2025年10月02日(木)公開
現実味帯びてきた維新の『副首都構想』裏には政治的思惑? "少数与党に協力"で実現狙う維新 国民民主と天秤にかける自公 新総裁は賛成か反対か
解説
9月30日に日本維新の会が発表した「副首都構想」の骨子案。東京一極集中の是正などを目的とするこの案では、副首都の指定要件として“特別区”の設置などが挙げられていて、維新が大阪で訴えてきた「大阪都構想」の実現が前提になっています。 過去2度にわたり住民投票で否決された「大阪都構想」。そして、今年の参院選で公約に掲げた「副首都構想」。ここに来て「にわかに現実味を帯びてきた」と専門家は語りますが、その背景には少数与党となった自民・公明の思惑も…? 果たして維新は悲願を達成するのか?そもそも“副首都”とは?総裁選がカギに? 政治ジャーナリストの武田一顕氏、法政大学の白鳥浩教授の見解をもとにお伝えします。
「副首都構想」メリット・デメリットは?
副首都構想には、主に3つのメリットがあるとされています。
▼災害時のバックアップ⇒東京で災害・有事などが発生した場合
▼一極集中の過密解消⇒交通・医療機関の混雑などを解消
▼移転先の街の発展⇒副首都の経済発展などを促進
海外でも首都機能を分散させる動きがあります。韓国ではソウルへの一極集中を是正するため、行政機関をセジョンへ移転。エジプトでは、カイロの過密を解消するため「ニューカイロ」の建設を計画しています。
一方、課題やデメリットも。
▼非効率⇒国会・官庁・企業などが分散すると連携が取りにくい
▼莫大なコスト⇒新たに建物を建設する場合など
▼首都衰退リスク⇒機能を移転しすぎて東京が衰退する可能性
専門家の間では、「人口減少が進むなか、副首都を作る余裕があるのか」という意見もあるようです。
副首都に必要な機能は主に3つ。
▼行政 官邸機能
▼立法 緊急時に法律制定できる国会機能
▼司法 最高裁などの裁判機能
加えて、外務省・総務省も最低限必要だとされています。こうした機能の支部を設置するのか、あるいは建物を作るのかなどについて、今から議論が進んでいくということです。
候補地は「福岡」「札幌」「大阪」 それぞれの長所・短所は?
では、具体的にどこが副首都の候補地に挙げられているのか?これまで様々な議論がありましたが、代表的な都市は次の3つです。
▼福岡
長所⇒コンパクトシティの代表格。南海トラフ地震の影響が少ない。アジアに近い
短所⇒朝鮮有事の際にリスクが懸念される
▼札幌
長所⇒東京から遠い。南海トラフ地震の影響が少ない。中国・ロシアとの貿易拠点になり得る
短所⇒ロシアとの平和条約がなく有事の際にリスクか
▼大阪
長所⇒インフラが充実。津波のリスクが比較的少ない。京都・神戸の連携にも期待。誘致に前向き
短所:既に都市の過密が進んでいる。
現状、最も現実的なのが大阪で、副首都となれば関西全体の発展にも影響しそうです。
「大阪都構想を再び進めたい狙いが…」過去の住民投票の民意はどうなる?
維新がまとめた「副首都構想」法案の骨子には、副首都の“条件”の1つとして、「法律に基づく特別区の設置が行われている」という文言が盛り込まれていて、この点が議論を呼んでいます。
地方行政に詳しい法政大学大学院・白鳥浩教授は「首都機能を移転するだけなら特別区は必須ではないのでは」「東京都と同じ行政システムを持つ必要はない」と指摘。その上で、「『特別区』を条件にしているのは、大阪都構想を再び進めたい狙いが見え隠れしている」と見ています。
※特別区=法律で定められた市町村に準ずる地方公共団体。現在は東京都にだけ存在(東京23区)。
過去に2度(2015年・2020年)、住民投票で否決された「大阪都構想」。今回の「副首都構想」は、このNOを突き付けられた「大阪都構想」の実現が前提になっています。仮に国会で法案が通った場合、2回の大阪の “民意”はどうなるのか…副首都の条件として「特別区」が本当に必要なのか、説明が求められそうです。
「少数与党への協力」が維新のカード?対する自公は…
「副首都構想」をめぐっては、政治的な思惑が絡んでいます。政治ジャーナリストの武田一顕氏は「自公政権が少数与党のため、維新は協力する見返りに『副首都構想』の実現を狙っている」と指摘。一方、与党側は維新・国民民主を天秤にかけて、どちらに協力を仰ぐべきか検討しているのではないかと見ています。
▼国民「103万円の壁の引き上げ」など⇒お金がかかる
▼維新「副首都構想」⇒お金がかからない
「副首都構想」は、既存の建物をバックアップ拠点に指定するなど、比較的コストがかからず、自公政権にとって“呑みやすい”と武田氏は述べています。
しかし今回、「特別区」が条件に加わったことで新たな法整備・コストが発生するかもしれず、自公の判断に影響を与える可能性があるということです。
維新は連立入りするのか?
また、仮に維新が連立政権入りした場合、「副首都構想」の実現に大きく影響しそうです。与野党の協力体制としては、「パーシャル連合(政策ごとの交渉・協力)」と「連立入り」の2種類がありますが、パーシャル連合を採用してきた石破政権が参院選で敗北したことで、総裁選候補者の5人は連立に前向きな姿勢を見せています。
ただ、維新が連立政権に入った場合、舵取りが非常に難しくなると武田氏は指摘。「自公に飲み込まれず存在感を示す」「理念が異なる自公と協力して政権を安定させる」という2つをいかにバランスさせるか、ここが問われると言います。
新総裁は「副首都構想」に賛成?反対?
こうした状況下で、自民党総裁選の行方も「副首都構想」実現を左右すると考えられます。
▼高市氏
⇒奈良出身で維新とは選挙で競合。政策的には国民民主党とのつながりが深いとされる
▼林氏
⇒“全方位”の姿勢を示している
▼小泉氏
⇒小泉氏を支持する菅副総裁が維新と友好的
10月4日(土)に行われる自民党総裁選、そして、その後の与野党間の協力体制が「副首都構想」の実現に向けて焦点となりそうです。
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