大阪の近畿自動車道にある東大阪パーキングエリア。大阪の物流を支える大動脈となっていて、トラック運転手の休憩所としても使われています。　しかし、そんなパーキングエリアに夜な夜な改造車が集まり、爆音を鳴り響かせていて、近隣住民や利用者が憤懣しています。

「うるさい」「寝られへん」住民やトラック運転手を悩ませる迷惑行為

　大阪の物流を支える大動脈、近畿自動車道。高架下にすっぽりと収まるように作られた「東大阪パーキングエリア」には近畿道唯一のコンビニも併設されていて、仕事や旅の合間に羽を休めるドライバーらの休憩場所となっています。

　（トラック運転手）「大阪でこんな形でとめられるパーキングは少ない。（国の基準で）４時間に１回休憩を取らなければいけないので、それを守るためにこちらを利用したりしている」

　しかし憩いの空間は、土曜日の夜になると一変するといいます。

　（トラック運転手）「集会みたいな音の大きい車が何台かとまっていた。うるさいですね」

　改造車やスポーツカーが集まり、騒音をまき散らしているというのです。

　近くに住む人からはこのような声が。

　「窓が開けられないじゃなくて、閉めててもうるさいのは迷惑です。テレビの音も聞こえにくいです」
　「何回も警察に電話してる。通報してるな」
　「夏やと窓開けて寝るときありますやん。なら全然寝られへん」

夜な夜な集まり…轟音をまき散らす改造車

　いったいどんな状況なのか、取材班は改造車が集まるという土曜日の夜に、パーキングエリアを張り込むことにしました。

　午後７時すぎ。野太い音を響かせながら、１台の車が駐車スペースに車をとめます。

　その後も、別の車が次々にやってきます。マフラーをいじっているのか、どの車も近寄ると耳を塞ぎたくなるほどの轟音です。

　１時間ほどで集まったのは約３０台。一部はトラック優先の駐車スペースを占拠しています。

　車の傍らでたむろし、たばこを吸いながら談笑していますが、もちろん禁煙です。

　なぜ、ここに集まるのか？改造車に乗る男性に話を聞くと…

　（改造車のドライバー）「『きょうみんなで集まる』という話があった。ここで集まって、こっからどっか行こうかって」

　車好きのグループで出かける際の集合場所として使っているといいます。

　東大阪パーキングエリアは、大阪市内や奈良、和歌山などさまざまな方面にアクセスしやすい立地のうえ、高架下で雨もしのげることから集合場所として選ばれているとみられます。

「騒音は全員注意していますよ」と反論するドライバー

　午後８時をまわると、一部の車が動き出しました。出口の方に向かいます。すると…坂道を急加速します。

　新車で２０００万円以上はする超高級スポーツカーも、大きな音を出しながら急加速していきます。

　こうした行為はＳＮＳなどで「東大阪ダッシュ」と呼ばれていて、さまざまな車と音を楽しもうとギャラリーも大勢集まっています。

　（ギャラリーの男性）「ＳＮＳでいろいろと動画を見て、一度は来てみたいと思って来た。（Ｑ音がうるさいとの声があるが？）自分たちからしたら音を楽しみたいんですけど、休憩する人たちには騒音になるので両立は難しい」

　パーキングエリアには多いときは、ギャラリーも含めて１００台以上が集まります。

　１５５台ある駐車スペースの６割以上を占めるため、本来の利用者が休憩できないこともあります。

　（トラック運転手）「『とめられる』っていっても、場所取り合戦、いす取りゲームみたい。ぐるぐる外周して、１時間くらい回る時もある」

　迷惑をかけていることについてどう考えているのか、改造車に乗る男性は…

　（改造車のドライバー）「（Ｑ近隣住民がうるさい思っているが？）車検通ってるんで大丈夫ですよ。それはあなたの意見やと思うんですけど、私たちそういうので来ているわけじゃない。（Ｑ音などはどう思っている？）それはもういろんな人に聞いたらいいと思いますよ。俺あんまそういうのわからへんので。騒音は全員注意していますよ。午後１０時とかになると騒音の迷惑になると思いますので、そこまでおるつもりはないので」

　「騒音には注意している」と語気を強める男性。

　しかし、パーキングエリアを出る際には、「東大阪ダッシュ」でこの場を後にしました。

騒音によりパーキングエリアは閉鎖　トラック運転手なども利用できず

　その後もパーキングエリアにはさまざまな改造車のグループの出入りが続き、午後９時を過ぎても騒音が収まる気配はありません。

　そのとき、近隣住民からの通報を受けて、パトカーがやってきました。

　（警察官）「東大阪パーキングはこれより閉鎖することになります。速やかに移動をお願いします」

　ＮＥＸＣＯ西日本では、騒音が激しい場合、警察に協力を求めて残っている車の移動を促し、パーキングエリアを閉鎖しています。

　いまは月に２回程度、閉鎖せざるを得ない状況ですが、トラック運転手なども利用できなくなるため、悩ましい判断が迫られています。

近畿運輸局が改造車を一斉取締り　７人に整備命令

　１１月２９日、近畿運輸局が取締りに乗り出しました。

（記者リポート）「午後９時過ぎです。不正改造車の取締りのため、パーキングエリアの出入り口付近は封鎖されてしまっています」

　集まったのは近畿運輸局の職員と大阪府警の警察官、計約８０人。今回は、騒音レベルは測定せず、基準に満たないパーツがないかどうかなどを調べます。

　１台のアメリカ車は、フロントガラスに貼ったステッカーによる視界不良などを指摘されました。乗り続けるには直してもう一度車検を受ける必要があります。

　（アメリカ車のドライバー）「（Ｑ今回の取締りをどう思う？）いつかは食らうんじゃないかなっていうのはあったんですけど、周りに迷惑かかっているならそれはよくないことなので」

　赤いセダンは、赤いヘッドライトやホイールなど改造だけで１０００万円ほどかかっているといいます。

　（赤いセダンのドライバー）「こういう車がみんな集まるから久しぶりに来たんですけど、急にこんなん（取締り）きたので正直びっくりしています。（Ｑ車は大丈夫ですか？）まあダメでしょうね」

　結果は…

　（検査員）「今でタイヤと後ろ反射器がないのと、尾灯の色とロービーム赤色…」

　ホイールやヘッドライト、テールランプなど６つの整備不良を指摘されました。

　（赤いセダンのドライバー）「正直言ってすがすがしいですね。（Ｑ今後はどうしていく？）乗るとは思いますけど。迷惑がかからん程度に」

　この日は１時間半の取締りで、７人に不正改造による整備命令が出されました。

　（ＮＥＸＣＯ西日本・大阪高速道路事務所　秋山展孝副所長）「高速道路の休憩施設では、騒音行為や集会などの迷惑行為について禁止させていただいております。今後も関係機関と連携しながら対策をとっていきたいと思います」

　パーキングエリアはみんなが利用する公共の場所。ドライバーのモラルが、愛車のかっこよさをより際立たせるのではないでしょうか。