2025年08月05日(火)公開
「憎たらしい...」あの手この手で駆除しても繁殖止まらない"地球上最悪"の侵略的植物 「役立つ○○」に生まれ変わらせる作戦で厄介者→人気者に?
特盛!憤マン
旺盛な繁殖力から「地球上最悪」とも言われる侵略的植物が、全国各地で猛威をふるっています。生態系や農業に悪影響を与え、コメの収穫量にも影響するのではないかという懸念の声も。住民や農家を困らせる“憎たらしい植物”の現状と最新対策を取材しました。
「2年かけて死滅させたのにまた生えて…」
神戸市のお隣、兵庫県稲美町にあるため池。その水際には、いたるところに黒いシートが敷かれています。ため池を26年にわたって管理する西澤一弘さん、「ある植物」を覆うためのシートだといいます。めくってみると…
(ため池を管理する西澤一弘さん)「まだ枯れていない。ここら辺がまだ青いから。ムカーっとする!」
白い花を咲かす水草、ナガエツルノゲイトウ。南米由来の特定外来生物です。稲美町では2018年に確認され、2023年にはため池の水面が大量発生したナガエツルノゲイトウに覆われてしまっていました。旺盛な繁殖力を持つことから「地球上最悪の侵略的植物」とも呼ばれます。
国の許可を得て撮影した実験映像では、茎の節から新たな茎や根がどんどんと伸びていき、わずか2週間で8cmも伸びました。たった2mmの茎からも再生するため草刈りをしても撲滅できず、他の植物の生息地を奪ったり水質の悪化を招いたりしてしまいます。
西澤さんや近隣住民らは繁殖を抑えようと日光を遮るシートを被せる対策を実施。数は減らせましたが根絶には至っていません。
(ため池を管理する西澤一弘さん)「せっかく2年かけて遮光して死滅させたのにまた生えてきている。除去するには手のかかる憎たらしい植物です」
ナガエツルノゲイトウは各地で猛威をふるっています。びわ湖から街へと繋がる水路では水の流れを邪魔するほどビッシリと生え、淡路島にあるため池は水面が見えなくなるほどに。どんどん勢力を拡大しています。
コメの収穫にも影響?農家の不安
ナガエツルノゲイトウの魔の手は高騰するコメにも。兵庫県猪名川町の山あいにある田んぼ。去年、ナガエツルノゲイトウが生えているのが見つかりました。
(農家の男性)「この水路から生えたのが、あぜをこえて入ってきて、生えているのがこの状態ですね」
遮光シートで対策していたものの、わずかな隙間から光を求め、田んぼの方へと伸びてきたといいます。農家の男性はナガエツルノゲイトウが養分を吸い上げてしまい稲の生育に悪影響を与えないか心配しています。
(農家の男性)「全面的に毎週のように田んぼに入って管理しないといけないとなると、やり続けられるかなという不安はあります」
「遠紫外線照射で枯らす」新技術の実証実験
何とか繁殖を食い止められないものか、猪名川町では国や民間企業と連携した新技術の実証実験が始まっています。
(兵庫県阪神北県民局・植杉武生さん)「これが『UV照射』の装置です。紫外線を当てることによって、ナガエツルノゲイトウを枯らす効果を期待して実証実験しています」
この白い装置から光合成を阻害する遠紫外線が出ていて、ナガエツルノゲイトウの成長を止め、枯らしてしまうといいます。
(兵庫県阪神北県民局・植杉武生さん)「当てているところは、ナガエツルノゲイトウだけでなく他の草も生えていない状態。当てていないところは引き続き繁茂している。草刈りするとか、ナガエツルノゲイトウを除去する労力がかからない。いくら人間が取ったとしても、取った切れ端から拡散するおそれもある。そういったことが避けられるので、メリットはあるかなと」
「メリット・希望が持てる」厄介者が○○に!?
徳島県鳴門市のサツマイモ畑。そのすぐそばの水路でも特定外来生物ナガエツルノゲイトウが猛威をふるっていて、重機を使った駆除作業が行われました。ただ、ナガエツルノゲイトウは茎が空洞になっていて節から折れやすく、カケラからも繁殖するため最後は人の手ですくう必要があります。
(地域住民)「途中でパツパツ切れてしまう。残っているやつが子や孫という形で分解していって増えていって、ひと月したら1mの範囲、もうひと月したら10mの範囲という形で増えていっているので」
そんな厄介者を「あるモノ」に生まれ変わらせようという取り組みが始まっています。
(鳴門市環境共生部・辻宏人さん)「これはナガエツルノゲイトウで作った堆肥になります」
香川県で環境技術の開発に取り組む企業「キョーワソリューション」。シャベルですくっているのは独自に開発された「発酵促進剤」です。
これを乾燥させたナガエツルノゲイトウに混ぜて発酵させていくと最終的に「堆肥」になるのです。実は折れやすい構造を持つナガエツルノゲイトウは発酵促進剤が混ざりやすく、堆肥にするのに適しているというのです。
(キョーワソリューション・藤岡憲二社長)「ナガエツルノゲイトウは肥料としての成分も高く、土壌改良材には非常に良い強力な資材になる。それだけでもメリットになる」
鳴門市では今年、ナガエツルノゲイトウで作った堆肥を無料で配布。用意した300袋が一日で無くなる人気ぶりで、堆肥を使った市内の花壇には綺麗なコスモスが咲きました。
(キョーワソリューション・藤岡憲二社長)「回収したやつは焼却処分しかない。堆肥化ということになれば、メリット・希望が持てるので、いいんじゃないかなと思います」
“地球上最悪”の侵略的植物ナガエツルノゲイトウとの戦い。一筋の光が見えてきています。
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