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大阪で暮らすウクライナ避難民一家のいま「満足しているけど『母国に帰れたら...』と頭をよぎることがある」

2022年08月24日(水)放送

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 ウクライナ侵攻から8月24日で半年です。ウクライナから日本へ避難してきた家族のいまを取材しました。

 ロシアによるウクライナ侵攻から8月24日で半年。ウクライナにとっては独立31周年の記念日ですが、ロシアからの攻撃の可能性も高まり記念行事などは禁止。ハルキウでは外出禁止令も。街は厳戒態勢に包まれています。

 ウクライナから日本へ避難してきた家族は緊張が続く祖国にどんな思いでいるのでしょうか。南部のオデーサから来たナターリャ・オレイニクさん(49)一家を訪ねました。いま、大阪府八尾市で息子のマキシムさん(16)、娘のダリーナさん(13)と3人で暮らしています。

 (ナターリャ・オレイニクさん)
 「帰国するときには、日本に来る前よりきれいになって帰るわ」

 いまは平穏に暮らしていますが、来日までの道のりは壮絶でした。ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた今年2月24日。その1週間後、一家はオデーサから避難をはじめました。ナターリャさんの運転でなんとかルーマニアへ避難。その後、4月に来日しました。

 (ナターリャ・オレイニクさん 今年4月)
 「私はただの避難者として日本で過ごしたくありません。なにか役に立てるようにしたいです」

 生活再建のためすぐに日本語の勉強にも取り組みました。

 (朗読するナターリャさん一家)
 「うんとこしょ、どっこいしょ。けれどもかぶはぬけません」
 (息子 マキシムさん)
 「これはロシアとウクライナの童話です」

 その後、大阪府八尾市でアパートを借り、支援を受けながら徐々に自立した生活を送っています。

 (息子 マキシムさん)
 「(Q日本語ができるようになった?)日本語、すこし。5レベル」

 息子のマキシムさんは夏休み中も日本語を猛勉強。さっそく日本語能力試験の5級に合格しました。

 (息子 マキシムさん)
 「12月までに日本語能力試験4級に合格できるようになりたいです」

 娘のダリーナさんも日本人の友だちとインスタグラムでやりとりしていますが…。

 (娘 ダリーナさん)
 「言葉がわかったらもっと楽しくコミュニケーションをとれるけど、翻訳機を使うと自分の考えを思うように伝えられません」

 友だちと遊びにも行っていますが、まだ言葉には苦戦しているようです。

 母親のナターリャさんは生計をたてるため週に2回、アルバイトをしていますが、日本社会に適応する難しさを感じています。

 (ナターリャ・オレイニクさん)
 「時々、あきらめたくなることがあります。日本の生活に全体的には満足しているけど、仕事で疲れ切った瞬間や、文化や考え方の違いを感じる瞬間には、『ウクライナに帰れたらいいのに』と頭をよぎることがあります」

 侵攻から半年がたちますが、故郷・オデーサの人々をいつも心配しています。

 (ナターリャ・オレイニクさん)
 「誰しもが痛みを感じています。孤独で苦しんでいる人もいます。その影響で、周りの人も苦しんでいます。恐ろしいのは、いつ終わるかわからない。先行きが見えないこと」

 すると、ナターリャさんは取材班に先週撮影されたオデーサの映像を見せてくれました。夜の街で多くの人が踊っています。中には子どもの姿も。SNSにあげられた動画で、戦争のストレスから人々が狂乱状態になっている様子だといいます。

 (ナターリャ・オレイニクさん)
 「こうやってストレスを解消しているのです。『明日人生が終わるかもしれないから今さえ楽しければいい』と狂乱しているようです」

 オデーサはロシアの支配下に置かれたヘルソンから車で2時間の距離。脅威が身近に迫っているため精神的に追い込まれた人が多いのだといいます。

 母国でカウンセラーの資格を持つナターリャさんは、毎晩、電話で現地の人の悩みを聞いています。取材した日、ナターリャさんがビデオ通話で話を聞いていたドネツク州出身の女性は、家族と会えず体調を崩しているといいます。

 【ビデオ通話でのやりとりの様子】
 (ドネツク州出身の女性)「戦争で娘や孫とも離ればなれになり、もう1年会っていません。健康問題も出てきていて、例えば不眠症もあります」
    (ナターリャさん)「物理的に離れているので、コミュニケーションの唯一の方法はビデオ通話。48時間以上コミュニケーションなしにいてはいけません。48時間に1回はコミュニケーションをとってください」

 そこに、また電話が。電話はオデーサに残るナターリャさんの母・ヴェーラさんからでした。

 【電話でのやりとりの様子】
  (ナターリャさん)「どういう状況?きのうはサイレンならなかった?」
 (母・ヴェーラさん)「昨晩はなかったわ。いまのところ静かだわ」
  (ナターリャさん)「母さんのために祈っているからね」

 重い病気で身動きがとれないため毎日、電話を欠かしません。

 (ナターリャ・オレイニクさん)
 「自分が心配したところでどうにもならないので、できるだけポジティブにいます。母は強いし賢いし、うまくやっていけると信じています」

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