2025年06月17日(火)公開
【長生きの秘訣】健康食のポイントは「腸内細菌」1日にキャベツ1.4玉分の食物繊維が必要!?"長寿の町"京丹後の暮らしに学ぶ運動・食事【専門家の見解】
解説
京都府京丹後市で6月16日に始まった「第1回世界長寿サミット」。“健康長寿”についての最新の研究成果や取り組みなどについて意見交換を行います。実は、京丹後市は『100歳以上の割合』が全国平均の3倍で、“長寿の町”として今、世界から注目を集めています。なぜ京丹後の人は長生き?元気に健やかに長生きするためにはどうしたらよい?専門家の見解をもとにまとめました。◎京都府立医科大学・内藤裕二教授◎慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート・野村周平特任教授
京丹後に研究者100人が集結
世界長寿サミットは6月19日までの4日間、京都府京丹後市で開催されている国際会議です。1回目となる今回は10の国と地域から研究者100人が集結し、日本の長寿研究と世界の知見を共有するということです。
開催地の京丹後市は、人口約4万9000人の市で、100歳以上の人が124人います。日本において、10万人あたりの100歳以上の人口は、全国平均が76人(去年9月)の一方、京丹後市は約250人(今年3月)。全国平均の3倍以上という計算になります。
サミットでは最終日の19日に「世界長寿サミット宣言」が発表される予定で、京丹後エリア1400人以上の健康データの調査・分析による“長寿のために大切な4項目”が公表される見通しです。そのうちの2項目を、事前に教えてもらいました。
青信号の横断歩道を渡り切れなくなったら注意
“長寿の極意”、その1つは「運動」ということです。京丹後市はウォーキングをすすめていて、中でも、ポールを使用しながら歩く「ノルディックウォーキング」を推進しています。また、市内には廃校のグラウンドやプールなどを含め、市民が使える社会体育施設が42か所あります。ほかにも、卓球・ゲートボール・水泳など、サークルのような活動を市民らが楽しんでやっているということです。さらに、多くの市民が田畑を持っていて、農作業が自然と体を動かすことにつながっているようです。
京都府立医科大学の内藤裕二教授によりますと、長寿にも大切な2つの“体力”があるといい、それが「歩行速度」と「握力」です。下半身の筋力と上半身の筋力の状態を調べるのに測りやすく、力の低下が象徴的に出るのがこの2つだということです。要注意の一つの基準としては、以下の通りです。
◆歩行速度:青信号の横断歩道を渡り切れなくなる
◆握力:男性28kg未満/女性18kg未満 ペットボトルのキャップを開けにくくなる
こういった筋力が下がると、寝たきりになるリスクが上がるということです。では、生活の中でどんな運動をやった方がいいのか。例えば、「ウォーキング」のほか、手の「グーパー体操」、そして「ラジオ体操」があげられ、こうした運動を続けることが大事のようです。
「食物繊維が大事」と言われるワケ
“長寿の極意”、2つ目は「植物ベースの食事」です。京丹後エリアの食生活の特徴としては、▼魚をよく食べて、赤肉(牛や豚)をあまり食べない。▼食物繊維が豊富な海藻、根菜、雑穀米などもよく食べているということです。
健康に暮らす食事のポイントとして、「腸内細菌」の存在が今、言われています。内藤教授によりますと、腸内細菌が活性化すると、便通のほか、最新の研究では糖尿病・認知症・がんなどのリスク低減にも効果があるとされています。
腸内細菌が活性化するにはどうしたらいいのか。そもそも食べ物は、胃から小腸を通って大腸を通り、便として排出されます。小腸は栄養の吸収を、大腸は水分の吸収や便を出す働きがあります。腸内細菌の多くは大腸にいて、ここで活性化させるには“エサ”が必要ですが、私たちが食べたものの多くは小腸までで吸収されます。そうした中、体内で消化・吸収されず大腸まで届くのが「食物繊維」だということです。食物繊維が大事と言われるのは、大腸に主にいる腸内細菌に活躍してもらうためのエサが食物繊維だから、ということのようです。
主食を変えて食物繊維をとりやすく?
また、内藤教授によりますと、腸内細菌は1000種類ほどあるそうで、体に良い作用を及ぼしてくれるのが善玉菌。一方、悪い作用を及ぼす悪玉菌もあり、その細菌を活性化させてしまうのが、牛肉・豚肉・羊肉などの赤肉だということがわかってきたようです。
WHO=世界保健機関によりますと、天然由来の食物繊維の1日の摂取目標は25g。25gというのは、▼キャベツ1.4玉分▼ゴボウ3本分▼ニンジン6本分▼レンコン8本分にあたります。野菜だけで摂取するのはなかなか難しそうなため、主食を変えることが必要かもしれません。100gあたりの食物繊維の量は、白米が0.5gに対し、もち麦ご飯が1.4g(※白米1合に対してもち麦50g)、玄米は3.0gです。また、厚揚げや油揚げなど大豆からとる方法もあるでしょう。
「健康寿命」は平均寿命と10年以上の差
京丹後市は、100歳以上になっても「自立して生活」している人も多いという特徴があります。健康寿命も1つのポイントとなるでしょう。慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの野村周平特任教授らの調査では、日本の平均寿命は男性82.2歳・女性88.1歳で、ここ30年で6歳近く伸びているということです。一方、健康寿命は男性72.2歳・女性75.4歳で、これも30年前に比べると4年ほどは伸びているそうですが、平均寿命との差は10年以上あります。
“長寿の極意”は運動と食事、そしてあと2つは何か…。19日に発表される予定です。
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