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【消費税】参院選を前に各党が『減税案』提示...財源は「赤字国債を堂々と発行」「税収増加分で確保」など主張【解説】

解説

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 コメの価格高騰など物価高が進むなか、夏の参議院選挙を前に与野党から「消費税減税」の声が上がっています。そもそも消費税はどういった経緯で導入され、減税するとどんな影響が出るのか?税財源を研究している関西学院大学・上村敏之教授の見解も含めてまとめました。 ◎上村敏之: 関西学院大学教授 税財政を研究 著書に『消費増税は本当に必要なのか?』

1989年に竹下内閣で導入「消費税」

 日本における消費税率の推移は次のとおり。

 <これまでの消費税率>
 ▼1989年・竹下内閣:3%
 ▼1997年・橋本内閣:5%
 ▼2014年・安倍内閣:8%(※民主党政権下で案が出された)
 ▼2019年・安倍内閣:10%

 そもそも、なぜ消費税はできたのか?関西学院大学・上村敏之教授は「社会保障の財源不足が目に見えていた」「それまであった物品税が非合理だった」という2つの理由を挙げています。

 物品税とは、消費税導入前に実施されていた“贅沢品”への課税で、自動車やテレビは約20%、貴金属や毛皮は約30%というように、物ごとに税率が異なっていました。ただ、「なにが贅沢品なのか」判別が難しく、たとえばレコードは15%でしたが、大ヒットした『およげ!たいやきくん』は「童謡だから」という理由で非課税だったのです。

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 消費税は社会保障のための税金として年金・医療・介護などにあてられていますが、2025年度の一般会計予算を見ると、消費税を全て社会保障費にあてたとしても足りないというのが現状です。差額は赤字国債で賄われています。

 <2025年度の一般会計予算>
 ▼歳入 115兆円のうち消費税は24.9兆円(歳入全体の22%)
 ▼歳出 115兆円のうち社会保障費は38.3兆円(歳出全体の33%)

「日本は消費税引き上げに反感が強い」高税率・高福祉国家は難しい?

 諸外国と比べて日本の消費税は高いのでしょうか。「各国・地域の付加価値税(≒消費税)の税率」(※財務省資料より/ 2024年1月現在)を見ると、最も高いのがハンガリーの27%、北欧のデンマーク・ノルウェー・スウェーデンが25%で、フィンランドは24%です。イタリアは22%、フランスとイギリスが20%となっています。51の国・地域の平均税率は17.7%です。諸外国と比較したときの日本の消費税率について上村教授は「相対的に低いとは思う」と指摘。なお、EUは15%以上を義務化しているということです。

 付加価値税の税率が高い国、例えばデンマーク(25%)では、公立校は大学まで無料で、国・自治体が全額負担してくれます。また、イギリス(20%)の公的医療は無料となっています。ただし、いつも混んでいるということです。

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 では、日本も高税率にして高福祉国家になることはできないのでしょうか。これについて上村教授は「日本では消費税引き上げに反感が強く、増税をして福祉を充実させるのは難しい」と指摘。その理由の1つに挙げているのが『価格表示』で、税抜価格も表示の場合、消費者は税額を意識するため、より負担を感じるということです。ヨーロッパでは基本的に「総額表示」だけで、商品を買うときに税額を意識することはあまりないようです。また、上村教授は、消費税増税を掲げて選挙に臨むと基本的に負けてしまうという“政治的なトラウマ”があるとも指摘します。

各党の減税案は?減税すれば税収は増えるのか?

 夏の参院選を前に、各党はこぞって消費税の減税案を出しています。

 <消費減税 各党の提案>
 ▼自民党:参院議員の8割が減税要求 軽減税率0%求める議員らも
 ▼公明党:減税+つなぎ給付
 ▼立憲民主党:1年間食料品0%(1回のみ延長可能)
 ▼日本維新の会:2年限定で食料品0%
 ▼国民民主党:時限的な景気対策として消費税一律5%

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 財務省の試算によりますと、食料品などの軽減税率を0%にすると「年間5兆円の税収減」、消費税の税率を一律5%にすると「年間15兆円の税収減」ということです。減税によるこうした減収分を賄う財源について、日本維新の会は「定額減税の終了による税収増加分で財源確保」、国民民主党は「赤字国債を堂々と発行」、立憲民主党は「赤字国債に頼らない確保策」と主張しています。財源について上村教授は「財源をちゃんと見ることは重要。アメリカでは、減税の法案は必ず財源確保策とセットで出る」と指摘しています。

 減税すれば“消費活動が活発化、みんながお金を使って税収が増える”という意見もありますが、上村教授は「消費税の税率を下げても、消費はそれほど活性化しないので、税収は上がらない」と指摘。ちなみに、過去にアメリカの経済学者が当時のレーガン大統領に「減税したら税収が増えますよ」とアドバイスをし、実際に法人税の減税が行われたところ、税収が減ってしまったという例もあったということです。

 また、複数の党が主張している“期間限定の減税”については、「他の国では行われている」と前置きしつつ、「日本の場合は一旦下げると上げるのは難しいのではないか」とコメント。再度上げるときに“政治的な軋轢”が出てくる可能性を指摘しています。

 夏には参院選が控えています。消費税を下げる場合、財源はどうするのか…。一歩先まで考える必要があるのではないでしょうか。

2025年04月29日(火)現在の情報です

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