MBS(毎日放送)

京都の観光地に異変「客の8割が外国人」「日本語聞こえへん」日本人はどこへ? 市民の不満トップは"市バスの混雑"か 観光客・市民・事業者の「三方よし」実現するには...

解説

SHARE
X
Facebook
LINE

 秋の観光名所といえば京都ですが、取材をしてみると有名な観光地には外国人観光客ばかり。伏見稲荷大社の周辺の店で話を聞くと、「海外の方が(客の)8割くらい。多い時は9割くらい。日本人の方が少なくて珍しい」といった声も聞かれるほど一体、日本人観光客はどこへ行ってしまったのか。いま京都観光で起きている異変を、京都市出身のMBS米澤飛鳥編集長が解説します。◎米澤飛鳥:よんチャンTV編集長 京都市出身 元京都支局長 「京都観光」を巡る問題を長年取材

日本人はどこへ?京都の観光地の今

 今年の春に京都市を訪れた日本人と外国人の観光客数をそれぞれ、去年の春と比較すると…

【東山】日本人:-12% 外国人:+66%
【嵐山】日本人:-20% 外国人:+22%
【京都駅】日本人:-9% 外国人:+72%
(京都市の資料より 今年3月20日~4月20日 前年3月21日~4月21日と比較)

 日本人観光客は減っている一方で、外国人観光客は増えているということがわかります。

 では、日本人観光客はいま、京都市のどこに行っているのか。先ほどのデータとは逆に日本人が前年より増えているエリアが以下の通りです。

【京北】日本人:+24%
【山科】日本人:+18%
【高雄】日本人:+17%
【伏見】日本人:+4%

 いわゆる京都のメイン観光地の周辺エリアで日本人観光客が増えていると言えそうです。

秋の京都 隠れた穴場スポット

 こうした観光客の“分散”は京都市も推進していて、「とっておきの京都プロジェクト」と題して、京北・高雄・西京・大原・山科・伏見の6エリアを推しています。

【各エリアの名所】
京北・魚ヶ渕(うおがぶち)吊り橋
高雄・神護寺(じんごじ)
西原・善峯寺(よしみねでら)
大原・寂光院
山科・毘沙門堂
伏見・藤森(ふじのもり)神社

 中でも秋の注目スポットは高雄。京都市右京区にある栂尾山・高山寺(とがのおさん・こうさんじ)という世界遺産の寺では、境内に200~300本のモミジがあり、国宝「石水院」から眺める紅葉の景色が非常に人気です。

 例年見ごろは11月中旬~下旬。JR京都駅からJRバスに乗って約55分でアクセスできるということです。

京都市民の不満1位は「市バスの混雑」

 こうした穴場スポットなどへ“分散”することで、観光客が楽しむことができる環境が生まれている反面、京都市民の不安は残っています。

 京都市民に観光課題についてアンケート調査をしたところ、回答割合が一番高かったのが「市バスの車内の混雑」(31.6%)でした。24.1%が挙げた「マナー問題」をめぐっては、私有地に入って写真撮影を行う観光客に住民らが苦悩するなどの問題も生じています。

【京都市民に意見募集した観光課題】(京都市資料より)
市バスの車内の混雑:31.6%
市バスの乗り場の混雑:6.2%
観光客のマナー問題:24.1%
特定の観光地への集中:11.7%
道路の混雑:9.8%
ごみ問題:5.1%
観光バスの路上駐車・停車:4.4%
その他:7.1%

京都市の宿泊税が「最高1万円」に!?

 そうした中、来年3月から京都市の宿泊税の引き上げ開始という新しい動きもみられます。

 宿泊税とは自治体が独自に課税するもので、例えば京都市では、市内の宿泊施設に泊まる人に対して宿泊料金に応じて以下の税額を徴収しています。

【京都市の宿泊税 ※現行】
2万円未満(宿泊料金):200円
2万円~5万円未満:500円
5万円以上:1000円

 これが来年3月からは、以下の額に引き上げられます。

【京都市の宿泊税 ※引き上げ後】
6000円未満:200円
6000円~2万円未満:400円
2万円~5万円未満:1000円
5万円~10万円未満:4000円
10万円以上:1万円

 この引き上げにより、去年61.6億円だった宿泊税収は、約2倍の年間126億円になる見通しだということです。

宿泊税“全国一”で三方よしとなるか

 京都市は宿泊税引き上げの理由について次のように述べています。

▼観光客や高級ホテルの増加などの状況で判断
▼宿泊税のつかいみちはオーバーツーリズム対策、文化財や京町家の保全など

 一方で、京都市の宿泊施設側からは▽旅先として“京都離れ”を危惧、▽使途の透明化を、▽日帰りの観光客からの新たな税徴収も検討を、などの意見も出ています。

 京都市が目指す理想は、京都を訪れる観光客にとっても、住む市民にとっても、働く観光関連事業者にとってもいい“三方よし”の状態。そのためにはお互いの立場を理解して尊重していくことが非常に大切です。

 今後どうやって京都が観光都市として発展していくのか、注目されます。

2025年10月28日(火)現在の情報です

今、あなたにオススメ

最近の記事

京都の観光地に異変「客の8割が外国人」「日本語聞こえへん」日本人はどこへ? 市民の不満トップは"市バスの混雑"か 観光客・市民・事業者の「三方よし」実現するには...

2025/10/28

【梅田・茶屋町】「今も昔もトレンドの街」閉店相次ぐ中でも「テナント需要が高い」と言えるワケとは?ユニクロ・ロフト撤退後の茶屋町を事業用不動産の専門家が分析

2025/10/27

自維連立を加速させた高市氏・吉村氏の直接通話  『40分の隙間』に両者をつないだのは"維新の黒子"だった―― 激動政局の舞台裏をキーマンが自ら明かす【維新・遠藤敬 総理補佐官インタビュー】

2025/10/26

【冬眠前の今が危険!】特に"2歳のクマ"に注意 被害増加の原因は人間の「過疎化・高齢化」か... 専門家「来年以降もこの状況は改善していかない」

2025/10/24

高市内閣の『責任ある積極財政』で生活良くなる?ガソリン・電気ガス・消費税...経済政策を「すぐやりそう」「いずれやりそう」「時間かかりそう」3つに分けて総チェック!

2025/10/22

【高市政権発足】自維連立の「キーマン」は維新・遠藤国対委員長?両党の"パイプ役"が総理補佐官起用 「議員定数削減」は"満額回答"も「政治とカネ」との優先順位は?

2025/10/22

【全文公開】高市新総理誕生を立憲・辻元清美氏はどう見る?自民と維新の合意文書は「議論のすっ飛ばし」!?"右派の色"を危惧 「高市氏は勉強家」と評しつつ閣僚の顔ぶれは女性2人で「がっかり」

2025/10/21

【全文公開】維新の創設者・松井一郎氏は自維連立をどう見る?「維新はなくなってもいいから政策実現し結果を」 副首都構想は「早く実現を。大阪都構想とは別に考えるべき」

2025/10/21

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook