッズの売上は8月末までで800億円にのぼります。来年3月末まで続けられることが決まっている公式グッズの販売では、売り上げからライセンス料として6%~10%が博覧会協会へ入るということです。
 ミャクミャク人気について、グッズを手がける会社のひとつであるヘソプロダクションに話を聞くと、納品の頻度は2台のトラックで万博会場と倉庫を1日に3~4往復するほど。当初はミャクミャクになりきれるようなグッズが主に売れていましたが、終盤は「ミャクミャクが付いていたら何でも売れる」状態になっていたということです。

 大阪近郊以外に目を向けると、兵庫県北部の城崎温泉のように「万博に客を取られてしまった」という地域もあるようですが、日銀による近畿2府4県の「景況感」の推移を見てみると、製造業・非製造業ともに上向いていることがわかります。
「アフター万博」はIRで毎年1兆円超の経済効果!?

こうした勢いを持続させるために、“次の明るいテーマ”として掲げられているのがIR=カジノを含む統合型リゾートです。
万博が行われた夢洲で2030年秋ごろに開業を目指すIRの面積は約49ヘクタール。カジノの部分はそのうち3%以内だということで、他にもホテルなど様々な施設が建設される計画です。
ホテルは、幅広い層向け/ラグジュアリー/さらに上の最高級ホテル の3つができることがわかっています。さらに夜を楽しむことができるダイニングやジャズクラブのほか、劇場・美術館・体験スタジオも建てられるのではないかといわれています。そのほか、サーキット場を作ってF1を誘致するという話も出ています。
大阪府によると、IRによる経済波及効果は、建設時で2兆3700億円、開業後は毎年1兆1400億円に上ります。
IR成功のためのポイントは「万博のイメージを継承できるか」

これだけの経済効果が期待されるIRを成功させるために必要なことは何か。日本経済チーフエコノミスト・石川智久氏によると、以下のようなポイントを押さえていくことが必要だということです。
 ・官・民が協力する「司令塔」ができるか
 ・大阪の強みである中小企業の参加
  →観光業だけでなく製造業など他の産業がどう入り込んでいくか
 ・世界に開かれた文化エリアにできるか
 ・関西全体に開かれるゲートウェイ構想
  →「大阪だけ」ではなくそこから他府県に広がっていく玄関口になれるか
 成功を後押しする要素も複数あるということです。
  ▽関西空港から近い
  ▽京都・奈良など他の観光資源が豊富
  ▽日本初で関心が高い
  ▽関西圏の人口(2000万人規模で地元需要も見込める)
 こうした点から、石川氏はIRの事業が上手くいく可能性は高いとみています。
ただし、カジノによるギャンブル依存症には注意が必要です。対策として6000円の入場料の徴収や、入場回数の制限、マイナンバーなどでの本人確認などについて法律が整備されています。さらに、カジノの収益の一部は依存症対策に活用されることになります。
大阪に“ギャンブル都市”というイメージが定着することは避けたいところ。万博は“健康的”なイメージの獲得に成功しましたが、IR開業までの5年間でこのイメージをどう継承することができるのか。万博閉幕後の行く末を注視していく必要がありそうです。
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