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「がっつり消費税ナシにしてほしい」減税求める街の声に与野党はどう対応?石破総理は慎重姿勢 『消費減税は"コスパ"悪い』と指摘する専門家も【解説】

解説

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 昨年度平均の全国の消費者物価指数は前年度と比べて2.7%の上昇。家計の負担はこの3年で約30万円もアップしています。そして今年も食品の値上げなどの影響で家計負担がさらに8万7000円増える見込みです。 物価高への対策として、政府はガソリン料金の引き下げや、電気・ガス料金の支援を表明していますが、果たしてそれで足りるのか?いまどんな対策が必要なのか?野村総合研究所のエグゼクティブエコノミスト・木内登英氏や、元メガバンク支店長・菅井敏之氏の見解などをまとめました。

7月~9月に電気・ガス料金を支援へ 専門家「延長はしない可能性が高い」

 明治安田生命の「家計に関する調査」では、物価高を感じている人は全体の96.3%という結果でした。去年以上に影響を感じる費用については、「食料品」が94.2%と最も高く、次いで「光熱費・水道代」が68.7%、「ガソリン代」が63.6%、「日用品」が50.6%となっています。

 そうした中、石破茂総理は、電力使用量が増加する7月~9月の3か月間、電気・ガス料金の支援を実施すると発表しました。具体的な内容については「今後の燃料価格や電気料金の動向などを見極めた上で5月中に決定する」としています。

 ちなみに1月~3月に行われた補助では、電気・ガスあわせて1月・2月は1300円、3月は670円の負担軽減がなされました(標準的な家庭・経済産業省による)。
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 野村総合研究所・エグゼクティブエコノミストの木内登英氏は、電気・ガス補助金の今後について「延長などはしない可能性が高いのではないか」という見解です。その理由として、“トランプ関税”の影響で原油価格が下落する見込みがあることを挙げています。木内氏によりますと、電気・ガス料金に原油価格が反映されるのは約半年後で、秋頃に値下がりするのではないかということです。

5月22日からガソリン補助の方法が変わる!?

 ガソリン価格の補助については、石破総理が22日、方法を変えて継続すると表明しました。これまではレギュラーガソリン価格の目標値を185円/Lとして、実際のガソリン価格が185円を上回れば補助金を出して押し下げ、185円より下なら補助金は出ないという支援方法でした。

 5月22日からは、価格にかかわらず1Lあたり10円を補助金で引き下げるとしています。これにより、ガソリン下落の局面では大きく負担軽減を実感できることになるかもしれません。木内登英氏によりますと、標準的な世帯で1世帯あたり年間4000円の負担軽減になるのではないかということです。

 このガソリンの補助はいつまで行われるのでしょうか。木内氏の見立てでは「年内いっぱいではないか」ということです。現在適用されているガソリンの暫定税率(1リットルあたり約25円の上乗せ)の廃止が時期未定で決まっていますが、来年の頭ぐらいに廃止されるのではないかと木内氏は見ています。つまり、ガソリンを安くする策が一つ決まっているため、補助は年内いっぱいで終わるのではないかということです。

 また、これまで8兆1719億円が投入されたガソリン補助に木内氏は「市場をゆがめてしまう可能性がある」と警鐘を鳴らしています。本来なら低燃費車・EV車への乗り換える機会などを奪い、環境問題にも関わってくると指摘します。

 木内氏は電気・ガス・ガソリン補助について「本当に困っている人だけ領収書提出で補助するなど、手間はかかるだろうが対象者を絞った方法にすべき」と提言。現在の物価対策としては、原因が明確でないコメ対策の方が重要ではないかと指摘しています。

新たな資産運用策「プラチナNISA」とは

 政府が物価高対策を検討する中、23日、自民党の資産運用立国議員連盟の岸田文雄会長(前総理)が、石破総理に提言書を手渡しました。その中には、高齢者向けの「プラチナNISA」や「こども支援NISA」の案が含まれていました。

 新NISAは、長期的なつみたてを目的としていて、基本的には運用益が出たらそれを再投資していく形です。それに対してプラチナNISAは65歳以上を対象とし、投資で得た運用益を毎月分配する仕組みです。元メガバンク支店長の菅井敏之氏によりますと、配当実績3%と仮定した場合、毎月1万円の分配金を得るには、元本400万円程度の投資が必要だということです。

 また、プラチナNISAは、運用益が出なかった場合、元本から分配金が支払われます。また、菅井氏は「毎月の決算に伴うコストを反映しているため、信託報酬や手数料が比較的高い」と指摘しています。

消費税減税やるべき?専門家は「“コスパ”が悪い」と指摘

 消費税減税について、石破総理は慎重姿勢を示していますが、与野党からさまざまな声が出ています。国民民主党は「一時的に消費税を5%に」、立憲民主党の多くの議員は「食料品の消費税を一時的にゼロに。その後、給付付き税額控除」、日本維新の会は「食料品の消費税を2年間ゼロに」と主張しています。自民党内でも、多くの参院議員から消費税減税を求める声が上がっています。

 また、街の人々に物価高対策について聞いたところ、「毎日のことだから消費税が減ってほしい」「がっつりと消費税もなしにしてほしい」など、消費税減税を求める声が多く聞かれました。

 一方で、消費税減税について木内氏は「“コスパ”が悪い」と指摘。「仮に2%下げたときの税収減は5兆円に対して、GDPの押し上げ効果は1年間、0.3%上がるが、その後横ばいになる」と見ていて、5兆円もの税収を失ってまで実施する価値があるのか疑問を呈しています。その上で木内氏は、物価高対策として「家計の苦しい世帯への直接支援(現金給付)が望ましい」という見解です。

 物価高が続く中、政府の対策が家計の負担軽減にどこまで効果を発揮するのか、今後の展開が注目されます。

2025年04月28日(月)現在の情報です

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