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「クマ被害」増加! 学習能力が高いクマ 餌付けは「殺人ほう助と同じ」 遭遇しないために「笛」や「鈴」は有効 出会ってしまった場合に取るべき意外な行動は... 「柿」など誘因物の除去も大切

解説

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 全国で相次ぐ「クマ被害」。秋の訪れが近づく中、これから一層注意が必要となっています。 そもそも、どうしてこれほど被害が増えているのか?個人や社会全体でできる対応策は何か?兵庫県立大学・横山真弓教授の見解も交えて解説します。

北海道にはヒグマが約1万2000頭

 データを見てみると、日本の本州でのツキノワグマによる死傷者は増加傾向にあり、許可捕獲される数も増えています。

 環境省によりますと、クマの推定個体数を都道府県別で見た場合、北海道や東北地方で増加しています。関西でも、兵庫県には800頭~2000頭ほど生息していると推測されています。

 兵庫県立大学の横山真弓教授によりますと、北海道には現在、ヒグマが約1万2000頭もいるということです。

 兵庫県では絶滅が心配された時期もあり100頭もいないぐらい減っていましたが、現在は生息数が800頭以上まで“回復”してきています。

学習能力が高いクマ ”人馴れしたクマ”が増えて人身被害増

 クマによる被害が増えている理由は「クマの個体数の増加」と「学習能力が高い」ことが上げられます。
 
 なぜクマが増えたのか、理由は「山が豊か」になったためです。現在は人間が“山離れ”し、耕作放棄地となってある意味で自然の形に戻っているのです。エサなども豊富になっているため、クマやイノシシ、シカなど、動物にとっては暮らしやすい山が戻ってきています。

 個体数が増えた地域ではクマの「分布域」も拡大し、人間の生活圏にも出没するようになっています。

 横山教授によると、若いクマの行動範囲は300kmほど=4市町村ほどにまたがる広さだということです。
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 クマの生態は本来は臆病なため、人間を怖がって人里には来ませんでした。しかし、クマは学習能力が高いため、徐々に「楽にエサが手に入る」「人間の方が逃げる」と学習し、人馴れしていきます。こうした「アーバンベア」が出てきて人身被害につながっているという構図があります。

「笛」や「鈴」はやはり有効 出会い頭が一番危険! 餌付けは「殺人ほう助と同じ」

 では、我々にできることは何なのか。個人でできる対策と社会全体でできる対策を見ていきます。

 まず、クマに遭遇しないために。クマは▽目は悪く、耳と鼻は良い ▽高音に警戒するという特徴があるため、「笛」や「鈴」はやはり有効です。

 それでも遭遇してしまった場合は、クマと距離があり、クマ側が気づいている場合は、確認しながら後ずさりして離れていきます。

 距離があり、まだクマ側が気づいていないときは、穏やかな声で「おーい」などと大きく手を振ると、クマは自分より大きな動物だと認識して、逃げていくということです。

 クマが気づいていない場合、そのまま逃げるのがいいのでは…?と思ってしまいがちですが、近い距離でばったり出会った場合、クマは驚いて人間を攻撃してきます。“出会い頭”が一番危険だということです。

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 最終手段として、クマスプレーがあります。事前に噴射の練習と、すぐに取り出せるよう準備しておくことが必要だということです。

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 また、人間の食べ物の味を覚えさせないことも非常に重要です。観光客などによる餌付け行為は、「殺人ほう助と同じくらい危険な行為」と横山教授は指摘しています。

"クマとの陣取り合戦に人間が負け始めている”

 クマとの向き合いでは、「被害防除」と「個体数の管理」の両輪を考える必要があります。

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 被害防除としては、▽電気柵の整備 ▽「柿」など誘引物の除去なども必要です。

 横山教授は、クマの大好物である「柿」の除去は非常に重要で、“実ったらすぐ採る”ぐらいの姿勢が大切だといいます。

 今は地域の方がこうした対策を自発的に行っているため、今後は鳥獣対策員といった専門職を置く必要があるかもしれません。

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 個体数の管理についてはハンターの不足や高齢化の問題、さらに「趣味か仕事か」の問題があります。報酬を整備するなど「クマ狩猟の仕事化」も考える必要があります。

 横山教授は、人間とクマの“陣取り合戦”を考えた場合、いまは“人間が負け始めている”としています。対策を行わないと農業などにも影響が及ぶと警鐘を鳴らしています。

兵庫で実現できたクマの生息数把握とコントロール

 個体数管理の点で、横山教授によると、兵庫県ではクマの生息数の把握とコントロールが実行されています。

 兵庫県では2003年から「ツキノワグマ保護管理計画」に基づき、マイクロチップで生息数の把握を始めました。

 そして、生息数が少なくなった場合には、人里に来たクマを殺処分せずに痛みを覚えさせて、放獣。生息数が多くなった場合に人里に来た場合に事故など起きれば殺処分する運用にしたのです。

 また、エサとなるドングリの豊作・凶作が、クマの出没・目撃回数と関係している点に着目した予測も行われています。
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 今年については、ドングリが豊作であるため、人里に降りてくるリスクは「少ない」と予測されています。

 ただ、いずれにせよ“油断することなく”、クマから命を守る方策を取ってください。

2025年09月19日(金)現在の情報です

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