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配達員によるオートロック解錠は「履歴残り安心なので歓迎」再配達に苦悩する業者の声 置き配指定でもオートロック開かず持ち帰るケースが多々

解説

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 1年間で配達される荷物の数は約50億個、そのうち「再配達」が8.4%(約4億2000万個)です。国土交通省は、物流や配送の効率化を図るため荷物を手渡しせず玄関先などに置く「置き配」の促進に向け、配達員がマンションのオートロックを解錠できる仕組みを支援すると明らかにしました。 深刻な人手不足が問題となっている宅配業界。“オートロック解錠”でセキュリティーはどう確保される?「置き配」の効果を解説します。

「配達員によるマンションのオートロック解錠」不安の声も

 国交省は「配達員によるマンションのオートロック解錠の共通化」に向けて支援する考えを発表しました。先週このニュースが報じられた際には、「セキュリティ大丈夫?」「神戸で起きた女性刺殺事件で問題となった『オートロックの共連れ』もあるし怖い」などの声も上がりました。

 これを受けて中野洋昌国交大臣は「配達員がマンションのオートロックを解錠する仕組みは既に複数の企業により開発されている(ヤマト運輸・佐川急便・Amazonなどがすでに導入)」「少なくとも2万棟を超えるマンションで導入実績がある」としたうえで、「このサービスに関して、セキュリティーを確保・向上しつつ異なる企業間での連携促進を検討しているもの」と説明しました。

 簡単に説明すると、伝票情報などでそのとき限りで開錠ができるシステムを導入しているマンションが既にあり、伝票番号を入力してオートロックを開錠したあと家の前に置き配する、という仕組みが既に約2万棟のマンションで導入されているとのこと。

 しかし、各会社によってシステムが違うため不便だということで、企業間でより連携して使いやすいものにしませんかという提案だということです。

1年間で4億2000万個もの荷物が再配達に

 なぜ、このような取り組みを行うとしているのか。背景にあるのが「宅配便」の増加です。1年間に配達される荷物の数が約50億個で、そのうちの8.4%である4億2000万個が再配達に。これはドライバー6万人分の労働力に相当し、人材不足でひっ迫した状態となっています。

 現状を受けて国は「置き配」の標準化を検討していて、「手渡し」の場合に追加料金を設定する案も上がってきています。

「置き配」でドライバーの負担が大幅削減

 「置き配」の効果を集合住宅の再配達率で見た場合、対面での配達は18%だったのに対して、置き配は2%と、大幅に削減されています(国交省の2021年度資料より)。

 また、配達の所要時間について、対面では2分7秒だったのに対し、置き配では1分20秒と短縮されているということです。

 しかし、大阪の配送業者に実情を取材すると、置き配指定なのにオートロックが開かずに持ち帰ることが多いと訴えています。

 ほかにも、夏は重たい飲料ケースの配送が多く、さらにマンションでは台車が使えないところもあるため、再配達となった場合は特に大変だといいます。配達員によるオートロック開錠ができれば、配送業者側にとっても履歴が残り安心できるため、歓迎だということです。

"物流後進国”の日本 アメリカは置き配が基本

 国交省は、オートロック解除システム共通化の支援を行う考えで、駅や公共施設などの宅配ロッカーの普及などもさせていきたいとのこと。再配達の削減に向けた来年度予算を、前年度比14.8倍の2億9500万円、計上する予定だということです。

 日本は"物流後進国”とも呼ばれていますが、海外ではどのような取り組みが進められているのか、一例を紹介します。

 ■アメリカ 置き配が基本。手渡しには10ドル(約1470円)かかる場合も。

 ■中国 顔認証を導入した「無人受け取りステーション」が24時間稼働

 多くの人が利用する便利な宅配サービスを持続可能にするには、わたしたちの意識の持ち方と制度の改善が必要ではないでしょうか。

2025年09月19日(金)現在の情報です

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