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【高市政権発足】自維連立の「キーマン」は維新・遠藤国対委員長?両党の"パイプ役"が総理補佐官起用 「議員定数削減」は"満額回答"も「政治とカネ」との優先順位は?

解説

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 21日、自民党の高市早苗総裁が第104代の内閣総理大臣に指名されました。公明党の連立離脱で総理指名の行方は一時不透明になりましたが、最終的に高市政権発足の筋道をつけたのは、前日に自民党と連立の合意を交わした日本維新の会でした。新たな「自維連立」は維新から閣僚を出さない“閣外協力”になるとされていますが、従来の自公連立政権のように連立相手が大臣を務める閣内協力との違いとは。両党にとってこの連立は吉と出るのか、凶と出る可能性もあるのか。また連立のキーマンであるとされ、維新から総理補佐官に選ばれた遠藤敬国対委員長とは――ジャーナリストの武田一顕氏への取材を踏まえ、MBSの大八木友之解説委員が激動の政治情勢を読み解きます。

維新が要求「12の政策」“満額回答”も

 高市氏が総理に指名される20時間ほど前の10月20日午後6時ごろ、自民党と日本維新の会が連立政権を樹立することで実質的に合意し、高市総裁と吉村代表は合意文書に署名しました。自民党は衆議院で196議席と、第1党ではありますが過半数に達していない中、維新の35議席が加わることにより、過半数に残り2議席となります。
 維新の会が連立入りするにあたって、自民党との間での政策協議はどのように進んでいったのか。維新が提示した「12の政策」を見ていきます。

1.経済財政政策
2.社会保障改革
3.皇室・憲法改正・家族制度等
4.外交安全保障政策
5.インテリジェンス政策
6.エネルギー政策
7.食料安保・国土政策
8.経済安保政策
9.人口政策・外国人政策
10.教育政策
11.統治機構改革…副首都構想
12.政治改革…議員定数削減

 この内、維新が絶対に必要な条件としてあげていたのは▽2.社会保障改革、▽11.統治機構改革(副首都構想)、▽12.政治改革(議員定数削減)です。

 維新の藤田文武共同代表によりますと、▽2.社会保障改革、▽3.皇室・憲法改正・家族制度等、▽4.外交安全保障政策、▽5.インテリジェンス政策、▽6.エネルギー政策、▽7.食料安保・国土政策、▽8.経済安保政策、▽9.人口政策・外国人政策については「満額」回答、▽10.教育政策に関しては「ほぼ満額」の回答だったということです。

 大八木解説委員は、「自民と維新は政策的にかなり近い政党で、折り合えるところが多いと思う」とした上で、「社会保障改革については去年の政策協議でも相当モメていたのに、どこまで折り合えてるのが気になる」と話します。

企業・団体献金の廃止「協議体を設置しても実現できないのでは」

 では、「満額回答」ではなかったという▽1.経済財政政策、▽11.統治機構改革(副首都構想)、▽12.政治改革(議員定数削減)について細かく見ていきます。

 経済財政政策の中で食品への消費税を2年間廃止を求めていましたが、自民党側の回答は「協議体の設置」でした。それに対し、ガソリン暫定税率廃止や物価高対策の補正予算などに関しては、満額回答だったということです。

 統治機構改革「副首都構想」に向けては、来年の国会で成立できるように協議体を設置するということです。

 そして政治改革の中身である「企業・団体献金の廃止」に関しても2年後の期限付きで協議していく協議体を設置。一方、「議員定数削減」は、臨時国会で衆院1割削減の満額回答でした。

 大八木解説委員は、企業・団体献金の廃止について、「協議体を設置しても実現できないのでは」という見立て。また、「急に絶対という形で出てきた議員定数の削減は、臨時国会でおそらく法案は出るでしょうが、他の党の反対が相当激しいように思う」と話しました。

「定数削減」と「政治とカネ」 優先順位は?

 維新の「政治改革」について。連立に向けての政策協議のなかでは、国会議員を減らす定数削減と、政治とカネの問題に端を発した企業・団体からの献金禁止のどちらを先に実行するか、という優先順位の話になっています。もともと世論は政治とカネの問題の解決を望む声が多かったのではないかと考えられますが、維新は定数の削減を優先しています。

 維新の吉村代表は16日出演のテレビ番組で「それ(献金廃止)一つじゃないので。僕は一番の政治改革のセンターピンは議員定数の削減だと思いますよ」と発言。

 大阪では維新が主導する議員の定数削減が実際に行われています。維新の実績の一つとして捉えている人もいる一方で、「大阪と国では話が違うのではないか」という意見もあります。政治ジャーナリストの武田一顕氏に話を聞くと、国会議員を50人削減すると50億円から75億円程度の支出をカットはできるということですが、国家予算の規模で考えると、果たしてこれは大阪ほどインパクトのあることなのかどうか。逆に、少数意見を切り捨てる側面もあるので、必ずしもプラスのことばかりではないということです。

 さらに定数削減には反対する党も出てくることで国会の混乱を招き、国民が求める物価高対策が停滞するおそれもあります。

「閣外協力」主張する3つのポイント

 今までの「自公政権」を見ると、必ず1人は公明党から大臣ポストが埋まっていて、国土交通大臣がその定位置でした。維新が主張する様々な条件を実現するにあたっては維新から閣僚を出した方が話を進めやすいように思われますが、今回は大臣を出さない「閣外協力」となる見通しです。
 
 維新の馬場伸幸前代表も19日に「すぐに閣内に入って全面的に進める環境はできていない。スタートは閣外がいいと思う」と発言。閣外協力となれば1996年「自社さ連立政権」以来です。

 武田氏いわく「“連立”とは実質的には協力して総理大臣を選出すること」で、その後の形として大臣を出すか出さないか、という点においては様々な形態があり得るということです。

 閣内協力であれば維新が法案や予算案に賛成することをより確実に担保でき、政権の安定感を向上させることができるということで、維新の吉村代表は自民党側から「閣内に入ってもらいたい」という要望があったと話しています。

 維新側にも、大臣ポストに就くことで行政機関を直接動かせることで政策の実現可能性が上がるというメリットがあります。

 ではなぜ閣外協力を選択するのか?武田氏が挙げるポイントは以下の3つです。

■一体化の回避…維新の存在意義・支持率を維持するため
■“騙された”過去…旧文通費の改革を合意したものの先延ばしにされた経験があるため
■大阪サイドが慎重?…大阪の選挙ではこれまで維新と自民・公明の候補が激しく競い合ってきたため

水面下での交渉人が今後の「キーマン」に

 今後の連立でのキーパーソンとして名前が取り沙汰されているのが、維新の遠藤敬国会対策委員長(57)です。遠藤氏は大阪18区選出の衆院議員で当選は5回。秋田犬保存協会会長も務めています。

 高市政権ではこの遠藤氏が総理補佐官に起用され、両党をつなぐ重要なパイプ役になることが予想されています。

 総理補佐官とは総理の指示を受けて重要な政策についての企画立案などを手伝う役割で、定員は5人。

 大八木解説委員は遠藤氏について「与野党内外問わず人脈が豊富で、今回、高市氏から電話がかかってきた最初の相手です。維新と自民党のいわば唯一の今のパイプになっていて、そこから連立交渉がスタートした。そのためキーマンであることは間違いなく、水面下の交渉をずっと担ってきた人が表に出てどうなるか楽しみでもあり不安でもある」と分析しています。

2025年10月22日(水)現在の情報です

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