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「ありえないレベルの違反、もっとひどい状況かもしれない」日本郵便の点呼問題 トラック2500台"許可取り消し"の影響はどこまで?物流ジャーナリストが指摘する社内体質としわ寄せ

解説

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 日本郵便では、アルコール検査の未実施など不適切な点呼が約15万件あり、点呼記録の改ざん(不実記載)が約10万2000件ありました。配送用のトラックなど2500台の一般貨物自動車運送事業の許可取り消しを受け入れて、許可の再取得は5年できないという状況です。記者会見では何が語られ、私達の生活にどんな影響があるのでしょうか。物流ジャーナリストの坂田良平さんに詳しく聞いていきます。

――調査結果はどのように受け止めますか。

とんでもない話です。一般的な運送会社の感覚で言うと、ありえないレベルの違反ですし、さらにこの調査結果は、あくまで日本郵便自身が調査した結果であって、実はもっとひどい状況にあるかもしれません。

――点呼とは、どのような内容でしょうか。

点呼は2回やるんです。これからトラックを運転しますというときと、運転して帰ってきましたっていうとき。出発時点呼は、免許証を持っているかどうか確認し、アルコールチェッカーでチェックをします。それから、健康状態に問題がないか、運転に集中できないような状況でないかを確認した上で、その日の仕事の申し送りをします。帰ってきたときも同様に健康状態のチェックと、申し送りを確認します。

トラックの代替で『軽バン』果たして影響は?

――日本郵便の事業は、一般的な封書・はがきは総務省の管轄で、宅配(ゆうパックなど)は国土交通省の管轄です。今回問題を指摘されたのは宅配ですが、郵便への影響はありますか?

無いということは考えにくいと思います。国土交通省はこれからも監査を続けていくんですが、その内容によっては、郵便事業の、例えばバイクで運んでいる配達員にも処分が下る可能性もあるわけで、今後は不透明です。

――2500台の輸送力の今後について、34%を佐川急便などグループ外へ委託、23%分を子会社からグループ外へ再委託し、42%は自社の軽バンを代替で使うとしています。日本郵便の引き受け荷物数は2024年で約43億個あり、坂田さんは「現実的に困難ではないか、効率が落ちるのではないか」と指摘しています。

グループ外の会社、グループ内とも余裕がある状態で輸送ビジネスをやっているかというと、決してそうではないと考えられます。またトラックの代わりに軽バンで輸送するというのは、積める量がそもそも違うので、効率が悪いです。

日本国内を走っているトラックの台数は限られていて、その中の2500台がなくなるわけです。穴埋めは、仮にできるかもしれませんけれども、しわ寄せは小さな事業者、小さなメーカーとか、小さな問屋さんとか、そういったところに必ず発生するはずです。

記者会見で社長が語った「内部通報」

――坂田さんは「翌日配達が困難になる。ふるさと納税などにも影響が出るのではないか。業界全体が負担増となり、物価高の一因になる」とも指摘しています。自宅でクリックして、簡単に商品が届くのが当たり前といった感覚が輸送業界を逼迫させてるんじゃないかなと思うと、数日後でも構わないというぐらいの気持ちのゆとりを持たなきゃいけないと思います。

――記者会見で千田哲也社長は、「いまはじまった話ではなく、(不適切点呼は)相当前からということしか言えないのが現実です」と話しました。また「内部通報していただいた方に対する対応が、本当に経営として良くなかったのは事実」と、社内コンプライアンスの問題についても触れました。坂田さんはどのような印象でしょうか。

日本郵便という会社は、かんぽ生命保険の問題もありましたけれど、どこかコンプライアンスを軽視している、とか、自社の都合を優先してしまう体質であるとか、悪い意味での社内文化みたいなものが根付いちゃってる、とも思うんですよね。根本的になおさなければ、さらに違う問題は起きるでしょうし、そういう文化が根付いてしまっているドライバーさんを他社が欲しがるかっていうと、それはノーです。

2500台をドライバーごと、他社に引き取ってもらうことは、実際は発生する可能性はありますけれども、世の中から批判を受けるでしょう。結局、問題の解決、膿を出し切ることになっていない。それから2500台はその会社のオペレーションをしてきたドライバーたちではないので、かならずしも働けるかっていうと、それは難しいと考えます。

【坂田良平:トラックドライバーやIT業界を経て、現在、物流業界のコンサル業務を手掛ける

2025年06月17日(火)現在の情報です

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