2024年05月14日(火)公開
金が高騰「2000年頃買っておけば13倍」との声も... 世界にプール5杯分しか存在しないという金の歴史と高騰理由【MBSニュース解説】
解説
金が歴史的な高値になっています。どうしてそんなに高いのか…専門家に聞きました、そして知られざる金の世界も紹介します。 2000年頃は1グラム1000円、そのとき買っていれば今は13倍です(13日は1グラム1万3090円(税込み))。では、これだけどんどん上がっている理由は何なのでしょうか。
金が高騰している理由
まずは、中国やインドなどいわゆる新興国で、過去そこまでお金に余裕がなかった人たちがどんどん金を買っているというのが理由です。人口14億人いるような国の人たちがみんな買い始めたら、金が足りなくなる、どんどん価格が上がっているというわけです。
もう一つの理由は、規模が大きい各国の中央銀行が買い始めているということです。なぜ各国が金を買う必要があるのか、それを簡単に言うと、「アメリカドルの信用が下がってしまった」という理由です。
アメリカドルの信用の低下 中央銀行が「ドルから金へ」
基軸通貨と言われるくらいドルは信用されていましたが、2つの理由で雲行きが怪しくなりました。ひとつはリーマン・ショック、このときアメリカの景気が悪くなったので、ドルをたくさん刷ったことにより、信用が失われてしまいました。
そしてもう一つが、ウクライナ侵攻のときのロシアに対する経済制裁です。経済制裁によって、ロシアが持っているアメリカのドルはすべて使えなくしてしまった、これによってアメリカとの国際関係がよくない国は、今まで一番信用できると思ってドルを持っていたのに、アメリカのドルが突然使えなくなるかもしれないと考えたわけです。
そこでアメリカドルではなく、金を所有するようになったのが大きな理由です。それに加えて、今は国際情勢がとても不安定になっているので、中央銀行も個人も、ドルから金へという流れになっています。ここまでが金の値段が上がっている主な理由とされています。
世界にある金は、わずかプール5杯分!?
世界中にある金は、オリンピックプールの大きさで計5杯分しかないと言われます。現在4杯分が発掘されていて、残りの1杯分は埋蔵されているということです。
これをどうやって探しているのでしょうか。金鉱脈は、昔は「山師」と言われる人たちが経験と勘で探していました。
現在は、人工衛星で宇宙からセンサーを出して見つけているが、大体の場所を見つけたら地表の調査も必要になります。
日本には、鹿児島県に菱刈鉱山という場所があり、現在、最先端の機械を使って毎年7トンの金の発掘を行っています。さきほど残りはプール1杯分と言いましたが、それ以外にもシベリアの永久凍土の中や海にあることはわかっていますが、これは採算がとれないことから、その量は数として入っていないということです。
ローマ帝国の「金貨」 頭文字が$=ドルに…
金は、量が少ないから昔から価値が高いです。かつての金の魅力は、錆びないこと。ツタンカーメンは3000年経っても輝きは変わらないなどが挙げられます。1700年前のローマ帝国で作られたのは、「ソリドゥス金貨」というものです。
それまで給料と言うのは、塩で支払われていましたが、ソリドゥスで給料をもらうようになった労働者は、「ソルジャー」と呼ばれるようになりました。また、ソリドゥスの頭文字を取って、「$=ドル」が生まれたという説もあるということです。
いっぽう現在、金の魅力は加工しやすいことです。約7%は家電や電子機器などに使われています。私たちが持っている割れた携帯電話などにもリサイクルできるものが入っていて、毎年1200~1500トンはリサイクル品と言われています。
金には歴史があることも魅力となっていて、「昔から価値が高い」という共同幻想が、金の価値を高めています。
金の価値は上がるのか?下がるのか?
では、金の価値は今後上がるのでしょうか、それとも下がるのでしょうか。
不安定な国際情勢と、アメリカの次期大統領選の結果によるドルの信頼の失墜の可能性などを考慮すると、金の価値はまだまだ上がりそうとも言われていますが、話はそう単純ではないです。
そこには大きく2つの要素が関係しています。一つは為替です。金は、基本ドルで取引されているため、日本における金価格には、為替の要素が含まれています。
現在の為替では、1グラム1万1500円ですが、もし、為替が1ドル120円になると仮定すると、金も9000円ぐらいになると考えられます。つまり、金の価値がこの先しばらく変わらないとしても、少し円高になるだけで、金の相場が下がることはあり得ます。もちろん逆も。
もう一つの要素は景気です。例えばどこかの国が、バブル崩壊するぐらいの不景気になったとして、それによる金価格への影響が考えられます。
株価暴落などで不況になった場合、一部のお金持ちは現金が必要になり、すぐに現金に換えられるのは金なので、皆が金を売って、価格が下がるということもありえます。実際に、リーマン・ショックのとき一度大きく下がりました。
逆に、不況になった国が、持っていたドルより金を…と考えた場合は、金が上がる可能性もあるということです。様々な要素がある金の世界、その一部をお伝えしました。
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