2025年10月22日(水)公開
高市内閣の『責任ある積極財政』で生活良くなる?ガソリン・電気ガス・消費税...経済政策を「すぐやりそう」「いずれやりそう」「時間かかりそう」3つに分けて総チェック!
解説
10月21日、憲政史上初となる女性総理が誕生。高市内閣が発足しました。高市総理は「強い日本経済を作り上げ、日本の国益を守るため、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻します」と宣言。連立合意した維新・吉村代表は「高市さんが高市さんらしく国家運営してもらいたい」と話しました。 新政権誕生で私たち暮らしは良くなるのか?高市総理が主張する「責任ある積極財政」は実現できるのか?ジャーナリストの武田一顕氏、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏の見解をもとに、自民・維新の合意文書、そして閣僚の顔ぶれなどから読み解きます。
「責任ある積極財政」維新がブレーキ役に?

高市政権の経済政策の基本路線は「責任ある積極財政」。それは閣僚人事にも表れています。経済対策に関わる大臣として、次の2人が就任しました。
▼財務大臣 片山さつき氏
▼経済財政政策担当大臣 城内実氏
総裁選で高市氏の推薦人を務めた片山氏。「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の顧問を務める城内氏。2人はともに、高市総理に近い考えを持っていると言えるでしょう。
一方、連立を組む日本維新の会は「財政規律派」とされているため、高市総理の積極財政路線に対する“ブレーキ役”となる可能性があります。実際に、高市総理と維新はそれぞれ逆の思想に基づいた政策を主張しているのです、
▼高市総理 積極財政(大きな政府)
⇒「危機管理投資」安全保障や防災に公共投資
▼維新 財政規律(小さな政府)
⇒日本版DOGE「政府効率化局(仮称)」の設置
また、麻生副総理や鈴木幹事長など自民党内にも財政規律を重視する考え方があり、高市総理ら積極財政派の主張がスムーズに通らない可能性があります。
年明けにはガソリンが安くなる?引き続きエアコン補助も?

高市政権誕生で、私たちの生活は良くなるのでしょうか?自民・維新が合意した12の政策のうち、まずは「経済財政関連施策」を見ていきます。野村総研の木内氏が「すぐにやるつもり?」と見込んだ政策は次の2つです。
▼ガソリン暫定税率廃止:合意文書に「法案を2025年臨時国会中に成立させる」と表記
⇒早くて来年(2026年)1月~?遅くとも4月~?
▼電気ガス料金の補助:合意文書に「早急に取りまとめ、25年臨時国会において補正予算を成立させる」と表記
⇒この冬もエアコン補助を引き続き実施?
また、中小企業への補助や医療・介護現場の支援も早い段階でスタートするかもしれません。
今後動くとみられる経済政策は?

“今すぐ”ではないかもしれませんが「やるつもり?」(野村総研・木内氏)とみられる政策は次の2つです。
▼所得税の基礎控除
⇒インフレの進展に応じて見直す制度設計を年内めどに取りまとめ
▼租税特別措置・高額補助金
⇒総点検を行い政策効果の低いものは廃止 政府効率化局(仮称)の設置
租税特別措置の代表例が、賃上げした企業の税を優遇する「賃上げ促進税制」ですが、体力のある企業しか利用できない“大企業優遇”と批判されてきました。こうした「無駄な支出」をなくそうと維新は強く主張しています。
消費税減税には時間がかかる…?

実施される可能性はあるものの「時間がかかるかも?」(野村総研・木内氏)という政策は次の2つです。
▼食料品の消費減税
⇒2年間に限り消費税の対象と“しないことも視野に”法制化につき検討を行う
▼給付付き税額控除
⇒早急に制度設計を進め実現をはかる
給付付き税額控除は、立憲民主党が参院選で公約に掲げていましたが、高市総理自身が「2~3年かかる」と述べていて、制度設計に時間を要する可能性があります。
憲法改正・安全保障・外国人政策…ブレーキ役が不在?

12の政策のうち「皇室・憲法改正・家族制度等」「外交安全保障」「インテリジェンス政策」「人口政策・外国人政策」はどうなるのでしょうか?合意文書には次のような文言があります。
▼皇室・憲法改正・家族制度等
・憲法九条改正に関する両党の条文起草協議会を設置
・戸籍制度及び同一戸籍・同一氏の原則を維持
・「日本国国旗損壊罪」を制定
▼外交・安全保障
・「防衛装備移転三原則の運用指針」5類型を撤廃
現在は「救難・輸送・警戒・監視・掃海」に限り殺傷能力のある装備を輸出可
▼インテリジェンス政策
・「国家情報局」「国家情報局長」を創設
・「インテリジェンス・スパイ防止関連法制」検討
※インテリジェンス=国家安全保障などに関わる情報収集・分析活動
▼人口政策・外国人政策
・外国人及び外国資本による土地取得規制を強化する法案を制定
・ルールや法律を守れない外国人に対しては厳しく対応
外国人政策の内閣における司令塔としては、「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」に高市氏の推薦人だった小野田紀美氏が就任しました(経済安全保障担当大臣も兼任)。また、国家公安委員長に就任した赤間二郎氏が、新設の「領土問題担当大臣」を兼任することになりました。こうした人事からも高市総理の意向がうかがえます。
従来、こうした分野では、保守的とされる自民に対して“中道”の公明が一定のブレーキ役を担ってきたと言われていますが、今回、自民と同様に保守的とされる維新が連立に加わったことで、このブレーキが利かなくなるのでは?という考え方もあります。
では、茂木外務大臣や小泉防衛大臣といった閣僚が政権内のブレーキ役となるのでしょうか?ジャーナリスト・武田一顕氏は「茂木氏は上から言われたことを忠実に実行する仕事師」であり、「小泉氏が仮に高市政権に物申すつもりなら、そもそもこのポストを引き受けていない。キバを抜くために入閣」と指摘。つまり、2人はブレーキにはならないと見ています。
そうなると、バランサーとして野党の役割が問われることになりそうです。
トランプ大統領との首脳会談 4つの“火種”とは?

10月27日には米トランプ大統領が来日。28日には高市総理との首脳会談が予定されていますが、次の4つが“火種”となる可能性があります。
▼トランプ関税
半導体や医薬品など未確定のものも
▼防衛費の増額
現在目標DGP比2.0%⇒3.5%要求?
▼ロシアからの天然ガス輸入
日本が開発するサハリンの資源輸入(日本の年間LNG輸入量の9%) トランプ大統領から停止の要望あり得る?
▼円安是正
トランプ大統領「日本が円安誘導」と発言 プレッシャーをかけられるおそれ
「トランプ大統領と早期にお会いして、日米関係を更なる高みに引き上げてまいります」と述べている高市総理。どのような外交手腕を発揮するのか注目されます。
2025年10月22日(水)現在の情報です
