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【大屋根リング】歩いて見つけた楽しみ方...建築した3社で"工法に微妙な違い"!?閉幕後に一部残す案が出ているが...「それだと意味ない。無料開放して大勢に体験してもらうべき」指摘も

解説

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 開幕から2週間以上が経ち、ゴールデンウィークを迎えた大阪・関西万博。そのシンボル『大屋根リング』が多くの人を惹きつけていて、「10月に万博が閉幕した後、その一部を残す方向で検討」という情報も出てきました。 “世界最大の木造建築物”としてギネス認定された「大屋根リング」の魅力とは?また、専門家は“この巨大木造建築が日本の建築を変えるかもしれない”と言いますが、どういうことなのか…。その足で大屋根リングを歩いた山中真アナウンサーが、東北大学大学院・五十嵐太郎教授や千葉工業大学・多田脩二教授の話を交え、解説します。

世界最大の木造建築物『大屋根リング』

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 大屋根リングは「最大の木造建築物」として2025年3月4日にギネス世界記録に認定されました。その面積はリングの部分だけで甲子園球場より大きいといいます。

 建築面積:6万1035.55平方メートル
 全周:約2025m
 高さ:低い所で約12m 高い所で約20m
 費用:約350億円

 大屋根リングを設計した建築家で会場デザインプロデューサーの藤本壮介氏は、「今は世界中で『分断』が進み不安定な情勢が続いているが、万博は世界が一体となる機会」としたうえで、「リング内には世界各国のパビリオンが入り『世界がつながる』というメッセージを強く伝える象徴的な存在」と言及しています。

楽しみ方その1『変化があるリングを歩くのが楽しい!』

 そんな大屋根リングについて、山中アナウンサーが実際に歩いて見つけた楽しみ方を3つ紹介します。

 1つ目は、リングの“変化”を楽しむこと。大屋根リングは単調な1本道ではなく分岐点や合流点があることで、高低差を感じることができます。芝生広場や草花の景色を歩きながら感じられるのも楽しみの1つです。さらに、リングの上には5か所トイレがあり、水だけでなくお湯が出る給水スポットも設置されています。

 歩くのはしんどい…という人には、歩かずに景色を楽しめる外周バスもオススメです。ルートの一部でリングの下を通ります。

楽しみ方その2『パビリオンを見下ろせて楽しい!』

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 例えば、セルビアパビリオンを見下ろすと、屋上に「セルビアはあなたの次のEXPOの目的地です」というメッセージが書かれているのを見ることができます。

 ほかにも東北大学大学院の五十嵐太郎教授が“一番お金かかっているかもしれない”と話すサウジアラビアパビリオンの屋上テラス席が見えます。また、階段を上がっていくスタイルのスペインパビリオンは、大屋根リングから見ると地上からとは違った見え方が楽しめます。

楽しみ方その3『3社の違いに気づけたら楽しい?!』

 五十嵐教授によりますと、大屋根リングは非常に大きいため、建築作業を主に「竹中工務店など」「大林組など」「清水建設など」の3社で分担しているということです。連結している分岐点をよく見てみると、会社ごとの工法の“微妙な違い”を見つけることができるかもしれないといいます。
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 例えば、建物の強度を高める「貫(ぬき)」と呼ばれる工法に用いる楔(くさび)について、竹中工務店などは金属製の楔、清水建設などは木製、大林組などは形にこだわった金属製を使用するなど、三者三様で異なっていて、その違いを発見すると楽しさを感じられるかもしれません。

実は後れている日本の木造建築 「大屋根リング」が前進させるきっかけに?

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 五十嵐教授は大屋根リングについて、建築の世界ではとても意義深いものだと言います。なぜかというと、日本の木造建築は伝統的ものは最先端ですが、現代的な建築では後れているからとのこと。

 世界には大型の木造建築が複数あります。例えば…

 ■スイス:腕時計で有名な「スウォッチ」本社 長さ240m・高さ27m
 ■カナダ:大学の寮 18階建て・高さ58.5m
 ■ノルウェー:複合施設 18階建て・高さ85.4m

 なぜ、木造建築で日本は後れをとっているのか?その主な理由は『耐震』と『耐火』を考慮した安全性重視の厳しい規制があるため。新たな木造建築を建てようとチャレンジしづらいのが現状ですが、“少し慎重になりすぎではないか”と専門家は指摘しています。

 一方で、今回の大屋根リングは万博という国家プロジェクトで、大胆な計画・資金に加えて日本の名だたる建設会社が集まり完成。そのため今後の日本の木造建築を前進させるものだと専門家らは分析しています。

 東北大学大学院の五十嵐教授は「見たことのない大きさを体感」「日本での大型木造建築が今後できる機運」、千葉工業大学の多田脩二教授は「日本の高い技術力を世界に発信できた」としています。
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 海外から入ってきた技術によって、それまでの日本の建築がガラッと変わったことは過去にもあります。それは「東大寺南大門」。大屋根リングの建築がもたらした意義は東大寺南大門と同じだと専門家は言及しています。

閉幕後は「一部を残す」方向で検討されているが…

 大屋根リングは1970年万博後の「太陽の塔」のように閉幕後の新たな顔となれるのでしょうか。当初の計画では万博会場は閉幕後、2027年3月までに更地にして大阪市へ返還の予定となっていて、会場の一部はIR2期区域の工事に進みます。

 しかし今、大屋根リングについては一部を残す案と、解体してバス停などに再利用する案の2つが出ていて、大阪府・市の資料によると200mを残す方向で検討が始まっています。

 一方で五十嵐教授は「円の一部だと意味がない」と指摘。「万博会期終了後に大屋根リングを無料で開放し多くの人に体験してもらうべき」だと提言しています。

2025年05月01日(木)現在の情報です

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