2025年09月09日(火)公開
「絞首刑」は人間の尊厳を損なう「残虐な刑罰」か否か 死刑囚3人が国を訴えた裁判が今月結審 判決は来年1月 刑場などに関する具体的な証拠調べは行われず... "ブラックボックス"の日本の死刑執行
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“絞首刑による死刑執行は残虐で憲法などに違反している”として、死刑囚3人が国を相手に起こしている裁判。 現在の死刑執行場の構造が分かる文書などが証拠調べされないまま、今月(9月)結審し、死刑囚側は “拙速な審理終結だ” として批判しています。 判決は来年1月に言い渡されます。(松本陸)
日本の死刑は、刑法で「絞首」で行うことが定められていて、電気や薬物を使う形は認められていません。
大阪拘置所に収容されている死刑囚3人は、絞首刑について「身体損傷と見た目のむごたらしさが避けられず、人間としての尊厳を著しくそこなう非人道的な方法で、国際人権規約や日本国憲法に違反している」として、▽絞首による死刑執行の差し止めと、▽精神的苦痛に対する慰謝料などとして1人あたり1100万円の支払いを求め、国を相手取り大阪地裁で裁判を起こしています(2022年11月提訴)。
死刑囚側は、確定した死刑判決を覆そうとしているわけではないとした上で、「死刑は本来、被執行者の生命の剥奪そのものを目的とする刑罰であり、どれだけ凄惨な事件を起こして被害者に著しい苦痛を与えたとしても、それに見合う苦痛を与えることを目的とする刑罰ではない」と訴えています。
大阪地裁は証人尋問や執行場の関連文書の証拠調べをいずれも「却下」
死刑囚側は大阪地裁に対し、▽死刑執行に立ち会った当事者の証人尋問の実施や、▽大阪拘置所や東京拘置所の死刑執行場や執行装置の構造が分かる一連の文書を、国に提出させるよう命じる「文書提出命令」を求めていましたが、9月2日の口頭弁論で地裁(横田典子裁判長)は、“必要性がない”として、いずれも却下。口頭弁論を終結させました。
死刑囚側の文書提出命令の申し立てについて、被告である国側は、“現在の死刑執行は、1873年(明治6年)に発布された「明治六年太政官布告第六十五号」で定められたメカニズムと同じであり、検証は不要”と主張していました。地裁はその主張を受け入れた形です。
死刑囚側は2日の口頭弁論で、「絞首による死刑執行は最も苛烈な国家権力の行使である。国家が強制的に生命を剥奪する手続きに、万に一つも違憲、違法の疑いがあってはならない。執行に至るまでの経過に違法・不当な措置がないか、常に社会の検証を受けなければならない。監視の実効性を担保するため、絞首による死刑執行手続きは透明性を保たねばならない」と改めて意見陳述したうえで、「具体的な証拠調べを経ることなく、絞首による死刑執行の残虐性を適切に判断できるのか」と批判。
文書提出命令が却下されたことに対しては、却下決定の取り消しを求め、大阪高裁に即時抗告しました。
裁判の判決は、来年1月16日に言い渡されます。
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