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【太陽フレア】今後も"大爆発"は続くか...11年周期で太陽の活動は活発化 スーパーフレア発生で甚大な被害!?研究者が解説

解説

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 5月11日の夜、日本各地でオーロラが観測されました。オーロラというと北極の近くで見られるイメージですが、日本海側にある兵庫県香美町でも観測。その原因となった「太陽フレア」や、活発化しているという太陽の活動について、恒星物理学が専門の京都大学・野上大作准教授に聞きました。◎野上大作:京都大学准教授 恒星物理学が専門 恒星・太陽フレアなど様々な突発的爆発現象を研究(2024年5月13日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

地球10個分ぐらいの大きさ「太陽フレア」

―――まず、太陽フレアというのは太陽の表面での大爆発のことをいい、この大爆発は地球10個分の“威力”があると?

 「威力というより大きさですね。太陽全体の直径が地球の100倍ちょっとありますので、写真でみるとわかるように、大きさは地球10個分ぐらいですね」

―――この大爆発によって、「電磁波」「高エネルギーの粒子」「電気・磁気を帯びたガス」などが放出されて、日本に届くということです。地球の周りには磁場というものがあり、そこに影響があって人工衛星やGPSなどが乱れるおそれがあるということですが、この磁場とはどういったものでしょうか?

 「基本的には磁石の周りにあるような磁力線とかで表されるようなものですね。小学校の理科とか習ったような、N極とS極があって、その周りをつないであるような。地球の周りにも同じような磁場がありまして、地球の北極の辺りにS極、南あたりにN極というような感じの磁石になっているような感じだと思ってもらえれば結構です。こういう感じの磁力線が地球の周りにあります」

―――太陽と地球の距離は1億5000万kmありますが、最短8分で地球へ届くものもあるということのようですね?

 「光に関して言うと1秒間で30万km進むという話なので、だいたい500秒、8分20秒ぐらいの感じということですね。電磁波による影響ももちろんあるわけですけれども、高エネルギー粒子あるいは電気・磁気を帯びたガス、こういうものはもっとゆっくり来るものではあります。それでも高エネルギー粒子はかなり速くて、光の速さの数分の1とかで届くので、最短30分ぐらいで地球に届いたりもします。電気・磁気を帯びたガスでも今回のものでは800km毎秒ぐらいの感じになったということですので、1日少しぐらいで地球に届いているというふうな感じです」
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―――普段は北極などでしか見られないオーロラが今回は兵庫県香美町でも見られたというのは、爆発が大きかったからということでしょうか?

 「はい、基本的にはそう考えていただいて結構です。太陽表面で起こった爆発現象で飛んできたものが影響していて、基本的にはその極のところ、すなわち先ほど言った地球のN極S極という極のところあたりにものが寄っていくという性質があるので、その辺りでオーロラが見えやすいということなんですが、非常にエネルギーの強い爆発であった場合は、やっぱり北極と南極に来るんですけど、それがもっと広い範囲で見えていくような感じになっている」

太陽は今「非常に強い活動期」 過去には大規模停電が発生

―――なぜ今、太陽の活動が活発になっているのでしょうか?

 「なぜというところを本当に踏み込むと、まさに研究の最先端、よくわからないという話ではあるんですが、基本的には、観測的に知られていることとしては、だいたい11年ぐらいの周期で太陽活動が活発になったり不活発になったりというのを繰り返しています。太陽活動が活発になるっていうのは、表面に非常に大きな黒点がたくさん出てくるような感じになるんですけれども、この太陽表面の黒点に溜まっている磁石のエネルギー、磁気エネルギーによって爆発が起こる、それがフレアになるというものなので、今非常に強い活動期に入っているということで、大きなフレアが頻発しているということになりますね」

―――今回の爆発は最大規模ということで非常に大きくなっているということなんですね?

 「今まで観測された中ではかなり大きい方の規模ではあります。今、活動のピークがもうしばらくしたら来るぐらいの感じだと考えられていて、だから来年再来年もう少し、これぐらいの活動が続く可能性が高いと思われます」

―――毎日放送がある大阪・茶屋町でもオーロラが見える可能性はありますか?

 「可能性はあります。ただ、やっぱり空が暗いところでないと。オーロラは基本的に光が弱いので」

―――過去の太陽フレアの影響についてですが、1989年にはカナダ・ケベック州の全域で大規模停電が発生し、9時間復旧しませんでした。2001年には航空機と成田空港の間で2時間にわたり通信障害があったということです。また、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士は被ばくするリスクがあるということですが、地球にいる人の体への影響については?

 「紫外線の影響はあり得るんですけれども、その辺は基本的には地球の空気が守ってくれているので。この地球の空気で反射したり吸収したりという作用があって、そういう意味ではその光での直接的な影響は大きくはないはずです」

スーパーフレア解明のキーワードは「黒点」

―――こうした中で、総務省が太陽フレアによる「最悪のシナリオ」を予想しています。例えば▼携帯電話・テレビが利用できなくなる▼110番・119番がつながりにくくなる▼飛行機は全世界的に運航見合わせ▼カーナビが正常に機能しない▼停電が広域に発生▼天気予報の精度が劣化などです。太陽活動の活発化は11年周期ということですが、前回はそれほど大きな被害がなかったのでしょうか?

 「基本的に、総務省が示した例にあるような感じのことは何に起因しているかというと、通信障害なんですね。通信ができないことで、携帯電話やテレビとかもそうですし、飛行機も通信ができないあるいはGPSとかがつながりにくいので場所をとらえにくいということで、こういう話になっています。10年前のときの活動周期にももちろん影響はあったはずなんですが、その時よりもさらに通信に頼る生活になっている。そういうことで影響が大きくなっているというのはたぶんあるんだろうと思います。太陽の活動度に関しても、前回のときよりは強く既になってきているというのもわかっています」

―――野上先生の見立てでは、今回の太陽フレアの10倍以上=スーパーフレアが起これば、地球文明が甚大な被害を受ける可能性があるということなんですね?

 「我々はですね、夜空に輝く星は基本的に太陽と同じようなものであるという考え方から、太陽を10万年観測するのと同じような感じで星10万個を1年観測するというふうな感じで研究しています。太陽と似たような星で、こういうスーパーなフレアが起こることは確実にあるのはわかっています。ただし、頻度としては数千年に1回というふうな感じです。スーパーフレアが起こるかどうか、キーワードは『黒点』ということで、この黒点に溜まっている磁気エネルギーが大きくないと大きなエネルギーのフレアが起こらないということなので、今のところは、この黒点がどれだけ大きなものが出てくるかというのを皆さん注目していただければいいかなと思います」

2024年05月14日(火)現在の情報です

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