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【全文公開】維新の創設者・松井一郎氏は自維連立をどう見る?「維新はなくなってもいいから政策実現し結果を」 副首都構想は「早く実現を。大阪都構想とは別に考えるべき」

解説

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 自民党と日本維新の会が10月20日、連立政権の合意書に署名しました。維新が協力の条件として自民に求めていた社会保障改革や議員定数の削減など、12の項目のうち多くが合意に至ったとしています。 維新肝いりの政策は実現する?現実味を帯びてきた副首都構想はどうなる?自民と維新は今後うまくやっていけるのか…「大阪維新の会」創設者であり、「日本維新の会」元代表の松井一郎氏に聞きました。

「閣外協力」は連立政権に向けたスタート

ーーー自民党と日本維新の会が連立政権樹立で合意しました。吉村洋文代表はどんな気持ちだと推測できますか?

(松井一郎氏)「連立政権と言っていますが、僕は少し前のめり過ぎるのかなと。12項目の政策協議をしましたが、まだ1つも実現していません。『実現すれば』という話を吉村代表はずっとやっていたわけで、これは連立政権に向けたスタート。閣外協力が正確な判断なのではと思います」

ーーー21日の総理指名選挙では、維新の議員たちは「高市早苗」の名前を書くという意味での連立は結ばれたわけですよね?

(松井一郎氏)「首班指名と本当の意味での連立をともにするということは分けて考えてる方がいいなと思っています」

ーーー今回の自民と維新の連立の間を誰がつないだのかというときに、松井氏の意見もあったのではないかという話もありますが?

(大八木友之解説委員)「当然名前は挙がってましたし、一部報道では松井氏と自民の麻生太郎氏が連携しているのではという話もありましたが、どうなんですか?」

(松井一郎氏)「僕はもう民間人としてX(旧ツイッター)で、好き勝手つぶやいてただけです」

(大八木友之解説委員)「ただ、維新の創設者なので、発信されることに影響力がありますし、馬場前代表や遠藤国対委員長から話を聞くと、松井氏はこういう意向だからというような話は聞くので」

(松井一郎氏)「直接、維新の方向性に決めれるような立場にはありませんから」

「維新はなくなってもいいから結果を出して欲しい」

ーーーもともと自民党にいた松井氏は、安倍晋三氏・菅義偉氏と旧知の仲で、自民・維新の両党ともに親密な関係という意味で、今回の連立というのはどのような目で見ていますか?

(松井一郎氏)「政策が実現できれば、日本が前へ進んでいくわけで、そのために、吉村代表も言っていますが『維新はなくなってもいいから』結果を出して欲しいと思っています」

ーーー維新の創設者としても、党がなくなっても日本のためになる政策が実現するのであれば良いと?

(松井一郎氏)「その通りです。自民党という大きな政党を出て、地方の政党を作るとほとんど生き残れません。今まで地方政党が国政政党を作った例はありません。だから自民党出るときからそういうふうな考え方でやっています」

“人間関係が濃厚になってブレる可能性”を懸念

 時系列で振り返ると、吉村代表と小泉進次郎氏の連携で連立が成立するかと、自民党総裁選の前に言われていました。しかし、10月4日に高市総裁が誕生し、国民民主と連立するのではと言われていた矢先に、10月10日公明党が連立を離脱。その後10月15日急浮上したのが維新との連立です。

ーーー維新が政策を実現するために連立、もしくは連立のような形になること自体は賛成ですか?

(松井一郎氏)「国を動かしていく、永田町・霞が関で物事を決めていくということは、賛成多数の人間が必要なので、比較第一党は自民党ですから、自民党をどう動かしていくか。自民党をピリッとさせるために、自民党が過半数割れる方がいいじゃないというのが政治家として活動している間もずっと言ってきたことです。現在そういう結果になっているため、テコの原理で大政党を動かしてもらいたいと思います」

ーーー維新と自民が連立することに対して反対の声もありますが、心配されること、懸念点はありますか?

(松井一郎氏)「自民党というのはいろんなものを飲み込む力がすごい。自民党の人は良い人が多いんですよ。良い人が多いからすごく人間関係が濃厚になってくる。そうなると政策本位ではなく、人との繋がりの中でブレる可能性がある。(政策実現に向けて)そこ気をつけて、割り切ってやってもらいたいと思います」

ーーー維新を応援してきた人たち、支持者の皆さんの気持ちはどう思いますか?

(松井一郎氏)「維新としてきちんと支持者の皆さんに説明しなければならない。大阪の例でいうと、自民党が改革をしてこなかった。だから維新も100点じゃないけど、今までよりは少しマシということで応援してくれたと思うんです。だから本格的な連立政権に向けて、12項目の政策を維新は掲げました。これを実現していくことで、支持者の皆さんに納得してもらうしかないと思います」

(大八木友之解説委員)「公明党と自民党との関係では、ある種公明党が自民党のブレーキ役になってきました。今回改革をしたい維新が入ったときに、その牙が削がれるじゃないか、そんな心配はあると思いますが」

(松井一郎氏)「自民党も生まれ変わる。さまざま問題になっていますが、政治とカネの話も少しでも改善をしていく、約束をした政策の実現は自民党もやらなければならないと思います」

