2025年10月17日(金)公開
まだ"白紙"の万博跡地「熱が冷めないうちに活用を!」 来年春から事業者募集...着工は2028年ごろ? "負の遺産"だった夢洲のゆくえ「万博の記憶を感じる場所にすべき」【万博担当記者が解説】
解説
10月13日に閉幕した大阪・関西万博。翌日には撤去作業が始まり、再開発に向けて動き始めました。 大阪府と市は跡地にエンターテインメント空間を整備する方針ですが、具体的な内容はまだ何も決まっていません。半年間、世界の人々と未来を見つめた場所はどう生まれ変わるのか。現場を取材する清水貴太記者が解説します。 ◎清水貴太:MBS万博担当記者 誘致段階の2017年から大阪・関西万博を取材 前行政キャップ
夢洲はそもそも“負の遺産”

もともと“負の遺産”とも言われるような土地だった大阪・関西万博の会場「夢洲」。背景にあるのは二度の失敗です。
1つ目の失敗は、1983年に発表された、ベイエリアの夢洲・舞洲・咲洲に一大都市を作る「テクノポート大阪計画」。総事業費2兆2000億円という大規模な計画でしたが、バブル崩壊により頓挫してしまいました。
2つ目の失敗は、2008年夏季五輪の誘致に落選したこと。大阪にオリンピックを招致する構想の中で、885億円をかけて夢洲を選手村として活用する案がありましたが、そもそも大阪にオリンピックを招致できず北京での開催となったため、広大な土地が残されたままになってしまったのです。
“跡地も含めた万博成功”にはスピード感が重要

そうした中、夢洲で万博が開催され大きな盛り上がりとなりましたが、万博はあくまで半年限りのイベント。跡地も含めて成功するかどうかという視点で考えてみたいと思います。
大阪府市は、夢洲を国際的な観光拠点に位置付けたいとしていて、吉村洋文知事も「圧倒的な非日常空間をつくりたい」と繰り返し述べています。
万博開催に伴いインフラの整備も行われ、今がチャンスとも言える夢洲。そのチャンスを逃さないために伝えたいのは、“鉄は熱いうちに打て”。万博の熱が冷めないうちに活用していくべきだということです。
跡地の活用方法については、来年春から事業者を募集する予定ですが、その事業者を決める時期は未定、具体的にどう活用するかも決まっていません。
万博会場の敷地は、博覧会協会が大阪市から土地を借りている状態で、返却期限は2028年2月。つまり2028年頃には跡地の活用に向けた工事がスタートしていくのではないかと考えられます。
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なぜスピード感が大事なのか。都市計画に詳しい大阪公立大学・橋爪紳也特別教授によると、物価高騰により資材費も高くなっているため、工事が遅くなるほど建設費高騰のリスクが高まるということです。
実際に万博会場の建設時も、当初の計画では1250億円だったのが、資材費高騰によって2350億円まで膨れ上がりました。
それを踏まえて、例えば万博跡地の一部だけ先行してオープンするといった計画も検討するべきではないかとしています。
IRは当初「万博前」に開業予定だった
大屋根リングの北側には、2030年秋に開業予定である大阪IRの予定地がありますが、こちらも計画通りには進んでいません。
夢洲のまちづくりの基本的な方針が定まったのが2019年。当初、IRの開業時期は2024年の後半と言われていました。つまり、まずIRが開業して、その後万博が開催されて“夢洲が大盛り上がり”という姿が描かれていました。
しかし、2020年からコロナ禍に直面したことによって、さまざまな手続きに遅れが生じ、IRの開業時期が遅れてしまったのです。
万博の記憶を感じられる場所に…

日本でしかできない体験を求めて外国人観光客も多く訪れている中、万博跡地の活用法が注目されますが、その成功は稼ぐことだけではありません。
跡地の開発に関して、事業者公募の前段階(今年1月)に民間の企業グループから2つの案が提示されています。
■大林組など…サーキット場などアミューズメント
■関電不動産開発など…水辺のリゾート
サーキット場については、関西の財界トップである関西経済連合会・松本正義会長が「もう少し夢のある企画にならないのか」と今年7月の記者会見の中で言及。跡地活用の前提として万博の思いを後世に残すものがいいのではないかと考えると、サーキット場は万博とつながるのか?と問題提起したのです。
過去のケースをみてみると、1970年の大阪万博の跡地は、「万博記念公園」として整備されています。公園内には太陽の塔がそびえ立っていて、万博がここで行われたということを目で見て肌で感じられる場所になっています。
2005年の愛・地球博の跡地は「愛・地球博記念公園」となっていて、公園内にはジブリパーク(予約制)もあります。ジブリパーク内にある「サツキとメイの家」は、愛・地球博のときに人気だったパビリオンを転用しています。
夢洲の跡地も同じように、「大阪・関西万博の記憶を感じられる」ような場所にする。それを踏まえた上でどう活用するのが良いか、考えていくべきではないでしょうか。
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