MBS(毎日放送)

よんチャンTV(テレビ)

編集部セレクト

【連続強盗・特殊詐欺】犯罪組織が使う「闇名簿」...情報源は「病院関係者からカルテ入手」「緊急連絡先・介護施設への通所状況」も

2023年02月03日(金)放送

SHARE
X
Facebook
LINE

フィリピンの収容所にいる日本人詐欺グループの存在で再びクローズアップされている特殊詐欺。海外にいながら日本国内の詐欺や強盗の被害者に目をつける手口について犯罪ジャーナリスト多田文明氏は「闇名簿」の存在を指摘します。犯罪集団の間で出回っている闇名簿には「家族構成」や「資産状況」「過去に購入した物品」などの情報が記載されているといいます。こうした情報は病院関係者が持ち出したカルテなどから不正に入手されたケースもあるということです。(2023年2月3日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)◎多田文明氏(犯罪ジャーナリストで「キャッチセールス」「悪質商法」評論家、元信者として旧統一教会問題についても追及)

特殊詐欺被害が減らないのは「闇名簿」があるから

―――悪徳商法に詳しい犯罪ジャーナリストの多田文明さんにお話を伺います。
強盗事件のニュースが最近多くて非常に怖いなと思ってらっしゃる方多いと思います。実際にホームセンターなんかでも防犯グッズが最近よく売れているというね、そんな話も伝わっています。実は強盗が増えているからといってこの特殊詐欺が減っているというわけではないようです。2022年の特殊詐欺の被害額、8年ぶりに増加したというデータがあります。オレンジ色のラインが特殊詐欺による被害額、ちょっと下がっていたんですけども、2022年で8年ぶりに増加をし、認知件数も増えているということです。多田さんによりますと、「組織的特殊詐欺から組織的強盗へ、犯行様態の変化は全体的なものではない」ということですね。

一部のグループが行っていると、これが詐欺自体が減っていたら、詐欺がしづらいから強盗ということが考えられるんですが。私、この一連の強盗事件が出たときに詐欺がしづらいから、何か強盗をやり始めたっていうよりは何か
指示を出す側の、何か詐欺ができない事情がやっぱりあるんだろうなというふうに思ってたら、やっぱ収容施設の中から指示出してたって言われて、「ああなるほど」と合点がいったという感じですね。

―――こういった詐欺行為なんですけども、減らない特殊詐欺、その背景にあるのが闇の名簿業者が扱う「闇名簿」というものがあるんだそうです。一体どういうものなんですか?

いわゆる違法な手段で集めたりとか、相手が犯罪集団だとわかっていてね、まともな名簿屋さんもおりますから、そういう悪い人たちは犯罪者とわかって、譲り渡すとかですね。

―――ですから関係機関に届け出るなど一定の条件を満たした正規の名簿業者も存在するということで、これはちゃんと届け出るということですよね、三澤さん。

(三澤肇解説委員)だから正規の名簿業者から個人の名簿を購入すること自体は違法じゃなくて禁止されてないんだけど、その正規の業者っていうのは、ちゃんと政府関係機関に届け出ねばならない。それは決まってるわけでしょ
ただ、一般的に最近名簿って作らなくなってるっていうのも確かですよね。従来はそのセールスとかマーケティングなんかに使われる名簿があれば公表しないって決めてるところも多くなってきてますし。

―――ところが闇の名簿業者とは不正にデータを入手、それを犯罪集団に売りさばくというが大きな問題になっているという。彼らが使う名簿の内容は多岐に渡るのですが、例えば、闇名簿に書いてあるのは、名前、住所、生年月日、電話番号、職業、さらに家族構成とか、資産状況、クレジットカード情報、過去に購入した物品、宝飾品、通販商品、リフォームなどなどということで、こういった非常にプライベートな情報が漏れてしまってるということ?

そういうことですよね。詐欺組織を警察に摘発すると膨大なリストがあるんですけど、その中には名前と住所と電話番号だけのですねリストもあれば。以前に民泊か何かで詐欺の電話かけたグループが50万件の名簿を持ってたって言いますけども、ものすごい数ですね、もう次々と電話をかけると、ただそういう中には精度を増したというような名簿もあるわけですね。今言ったようにこのクレジットカード情報とかこんなダークWEBで売られてるようですけれどもね。そうした情報も併せてその人のだましやすい状況を作るということですね。

―――さらに驚きなのは特殊詐欺と結びつくこんな情報もあるそうです。例えばその人物がよく話すとかね、他人を信じやすいとかね。「特殊詐欺撃退歴」がありだとか、過去に被害に遭った人の名簿は「カモリスト」と呼ばれ、特に狙われる対象となるなんででもこんなことがわかっちゃうんだろうってちょっとびっくりするんですけどもね。

いわゆる詐欺の電話とかはやっぱり名簿でかけてですね。そうすると反応があるわけですよね。そういう反応をまたプラスして情報入れるともしこういう性格がわかると。普通詐欺っていうのは例えば相手の個人情報を聞き出してからどう騙すかなって考えるんですけど、その最初のステップがいらないんですよね。ここでよく喋るとかもうわかってますからね。それでしやすくなるというメリットがあると思う。

