2025年08月27日(水)公開
【神戸女性刺殺事件】3年前の類似事件で「再犯が強く危惧される」と指摘されていた谷本将志容疑者 再犯防止のアプローチ・今後のポイント【弁護士解説】
解説
8月20日(水)に神戸市中央区で発生した女性の刺殺事件。防犯カメラの映像などから、殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者(35)の事件前後の足取りなどが徐々に明らかになってきています。 また、谷本容疑者は2022年に類似事件を起こし執行猶予付きの有罪判決を受けていたこともわかっています。今回の事件について、今後のポイントなど刑事弁護に詳しい川崎拓也弁護士に話を聞きました。
事件前日にも被害女性の職場付近を徘徊か
8月20日(水)に発生した女性の刺殺事件の経緯を振り返ります。
被害女性(24)は午後6時半頃に職場を出て、その直後に谷本将志容疑者が尾行を始めたのではないかと見られています。女性は郵便局に立ち寄った後に阪神電鉄の西元町駅から神戸三宮駅へ。そしてスーパーで買い物をした後にポートライナーで貿易センター駅へ向かい、そこから自宅に戻りました。オートロック付きのマンションでしたが、そこで事件が発生。
捜査関係者によると、谷本容疑者は犯行後、現場から徒歩で逃走し、タクシーで新神戸駅へ移動したということです。
防犯カメラ映像には、事件の前日も女性の職場付近に足を運んでいる谷本容疑者とみられる男の姿が記録されています。Tシャツ、短パンそしてスニーカーというラフな姿で携帯電話を片手に歩く谷本容疑者。そして、被害女性の職場があると見られる方向を向いてしゃがみ込みます。携帯電話で通話をしているような姿で約4分間ほどその場所にとどまったということです。
谷本将志容疑者の人物像
逮捕された谷本容疑者の人物像についても一部、明らかになってきました。
大阪府豊中市内の中学校を卒業後、大阪府内の私立校へ進学。そして2011年~2022年、神戸の建設会社で働いていたということです。2023年には千葉県の会社で働いていましたが、人間関係がうまくいかなかったとして退職し、同年の5月から現在の勤務先である東京都内の会社でドライバー業に就いていたということです。
勤務先の社長は谷本容疑者について「お客さんからの信頼も厚いし、提案もしてくれるし、いたって真面目。リーダー的な存在」と話しています。
3年前に類似事件で執行猶予付きの有罪判決
谷本容疑者は2022年にも類似事件を起こして有罪判決を受けています。
路上で見かけて一方的に好意を抱いた神戸市内の20代の女性に対して、▽5か月間つきまとい、▽住居付近をうろつき、▽被害者の姿を動画撮影し、▽5回“共連れ”でオートロックマンションに侵入。そして5月、首を絞めて殺人未遂容疑で逮捕されました。
非常に類似点が多いと思われるこの事件。川崎弁護士は次のように話します。
(川崎拓也弁護士)「過去にこういう犯罪歴があると『またやったんだ』と思ってしまいます。ただ、以前悪いことした人が必ず次に悪いことをするかというと、必ずしもそうではない。谷本容疑者は自分が刺したことを認めていますが、もし『自分じゃない』『殺意がない』と言ったときには、過去の犯罪歴を有罪の立証に使うことは基本的にはできないと言われています」
川崎弁護士によると、「量刑を決めるときには、過去に悪いことした人はもっと重くなるが、犯罪したかどうかのときには慎重に捉えながら見ないといけない」ということです。
再犯の可能性を指摘も…執行猶予は妥当だったのか
2022年の事件の判決では「住居侵入・傷害事件の翌日に謝って許してもらいたいと考えて被害者方へ赴こうとした経緯からしても、思考の歪みは顕著である。再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」と、再犯の可能性が指摘されていました。
続けて判決では、「他方、被害者は幸い重傷には至らなかったこと、本件を認め、再犯防止につとめると述べていることを考慮」とし、傷害やストーカー規制法違反などの罪で執行猶予付きの有罪判決となりました。
この3年前の類似事件について気になるポイントを川崎弁護士に聞きました。
Q執行猶予付き有罪判決は妥当だった?
「どうやって裁判官が実刑、あるいは執行猶予にするかを決めているかというと、どんな危険な行為をどんな気持ちでしたのか、犯罪そのものを見る。その後、もしかしたら再犯するかもしれない、あるいは生い立ちに何かあったのかもしれないなど、事件以外のことも一緒に考えて判決を決めます」
「基本はどんな罪を犯したか。殺人未遂であれば実刑の可能性が高いですが、傷害罪で起訴されていますので、怪我の重さ次第で執行猶予付きになるのはあり得るんだろうなと思います」
Q執行猶予の意味は?
「日本の刑罰では、死刑以外は必ず社会に帰ってくることになります。そのときに再び社会生活を営めるように刑務所の中で矯正教育をします。でもそれは刑務所の中だけではなく、社会の中でもできます。初めて犯罪を犯したときには1回だけチャンスを与えましょう、この執行猶予期間に何もしなければ、刑罰はなしにしてあげます。これが執行猶予という制度です」
Q2022年の判決で「思考の歪みは顕著である。再犯が強く危惧される」と指摘されているが?
「初犯であり傷害罪なので執行猶予になったとは思いますが、裁判官は迷ったのではないかと思います。そうであれば、『保護観察付き執行猶予』ということもあり得たと思います。保護観察というのは、執行猶予期間中に、月に1回保護司と面談して生活状況を報告したりする。そこに繋げてもよかったのかなと今になっては思いますが、なかなかリアルタイムの判断としては難しかったのかなと」
Q他に再犯を防ぐアプローチは?
「弁護人として弁護するときにはこういうアプローチをこれからとっていきますという道筋を準備します。それを評価してください、社会で更生できますと。刑務所に行くと人間関係が切れてしまい再犯してしまう人もいるので、道筋をつけた上で判決を求めるというのは弁護活動としてはあります」
「しかし、社会の制度の中で保護観察以外で執行猶予になったときに『ここに行きなさい』というのが今あるかというとないです。その辺りはこれから議論が深められていく。ちなみに刑務所に行く場合でも拘禁刑に変わり、より教育的な側面が重視されるようになっています」
Q国民感情と乖離があるような気もしますが、専門家の立場としてどう考える?
「いかにして社会と繋がっていくのかということが、犯罪を犯した人にとっても周りにとっても重要で、制度的に議論していかないといけない。刑務所に入ることだけが選択肢なのか、それとも社会の中でいろいろなサービスを受けながらやっていくのか。ともすると、犯罪を犯していなくても犯罪を犯しそうだから刑務所に入れてしまえ、みたいな話にもなりかねないので、バランスをとっていく必要があると思います」
容疑者と女性は本当に初対面だったのか?今後のポイント
事件の今後のポイントについて、「本当に初対面だったのか」と「犯行動機」を挙げた川崎弁護士。
谷本容疑者とみられる男が女性の勤務先近くから尾行を始めていた点に触れ「関係性があったのではないかというふうにも思える」と指摘したうえで、次のような見解を示しています。
「報道で出ていないのは、エレベーターの中でどんなことがあったのか。それによって動機もわかってくるかと思います。本当に全く知らないとすれば、ゲリラ的な犯行となるので、認知の歪みはなかったのか、責任能力はどうなのかというあたりも広く捜査していくことになると思います」
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