“成立させる”“成立を目指す”合意文書で異なる表現

維新は自民党に12の政策を突きつけました。

1経済財政政策
2社会保障政策
3皇室・憲法改正・家族制度など
4外交安全保障政策
5インテリジェンス政策
6エネルギー政策
7食料安保・国土政策
8経済安保政策
9人口政策・外国人政策
10教育政策
11統治機構改革(副首都構想)
12政治改革(議員定数削減)

(大八木友之解説委員)「特に注目された『政治改革』のところで、企業団体献金に関しては臨時国会中に協議体を設置するという言い方ですし、『定数削減』も絶対条件においていて、これも臨時国会で議員立法案を提出して、成立を目指すという表現になっています」

(松井一郎氏)「“目指す”という表現は自民と維新、国民の玉木代表も賛成と言ってました。これで過半数ありますから成立をするはずです」

ーーー『副首都構想』に関しては、来年の国会で法案を成立“させる”と書いています。ただ『議員定数』を1割減らすということに関しては、成立を“目指す”となっています。ここ明らかに書き分けられているなという印象は持ってしまいますが?

(松井一郎氏)「それはもう結果が出るじゃないですか、臨時国会で。だから維新は『閣外協力』なんじゃないですか」

ーーー高市総裁と吉村代表の共同会見をどんな気持ちで見ていましたか?

(松井一郎氏)「『12項目の政策』これを実現をすることが目的だし、実現できれば日本の構造改革になると思います。吉村代表も連立合意と言っていますが、高市総裁と吉村代表の会見は連立に向けて本格政権に向けてのスタート。一歩スタートという形で見るのが一番感覚として合うのかなと思いますね」

ーーー自民党に対して心配な点はどんなところですか?

(松井一郎氏)「岸田政権でも旧文通費の改革やると約束しましたけど、反故にされたんです。それが1年前の話ですから、それが事実としてある。維新は合意文書にサインしたけど、これが本当に実現できるかどうか、しっかりとチェックしていかないといけない」

ーーー維新は100%中で何%ぐらい自民党を信じているのでしょうか?

(松井一郎氏)「そこは政治経験の差によってもあるのではないでしょうか。岸田政権で書いたもので反故にされた、馬場前代表らは懐疑的なところもあるでしょう」

 行政学者の神戸学院大学・中野雅至教授は「維新は潰れてもいい、政策本位というのではあれば閣内に入った方がいいのでは」と松井氏にぶつけます。

(松井一郎氏)「維新はこれまでも捨て身でずっとやってきましたが、自民党のすべてを抱きかかえるような暖かいところに迎え入れられ親切にされると、その捨て身の姿勢が心の中から離れていくときがあるんです。人間ですから」

企業団体献金廃止は半ば諦めも…「一歩でも前へ進める」

ーーー合意内容にある政治改革の政治とカネの問題で、維新は「企業団体献金」廃止を求めていましたが、2年以内に協議体を設置し、廃止に向けて協議ということです。

(大八木友之解説委員)「メディアで吉村代表は、企業・団体献金に関して自民党に飲んでもらうのは難しいとはっきり言っています。最初から諦めてるとも取れますし、そこで出てきた『議員定数削減』だけやろうとしてるというふうにとられるのはどうなんでしょうか」

(松井一郎氏)「政治なので、一歩でも前へ進め、少しでもマシな形を作っていく。これは国会議員だけの話だけではないので、自民党は企業・団体献金禁止はできません。自民党というのは地方議員が一生懸命支えていて、長い歴史の中で地方議員がそれぞれ活動するのに、企業団体から支部に寄付をいただいて活動しているわけです」

ーーー協議体は作るけど、維新の中でも無理だろうとある程度は覚悟している?

(松井一郎氏)「協議の中で入ってくるところと使い方を領収書で国民が見えるようにするなど、そういうところで、少しでもクリーンにしていくことが、僕は一歩前進だと思います」

「副首都構想は早く実現させるべき」

ーーー大阪都構想の話がにわかに出てきています。今回『副首都構想』を求めました。維新が出した骨子案には特別区の設置が書かれていて、副首都をやるには特別区も作らなくてはいけないという制度設計のように見えます。

(松井一郎氏)「首都直下型地震がいつ起こるかわからない中で、特別区じゃなければということになると手を挙げられるところがなくなります。現在、東京以外は特別区ないので。

 副首都を早くを実現させるべき。東京だけに経済の中心、東京だけが日本を牽引する、そういう役割では東京が何かあったときに、日本の社会経済がもたないため、副首都というのは早くやるべきだと思います。

 副首都で一番重要なのは、権限を国から地方に渡すこと。この法案を成立させて、多極分散でリスクに備えるべきだと思います」

ーーー副首都の実現は早くすべきで、大阪都構想の話は松井氏としては悲願だと思いますが、別に考えるべきですか?

(松井一郎氏)「大阪都構想をもう一度と言っても、大阪市民の皆さんは3度目それを良しとするような雰囲気はないと思っています」

(大八木友之解説委員)「全国の人から見ると、大阪に我田引水するような法案ではなかなか理解も得られないし、裏に『大阪都構想』があるんだなと思わせては、ダメなんじゃないかなと思います」

(松井一郎氏)「3度目の大阪都構想を打ち出すなら、もっと丁寧に、理解を深めないといけない。いま、その理解が大阪市民に広がっているとは思えない」

2025年10月21日(火)現在の情報です

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