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"最後の砦"心臓病の妊婦支える医療チーム 出産は難しいと言われていたけれど...「安心して産むことができた」「希望が見えて未来が楽しみに」

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 日本人の100人に1人が心臓に疾患があると言われています。心臓病があるなか初めての出産を控えた1人の女性と、リスクが高い妊娠・出産を支える“最後の砦”である大阪の医療チームに密着しました。

心疾患の妊婦を様々な専門医がチームでサポート「循環器病周産期センター」

 大阪・吹田市にある「国立循環器病研究センター」。日本有数の心臓と血管が専門の病院で、心疾患がある女性の妊娠・出産などに特化した「循環器病周産期センター」が設置されています。

(医師)「どうです?痛くなってきたね?胸の音を背中から聞いていきますね」
(妊婦)「ちょっと痛い」

 陣痛が始まり、いよいよ出産を迎えます。医師が確認しているのは「胎児」ではなく、疾患がある女性の「心臓」の状態です。

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 妊娠中は心臓にかかる負担が増え、新たな症状が出ることもあることから、この病院では産婦人科だけでなく、循環器内科や麻酔科などの医師が、チームで妊婦をサポートします。

(産婦人科医 吉松淳医師)「今、不整脈はそれほど出ていない。だけど出るかもしれないと書いていたよね」

 産婦人科医の吉松淳医師を中心に毎朝開かれるカンファレンスで、心疾患がある妊婦の分娩計画などを話し合います。

(循環器医 神谷千津子医師)「私たちは時間を長く一緒に過ごすおかげで、産科の先生は循環器のことをほんとによく知っていて、私も循環器医として産科のことをよく知っていて、同じ言葉でやり取りができる。同じレベルで患者さんの診療の方針を決定していける」

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(産婦人科医 吉松淳医師)「産婦人科のチーム内に循環器の先生が常時いるっていうのはないこと、ここでしかないことです。心疾患に関しては最後の砦として頑張っていきたいと思っています」

「希望が見えて未来が楽しみに」年間約100人の心疾患のある女性が出産

 年間約100人の心疾患のある女性がここで出産しています。

(神谷医師)「どうですか体調は?」
(患者)「特に大丈夫です」

 ほかの病院では「出産は難しい」と言われても、この病院で妊娠前に手術を受ければ、出産が可能になるケースもあります。
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(東京から 妊娠前に手術した女性)「東京(の病院)で妊娠が難しいって言われたときは、すごく落ち込んだ時期もありましたけど、こちらに来て、やっぱり少しでも希望が見えたので未来が楽しみになりました」
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(広島から 妊娠前に手術した女性)「やっぱ無理なんだろうな、ここでも同じようなこと言われるんだろうなって思っていたんですけど。私みたいな疾患があっても、手術をして女性らしい人生を選んでもいいんじゃないんかなと言われて。その言葉がうれしくて」

先天性心疾患で5回手術を受けた女性 「計画無痛分娩」で出産へ

 奈良市に住む田中瑞季さん(28)もこの病院に通っています。

(循環器医 神谷医師)「妊娠で血液量が増えてきていますので、心臓は大きくなったりしてきています」

 瑞季さんには「ファロー四徴症(しちょうしょう)」という心疾患があります。

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 ファロー四徴症とは先天性の心疾患の一つで、心臓の右心室と左心室を隔てている「心室中隔」という壁に穴があいていることなどから、治療しなければ不整脈などが起こる命にかかわる病気です。

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 瑞季さんは生まれた日に心臓の疾患が分かりました。1歳のときに国立循環器病研究センターで手術を受け、これまでに5回手術をしています。

 去年結婚した瑞季さん。今年2月に妊娠していることがわかりました。

(田中瑞季さん)「2人で話を聞きに行って、妊娠したらこういうリスクがあるって。そういうの(リスク)を分かったうえで、こういうふうに見ていくのでって話があったので安心した」

 この病院では、妊娠初期から出産までの間に3回詳しい検査をし、その時の心臓の状態に合わせて治療方針や分娩計画を立てます。

(循環器医 神谷医師)「もともとの右室機能障害があるのが顕在化してきているということで、妊娠で悪くなったっていうふうには捉えていない」

 瑞季さんの疾患は、妊娠によって心不全などのリスクが高まるため、心臓への負担を考慮し、39週のタイミングで「計画無痛分娩」で出産をすることになりました。

瑞季さんの父「こんなうれしい日が来るとは」

 いよいよ、出産に備えた入院。両親が見送ります。

(産婦人科医 吉松医師)「おはようございます。頑張ってください、入院期間ありますけど」
(母親 尾上理恵さん)「安心です」

(母親 尾上理恵さん)「親としては娘の命のほうが大事やから、赤ちゃんとかは絶対欲しいとかそんなんではない。でもよかった」

(父親 尾上丈巳さん)「生まれたときはね、この先どないなるんやろ、どないして育てたらいいんやろうって。まさかこんなうれしい日が来るとはね。すべての皆さんに感謝です」

 入院、6日目。

(産婦人科医 吉松医師)「子宮口が全部開いたので、あとは赤ちゃんの頭がだんだん下がってくるのを待つ。心臓のこともあるので無理にいきんだりってより、陣痛の力で赤ちゃんが少しずつ下がってくるのがいい」

 循環器内科の医師が瑞季さんの心臓の状態を確認します。

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(循環器医・神谷医師)「(待機)入院して血圧とか脈拍とかも変わりないので、大丈夫だと思います」
(田中瑞季さん)「安心(先生に)来ていただいたら」

無事に元気な男の子を出産

 元気な泣き声、男の子です。夫の翔大さんも立ち会うことができました。

  「おめでとうございます。じゃあ赤ちゃんお胸に行きますよ」

(田中瑞季さん)「かわいい。(Q心臓は大丈夫?)今もう全然、出産のときもずっと大丈夫でした」

 名前は葵遥(あおは)ちゃん。分娩室の外で祈っていた祖父母と初対面です。
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(瑞季さんの母親 尾上理恵さん)「かわいい」
(瑞季さんの父親 尾上丈巳さん)「本当によかった、無事に生まれて。瑞季が生まれたときはこんな日が来るなんて想像できなかった」

医師らは「最後の砦」リスクが高い出産と日々向き合い続ける

 1カ月後ー

(循環器医 神谷医師)「動悸はどうですか?」
(田中瑞季さん)「産後はちょこちょこあったけど、退院してからは感じていない」

 出産直後は不整脈が出ていましたが、落ち着いてきているといいます。葵遥ちゃんも元気いっぱいです。

(田中瑞季さん)「やっぱりほかのひとに比べたらリスクもあるし大変な部分もあるんですけど、この病院で産めて、心配もあったんですけど、フォローがしっかりあって、安心して産むことができてよかったです」

 心疾患があっても子どもを諦めなくていいように。吉松医師らは、「最後の砦」としてリスクが高い出産と日々向き合います。
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(産婦人科医 吉松医師)「別に妊娠がすべてってわけじゃないじゃないですか、子がどもいるってことがすべてではないって僕も思っているし、そうじゃないからといって、自分の人生で足りないって思う必要は僕は全くないって思うけれども、やはり望んでいる人に対してはその望みがどんなふうにかなえてあげられるのかってことを、医療の知識や技術を持っている人間が(方法を)提供できるってことは大切なこと」

2025年12月12日(金)現在の情報です

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