2023年02月21日(火)公開
『歩道は最大8m』で『車道はたった5m』...アンバランス市道に住民が怒り「火事になっても私たちのことなんか知らんってことかいな」
特盛!憤マン
歩道は最大8m…なのに車道は5mしかない『バランスの悪い市道』について兵庫県神戸市東灘区の地域住民らが怒っています。現在工事が進められているこの市道は4kmにわたり、工事が完了すれば対面通行になる予定です。住民らからは消防車などが通行できず人命救助に支障が出るという意見も出ています。
車がすれ違えるか…「狭すぎる車道」と「広すぎる歩道」
「バランスが悪い」という理由で工事が中断している市道がある。そんな噂を聞きつけて取材班が向かったのは神戸市東灘区。どうバランスが悪いのかというと…。
(記者リポート)
「阪神電鉄・青木駅前のこちらの道路、現在は工事中ですが、上から見ると歩道が車道の2倍近い広さがあることがわかります」
歩道の幅は最大8m、一方で車道は幅5mしかなく、確かにアンバランスです。問題の市道は阪神電鉄・青木駅の北側を東西に走る約4kmで、去年、東側部分が開通しました。市道は対面通行となることが決まっていますが、工事が完了していないため、一時的に一方通行となっています。
沿道にある特殊鋼材を扱う会社では鋼材を搬送するために大型トラックを使っています。車幅は2.5mほどあり、この道路での対面通行は難しいと訴えます。
(鋼材を扱う会社の社長)
「普通こんな状態ですよね…左に寄れといってもね。この路肩が50cmあるので、大体50cmくらいあけておかないと怖いですよね、運転する側としては。(車道の残り幅は)2mないんちゃいますか?2mまででしょう」
取材中にも止めているトラックの後方から車が…。
(社長)「来ましたか?また…」
(記者)「こうなったら車は通れないですよね?」
(社長)「通れないでしょう」
(記者)「こうなったらどうするんですか?」
(社長)「どないするんでしょう」
対向車とすれ違うのは確かに難しそうです。一方で広い歩道についての疑問も。
(鋼材を扱う会社の社長)
「ここなんか人が通らないでしょう。ここまでの歩道が必要なのかね。歩行者を優遇しようというのはわかるんだけど、それはいいんだけど、しわ寄せが全部車道にきている。そこらがかなわないなと思っていますね」
『車道を6mに広げてほしい』と地元住民らが訴え
狭い車道の影響は他にもあります。25年前から沿道で中国料理店「翔園」を営む上村美代子さん(61)は、来店客に迷惑がかかることを懸念しています。
(上村美代子さん)
「車を止めて車椅子で降りてくるお客さんとか杖をついているお客さんも多いんですね。以前だったら(車道が)広いからクラクションも鳴らさずに通っていく車が多かったけど、これだったらすれ違いにくいからクラクションを鳴らされると思うんです」
客の安全のためにも、上村さんら沿道の住民は「車道の幅を6mに広げられないか」と神戸市に訴えています。
(上村美代子さん)
「新しい道が不便な道というのはおかしいでしょう。いい道をお金をかけてつくるもんちがうかな」
では、なぜこのような道路ができたのでしょうか。
当初の計画は「歩道2.5m 車道7.5m」だった
神戸市は1983年に阪神電車の高架事業に伴い一帯の道路整備を決めました。2016年時点の都市計画図面では歩道が2.5m、車道は7.5mだったことがわかります。
ところが地元のまちづくり協議会が2018年に「歩行者の安全を最優先にしてほしい」という要望を提出し、神戸市は車道の幅を当初の計画から5mに狭めたのです。
市はこの決定について「地元の総意があった」と主張します。
(神戸市都市局工務課 岡田渉担当課長)
「特段意見がなかったことを踏まえて、神戸市としてはこの計画を最終的に了として進めました。(Q反対意見は1通もない?)細かく記録を確認していませんので断言はできませんが、大きな声はなかったというふうに聞いています」
しかし、上村さんら沿道の住民には市から十分な説明はなかったと反論します。
(上村美代子さん)
「『5mで通れるの?』って言ったら、神戸市は『問題ありません』と。じゃあ問題ない道路ができるのかなって思っていたんですよ。数字だけじゃ私らはわからないでしょ。それで出来上がったらこれやから。え、通られへんやんってなって」
市側『歩行者の安全性を確保するため』住民側『消防車もスムーズに通れない』
車道の幅5mで工事を再開したい神戸市と、納得がいかない地元住民。2月17日、市は住民説明会を開き、折衷案を示しました。車道の幅は5mを維持する一方で、車がすれ違える幅50cmの「待避所」を作るというものです。これについて住民からは…。
(地元住民)「なんで神戸市は5mにせなあかんのか、6mではなんであかんのかを教えてほしい」
(市の担当者)「歩行者を最優先にする道路ということで、歩行者の横断時の安全性を確保するために、車両の速度をできるだけ落とすような形にするために5mにしている」
(地元住民)「38年くらい店で商売しているんですけど、北側の道で今まで対面で事故ってほんまにないですよ。(車道が広いと)スピードを出すというのでなくて、速度制限をかけてちゃんとすれば解決できると思うんです」
(市の担当者)「規制よりも道路の幅というのが一番速度抑制には効果がある」
(地元住民)「それが最適とは思われへんけど」
(市の担当者)「ご意見としてはわかりました」
また説明会では、火事や自然災害が起きた際に消防車などが通行できず人命救助に支障が出る、という意見も出ました。
(上村さん)「消防車がぎりぎりすれ違えるのが6m。これすれ違いできないやんか、火事になっても私たちのことなんか知らんっていうことかいな」
(市の担当者)「消防活動ができる消防車等が通れる基準というのは一定満たしていますので…」
(上村さん)「満たしていてもスムーズにいかない。以前の道路でスムーズにいっていて、この新しい道路でスムーズにいかないのは納得いかん」
説明会は2時間近く続きましたが、市は「車道の幅5m」という主張を曲げず、議論は平行線のまま終了しました。
説明会を受けて神戸市は次のように話しました。
(神戸市都市局工務課 岡田渉担当課長)
「道路にとって最適な構造という視点で我々は考えていますので。そこに対して考えるべきご意見があれば当然取り入れさせてもらう」
一方、沿道に住む上村さんたちは次のように話しました。
(上村美代子さん)
「(Q市の説明に納得は?)していません。(車道を)めちゃくちゃ広くしてと言っているわけではないんだから、たったの1m。私らが考えた(対面通行になった時の)想定を文書にして神戸市に出します。その想定通りの何かが起こった場合に神戸市に責任を取ってもらいます」
道路は人々の生活の根幹を担うもの。神戸市は市民への向き合い方が問われています。
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