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【伊東純也選手】女性側と双方『刑事告訴』そこにさらに『民事提訴』...元検事が解説「名誉回復を考え事実認定してもらうためでは」「週刊誌が含まれない点もポイント」

解説

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フランスのスタッド・ランスに所属するサッカー日本代表の伊東純也選手(30)をめぐっては、女性2人が性被害を受けたとして準強制性交などの疑いで刑事告訴。一方、伊東選手側は事実無根として、虚偽告訴の疑いで女性らを逆告訴しています。さらに今回、伊東選手側は女性2人に対して、2億円余りの損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。この理由について西山晴基弁護士は、双方の刑事告訴が不起訴になった場合に「事実として何があったのか世の中がわからない。事実を認定してもらうために、名誉回復を考えて民事裁判を起こしたと考えられる」と分析します。また民事訴訟の相手が女性2人で、週刊誌が含まれていないことについても「より損害賠償請求をしやすい構成」として、その理由を解説しています。◎西山晴基:弁護士 レイ法律事務所 元検事 性犯罪など多くの刑事事件の捜査・公判を担当 弁護士として刑事、芸能分野の案件を専門に扱う(2024年2月19日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

――非常に大きな金額ですけども、2億円というのは妥当でしょうか。

(元検事 西山晴基弁護士)今回、伊東選手がスポンサーから契約を解除されるという結果になっているといい、さらに場合によって、スポンサー側から損害賠償請求を受けるケースになってくることまで考えると、金額としては妥当かなという印象です。

――スポンサーから伊東選手が訴えられる可能性もあるんですね。

(西山晴基弁護士)あります。今回のケースで例えば伊東選手が出ていたCMとかがあった場合に、それが使えなくなってしまった場合。使えなくなった分の損害賠償がスポンサー側から伊東選手に求められるおそれがありますので、そこについて女性らに対して賠償を求めるというのが考えられます。

――伊東選手側は女性2人を提訴しました、いっぽうで週刊誌を訴えていません。

(西山晴基弁護士)非常にそこが今回のポイントになっています。週刊誌が発信したときは、週刊誌に対して名誉毀損の裁判をするっていうのが多くあるんですけれど、今回対象が週刊誌ではなく、女性2人になっています。

「証言が対立している状況で、どっちの話が信用できるか」

(西山晴基弁護士)何がポイントかっていうと、損害賠償請求をするときに、名誉棄損になってしまうと、なかなか金額が上がりにくいところがあって、今回は虚偽告訴容疑をして、告訴した女性2人が、いわゆる伊東選手側にある意味加害行為をしたみたいな状況になっているので、女性2人に対してより損害賠償請求をしやすくなるというところがあって、この構成をとっていると考えられます。

――訴状によりますと、伊東選手は当日の試合で腰をけがした上、股関節の肉離れが生じ、通常の歩行も容易ではなかった。従って性行為は客観的にも到底不可能な状況だった、と主張しています。

(西山晴基弁護士)そもそも論、性行為があったかどうかっていうのは、今回密室の状況になっていますので、女性らの証言と、伊東選手の証言が対立している状況で、どっちの話が信用できるかっていうふうな話になってきています。

 訴状に書いてあるかもしれませんけども、女性らの証言を裏付けるような客観的な証言、供述があまりなかったとなってくると、なかなか証言を裏付けるのは難しいとなるかもしれません。他方、伊東選手側について性的行為をするのがけがをしていたから難しいと、客観的に言えるのであれば、ここの証言の方が信用性あるというふうに評価される可能性もなくはないかなとは思います。

「また飲みましょう!」LINEも2通りの見方がある

(西山晴基弁護士)今回はLINEのやり取りなど残っているということのようですけれども、そこの評価の仕方も、いろんな見方ができるっていうところがあって、そこの話については今後お互いの言い分が出てくるんじゃないかなと思います。

――2人が伊東選手に送ったLINE。Aさんは「私のラインしってる?ああよかった笑」という内容。Bさんは、「また飲みましょう!」と伊東選手側に送っているという。伊東選手側の今回の訴状には、「性被害を認識していれば挨拶を送ることは通常考えられず、極めて不自然だ」と主張しています。

(西山晴基弁護士)これも、伊東選手側の主張にも一理ありますし、他方で、女優やアイドル活動をしている方が、今後そういったスポーツ番組とかに出演するにあたって機会を失いたくないっていうところで話を合わせていたっていうところについても、彼女側の主張としてあり得るのかなというふうに思われます。

――女性の弁護士側は、「こちらに違法行為は無いと考えています。訴状を見て対応を検討したい」としています。

中野教授「週刊誌を訴えたほうが、僕にはなんかスッキリする」

(神戸学院大学 中野雅至教授)週刊誌ではなく女性を訴えるっていうのは、今回いろいろ理由があってそうされたんでしょうけど、そういうことがあまり多くなっていくと、声を上げにくくなるのかな、って思う。

 事実はおそらく裁判で明らかになるんだろうけど、週刊誌に書かれた瞬間に著名人が全て社会的に抹殺されるというのであれば、最近の一連の中で何が問題かと言えば、週刊誌の報道が僕は問題だと思う。

 性被害はやっぱりきちんとした方がいいと思うんですけど、こういう、2億円の賠償請求とか言われたら、やっぱりなかなか被害の声は出しにくい、週刊誌を訴えたほうが、僕にはなんかスッキリする。

(西山晴基弁護士)そうですね。回収という点では女性2人を訴えるより週刊誌を訴えた方が回収しやすいのは、あるかと思うんですけども、まだ真実がわからない状況の中での話になりますけれども、今回名誉毀損だけでなく、AさんBさんが警察に対して虚偽の告訴をしたところに着目して、民事裁判を起こされてるんですね。

 普通に発信しただけではなく、捜査機関を使って伊東選手に刑事処罰を科す目的で、そういった告訴をしてまでここまでやったんだというところが強調されていますので、AさんBさんに対して金銭的賠償を求めるっていうふうな考え方は伊東選手側としてはあり得るのかなと。

元検事の見立て「刑事だけでは名誉回復は難しく、民事提訴したのでは」

――民事提訴について、西山弁護士は、「刑事だけでは名誉回復は難しいんじゃないかと思ったので民事提訴したんじゃないか」という見方です。

(元検事 西山晴基弁護士)刑事告訴だけだと、仮にAさんBさんの事件について不起訴になったとしても、それは刑事事件の中で証拠が足りなかった、事実としてはあったんだけど、刑事処罰を科すだけの証拠がなかったという判断で不起訴になってくる可能性もあります。

 かたや伊東選手側の虚偽告訴についても、結論としてやっぱり刑事処罰を科すまでは難しいというところで、具体的な内容がわからないまま不起訴になってしまうという可能性もあって、そうすると事実として何があったのか世の中がわからなくなってしまうため、民事の裁判で事実を改めて認定してもらうために、名誉回復を考えて裁判を起こしたってことが考えられます。

――サッカー日本代表は、ワールドカップ2次予選は3月21日から。アジア最終予選は9月からと、非常に大きな大会が控えています。

 伊東選手側は今回の民事訴訟の目的は「一刻も早い名誉回復とワールドカップの予選に出てもらうこと」としています。

(西山晴基弁護士)民事訴訟を提起したら、やっぱり裁判は1年以上かかってしまいますので、裁判をして判決まで行くというよりは、早く示談交渉等含めて交渉して解決する一手として民事訴訟を起こしてるところが一つあるのかなというふうに思われます。

2024年02月19日(月)現在の情報です

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