2025年06月03日(火)公開
韓国大統領選挙いよいよ投開票日 「半年間ゴタゴタで景気大失速。争点は経済対策で何をしてくれる?」ソウルから山中真アナが直前リポート
解説
韓国は大統領が不在です。尹錫悦前大統領は「非常戒厳」をめぐり4月に罷免、与党「国民の力」を5月に離党しています。一橋大学のクォン・ヨンソク准教授は、「韓国経済の調子は、日本企業の業績にも影響を与え、さらに韓国社会で起きているいろいろな変化は日本と似ている部分もある」と分析していて、日本にとって決してひと事ではない韓国大統領選挙。6月3日が投開票日です。
注目されている3人の候補をおさらいします。「しっかり者・調整型」とされるのが野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏。「強くまっすぐ・保守派」とされる与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)氏。そして「突っ走る・若者の味方」とされるのが改革新党の李俊錫(イ・ジュンソク)氏。2日、現地からMBS山中真アナウンサーの取材リポートです。
「選挙前日のソウルに来ています。今回の選挙、最大の争点は経済です。半年間のゴタゴタで景気は大失速。『経済対策で何をしてくれるの』という観点だと、2大政党の候補には差があります。」(MBS山中真アナウンサー)
「李在明さんは、『貿易大国・中国との関係を切って景気がすごく悪くなったというのが尹前大統領だ』として、『中国との関係を改善しましょう』という考えです。金文洙さんは、『まず大企業から景気回復しましょう』ということで、アメリカ・日本との関係を大事にします。しかも2人の一騎打ちかと思いきや、実はもう1人、李俊錫さん、40歳の若い候補者が怒涛の勢いで迫っている、という情勢もあるそうです。」(MBS山中真アナウンサー)
選挙戦は「ライブ会場」のような雰囲気
与党「国民の力」金文洙候補の演説会場には、候補者のカラー「赤」をまとった多くの支援者が詰めかけていました。
「すごい音量で音楽が流れています。演説会場では大型トラックでステージが準備され、ダンスが行われています。ステージの上には大型モニターやクレーンカメラが用意されて、ライブ会場のような雰囲気です」(山中アナ)
候補者を応援する替え歌がいまどきのKーPOPではなく、ちょっと”懐メロ”テイストなのが金文洙陣営の特徴です。そして大歓声に迎えられ、金文洙候補がステージへ。「世の中の全ての差別と偏見を克服し、偉大な大統領となるため、みなさんと一緒に戦います」などと、約30分に渡り、演説を行いました。
参加した40代の女性は、「自由民主主義を守れる候補だと思ったので支持しています」と話し、30代の女性も「ほかの候補者と違って権力への欲がなくて本当に国民を愛する人、国を愛する人だと信じています」と、応援していました。
撮影希望者が大行列「KーPOPスターの撮影会」か
続いてソウル駅。こちらで演説を行っていたのは、40歳という若さで注目を集める保守系野党「改革新党」の李俊錫候補です。観衆を見ると圧倒的に男性、比較的若い男性が多いというのがわかります。まるでKーPOPスターの撮影会のようです。
「若い人が多いということで応援の仕方も今時。携帯電話・スマホのライトをつけて李俊錫候補に歓声とライトを送っています。」「李俊錫候補と写真撮影ができるということで行列ができているんですが、ずっと向こうのほうまで大行列ができています」(山中真アナ)
尹前大統領の罷免にともない行われる今回の大統領選挙。尹前大統領が出した「非常戒厳」で韓国国内は混乱し、経済は大きな打撃を受けました。あれから半年…。ソウルいちの観光地、明洞で働く人たちなど有権者からは、落ち込んだ経済の回復を望む声が多く聞かれました。
「去年まではよかったんですけど、戒厳令以降は観光客が減ってしまって、今年は厳しい状況です」「(希望は)経済を回復してくれる大統領。外国人観光客を増やしてくれる大統領です」(明洞でのインタビューより)
相手の批判めだつ選挙戦
現在リードしているといわれる革新系野党「共に民主党」の李在明候補。そして「国民の力」の金文洙候補と、2大政党の候補はともに公約で経済中心の政策を打ち出していますが、選挙戦において「公約」よりも目立っているのが「相手の批判」です。
金文洙候補は、「李在明はいま、自分を守るための防弾法律をつくろうとしています。自分をまもるための法律をつくるという人が大統領になったら韓国は完全に、ウソ共和国、腐敗共和国になってしまいます」と批判を強めていました。
さらにSNS上でも、AIを使って作られた、候補者をおとしめるようなディープフェイク動画が拡散されるなどして、分断が色濃く残っています。
このような状況に、冷ややかな視線を送る有権者もいて、20代などに話を聞くと、「(大統領選に)そこまで興味がない」と話したり、「気にいる候補がいないので無効票を出そうかと」と話す人もいました。
いよいよ投開票日 この1週間で情勢の変化は?
山中真アナウンサーは現地の情報としてこう話します。
「終盤の調査結果ですが、最大野党の李在明さんが優勢と言われていて、金文洙さんがそれを追いかける形、若手の李俊錫さんは低い数字からここまで急激に上がってきました。韓国のルールでは、1週間前までしか世論調査公開してはいけない、結果に影響を与えるので、1週間を切ったら世論調査をしても公開してはいけないとなっていますので、この1週間でどう変化しているかは韓国国民の皆さんもわからないということで、かなり接戦になってるのではないか、というような報道もあります。」
「若手の李俊錫さんは、年齢の面もあって、さらに5年後の大統領選挙こそ本当に狙っていると、支援者の皆さんもそのつもりで支援しているという話をされてました。私が見る限り数百人全員と写真を撮るというのもすごいエネルギーだと思いました。」
「何と言っても、景気をどう良くしてくれるのかということが争点で、経済発展の負の側面として格差が広がり、貧困問題が韓国でかなり深刻化しているということです。どのような選挙結果になるのか、注目が集まります。」
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