「闇名簿」…病院カルテからも個人情報が流出

―――では彼らは幅広い情報をどのようにして入手しているのか。例えば病院のカルテ。名前や身体病気に関する情報だけでなくて、詳しい家族構成、緊急連絡先となる家族の連絡先、介護施設への通所状況そして信仰している宗教の有無なども。我々は病院行ったらやっぱり何の疑いもなく、やっぱりちょっと書いてるっていうところやっぱありますよね。

(丸田佳奈医師)もちろん病院の方でも個人情報流出しないようにしっかりするんですけれども、ただ、例えば病院だけではなくてね、向こうが騙そうと思ってる集団だってわからなくて情報提供してる可能性もありますよね。例えば「近所のあそこのおばあちゃんの話聞きたいんだけどとか」っていうふうに言われたりとか、「そこに住んでる人って女性か?」って聞かれたときに答えてしまうっていうこともあると思うんですね。病院の関係者はないにしても、でもやっぱりうっかりコロッと日常生活の中で情報っていうのって察することがあるので、そういったこともやっぱりものすごくヒントになりますよね、向こうにとっては。

―――確かに明らかに怪しいなと思ったらこっちもガードあげるんだけども、全然そんなつもりなくてポロと出てしまうということは考えられますもんね。ただ、多田さんこういった病院関係者の流出という、これ皆さんが全員というわけではもちろんないんですけども、一部で可能性としては考えられるということですね。

私も情報提供者から実はこのカルテもらって見せてもらったときはやっぱり驚いたんです。割と近々のやつだったんでね。いわゆるそれ自体買ったんじゃなくてこんな名簿もあるよって名簿を売る業者が接触して画像で見せてきたもので何枚かあるんですけど、本当に手書きで書かれていてもう本物だということでね。

―――さらにですねちょっと恐ろしいのが、名簿の精度を高める「名寄せ」という作業があるんだそうです。どういうことかといいますと、例えば「〇山✖男」さんの情報は、いろんなところに様々な情報があって、それを「〇山✖男」さんの情報を名寄せしてより価値ある名簿に。バラバラだった情報をまとめちゃうっていうことなんですよね。そうすることによって生年月日、カード番号とかも様々な情報をギュッと一つにしてしまう。使いやすくするということになるんですか。

そうですね。今回の強盗の実行犯の指示役も、私の考えとしてはやはりランダムな名簿っていうよりは、こういった洗練された情報、お金もある、高齢者もいる、そうした情報が割とあって、やったんではないかなとです。高値で買ってる可能性はあるかなと思って。

金融庁職員のフリしてキャッシュカードだまし取る」

―――こういう情報から「あちらのお宅は高齢者一人住まいだよ」とか「非常にお金をたくさん持ってるんじゃないか」「いろんなものを購入してるよ」とかそういったものが全部わかってしまってる可能性はありますね。さらに、闇名簿は、情報を基に特殊詐欺を行う際にも、巧みな情報収集を行っていると。

受け子が被害者からキャッシュカードを受け取るときに利用される書類に、たとえば(実在する)「全国銀行協会」名義の手の込んだ用紙というものがありまして、やっぱり心理的にはちょっと信じてしまいそうになるんですが。ここに、「一般社団法人全国銀行協会」というふうに書かれています。内容には、例えばこういったとか通帳、口座、カード類とかね。これ多田さんどういうものですか?

そうですね。いったん詐欺の電話をして受け子と言われる人間が現場に行きます。そして金融庁か何かの職員のふりしていきます。その時にキャッシュカード渡してくださいって言っただけではちょっと信憑性ないですよね。ですのでまずこういう手続きだと言って書かせるんですね。この書類をですね、そうすると全部銀行のカードとか全部書いて、そしてその後、封筒を準備していく。

―――こちら真ん中に「特別申請」と薄々大きく書かれていますね。

なんか透かしのようで、なかなか手が込んでるなと思いましたね。非常にリアルですね。

―――もう一つ細かいところ見ますとね。この全国銀行協会は、東京都千代田区丸の内という住所書かれてますが、電話番号よく見ると。050から始まる番号ということで「あれ、050でどういうこと」って、よく考えると多田さんおかしいですよね。

おかしいんだけれども、やっぱりこれロゴとかですね。そうした書類に書かせてもうその前に信じちゃっているのでね、それで書いてしまっている。

―――騙す側はどんどん巧妙化している。我々でも本物じゃないかって、目を疑うようなそういった精度のものを出してくるというですよね。

こういったものを使って、今も行われてる可能性がありますので、本当に注意してほしいんですね。

―――多田さんによりますと、大事なのは「犯罪者に追加情報を与えないこと」。

そうですね。犯罪する方は相手の情報とか状況を知らないと詐欺もできなければ強盗もできないので、そうした情報を取られないことっていうことですね。

―――皆さん。電話知らない番号にはもう出ないで。そして訪問販売、家の中には入れないでください。あとアンケートはすぐに書かないとかこういったことをですね意識してください。最近ではSNSパトロールを行う闇の名簿業者もあります。高齢者の場合、本人はやっていなくても、子供とか孫が帰省しました、などの写真を上げることもありますね。

それを見るとあのおじいちゃんおばあちゃん、今留守にしてんじゃないかなとかそういうことですよね。それで実家に帰って帰った後、高齢者2人になるなとかですね。家の感じで住所とか、家族構成もわかっちゃいます。高齢者はSNSしないんで漏らさないんすけど、実は息子、娘さんが割と漏らしてるって可能性はやっぱりありますね。

関連記事

SHARE
X(旧Twitter)
Facebook