2025年10月24日(金)公開
【冬眠前の今が危険!】特に"2歳のクマ"に注意 被害増加の原因は人間の「過疎化・高齢化」か... 専門家「来年以降もこの状況は改善していかない」
解説
各地で相次ぐクマの被害。今年度、クマに襲われ亡くなった人は全国で9人と過去最多です。危害を加えるクマの出没に備え、9月から全国で始まったのが「緊急銃猟」制度です。これまで銃使用が原則禁止されていた市街地であっても、安全を確保したうえで自治体の判断で予防的な駆除が可能となりました。 なぜ被害が増加してるのでしょうか。これからの季節、気をつけるべきことは?どうしたらクマと共存できるのか?日本ツキノワグマ研究所・米田一彦理事長、岩手大学・山内貴義准教授への取材を含めまとめました。
クマの人身被害 専門家も驚くスピード感

2025年9月末時点でクマ(ツキノワグマ・ヒグマ)による人身被害数は108人。死者数は9人(ツキノワグマ7人)で過去最多となりました。
専門家によると過去10年から20年で被害は一度くらいだったということですが、ここ数年は毎年数人が亡くなっていて、専門家も驚くほどのスピードの速さだということです。
専門家「来年以降もこの状況は改善していかない」「特に2歳が危険」

クマ被害増加の主な原因の一つ目は、「食料事情の変化」。近年は猛暑や台風がクマの食べ物であるドングリの不作に影響を及ぼしている可能性があるということです。クマは冬眠前に大量のエサを必要とするため、この1か月ほどは特に注意すべき時期だということです。
食べ物を求めてクマが市街地に出てきてしまうということは、「市街地には食べ物がある」と学習するということで、冬眠から明けた春も出没する可能性があるということです。そのため、「この秋だけでなく、来年以降もこの状況は改善していかない」と専門家は話しています。
二つ目は、「個体数の増加」。1990年代末は全国で推定8000頭でしたが、日本ツキノワグマ研究所・米田一彦理事長によると、近年は全国で推定2~5万頭いるとの見方も。数が増えれば、事故件数も増えてくるということです。
三つ目は、「過疎化・高齢化」。1980年代以降、西日本から過疎化・高齢化が始まり、クマを追い払う人手自体が減っているということです。
耕作放棄地など、放置された果樹などがエサとなり集落へ侵入し、「集落依存型クマ」が北上し東北・北海道を中心に増加。「アーバンベア」クマの都市化といわれる状況です。クマだけの問題ではなく、人間の状況も密接に関わっているということです。
では、クマはなぜ人を襲うのか。
クマは、人間を食べるために襲ってるわけではなく、敵として攻撃しているということです。クマも人間を恐ろしいと思っていて、特にパニックに陥ると攻撃力が高くなるため、クマに遭遇しても、大声を出したり、物を投げつけたりするとより攻撃してしまうということです。
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クマは特に2歳が危険ということです。2023年ドングリなどが凶作で親子のクマが人里へ。このとき子グマは状況がわからず、人里に出てきていましたが、そのクマが自立期を迎え、縄張りを求め動きが活発化してきているということです。2歳のクマは人との軋轢を起こしやすく、人間の生活圏に現れやすいということです。
関西のクマ事情 京都のツキノワグマ推定個体数は増加傾向に

これまで東北や北海道を中心に被害がでていましたが、関西でも他人事ではないようです。
【関西のツキノワグマの推定個体数】
兵庫・岡山・鳥取 800~2000頭
京都 800~2000頭
滋賀 100~400頭
奈良 100~400頭
大阪・和歌山は調査されていないということです。
いままでは日本海側を中心に生息しているということでしたが、現在は、奈良・大台ヶ原まで分布が広がっているということです。大台ヶ原は、自然が豊かで繁殖地になっている。ただ、周囲に市街地があるため、注意が必要な場所になったということです。
これからは秋の行楽シーズンで山登りなどをする人も多いと思いますが、既に今年度は関西でも、クマの目撃情報が出ています。専門家も兵庫北部や京都北部、滋賀・伊吹山は特に注意が必要です。
【目撃情報 2025年度】
▼京都北部
京丹後市310件
舞鶴市 137件
▼兵庫北部
豊岡市 116件
▼滋賀・伊吹山
米原市 10件
長浜市 25件
食べ物が多い地域は要警戒ということで、自治体のホームページでクマ出没マップなどの情報をチェックすることや、クマ避けスプレーや鈴などを用意することでクマに人間の存在を知らせるということが大切だということです。
命を守る新ルール「緊急銃猟」制度とは

そんな危険なクマに対し新しいルールが始まりました。10月22日、木原誠二官房長官は「緊急銃猟制度の円滑な運用を全国に広げる」と発表。「緊急銃猟」とは、クマが人里に進入した際、銃以外の方法では捕獲が困難な場合は市町村の判断で猟銃が使用できる制度のことで、9月に施行された新たなルール。市町村がハンターに委託し、クマに対して市街地で猟銃を使うことができるということです。
この緊急銃猟制度について、岩手大学・山内貴義准教授は「誰がGOサインを出すのか?自治体にしわ寄せがくるのでは」との懸念を示した一方、「自治体はクマ対応の研修やハンターの育成など、マニュアルを形成していくので今後はそれらがメリットになる」とも話しています。
クマ被害のは状況が改善することはほとんどないというのが専門家の見方。人より優位かつ大胆に行動するクマと共生していくためには、今の段階では「クマが人里に降りてくる前にどうするか」が課題だということです。
まだ関西では稀だといわれているクマの被害ですが、これから危険性が高まる可能性もあります。身の回りの安全に注意して行動するようにしてください。
2025年10月24日(金)現在の情報です
