2025年11月11日(火)公開
住宅地を侵食する「ゴミ屋敷」 住人が片づけに乗り出すも一向に進まない!?取材重ね見えた"心理的原因"...治療の第一歩は「つまようじ1本を捨てる」
特盛!憤マン
神戸市北区の住宅街にある「ゴミ屋敷」。住人男性は自宅だけでなく周りの土地などにもモノを積み上げていて、近隣住民が苦悩しています。取材班の直撃に「年内をめどに片づける」と約束していた男性ですが、その後どうなったのか?再び取材すると、モノをため込んでしまう原因が次第に浮き彫りになってきました。
「片づけたい気持ちはあるが足踏み状態」

自宅の玄関に足をかけてのぼる男性。問題の「ゴミ屋敷」の住人です。今年9月、記者が直撃取材すると、家の中へと案内されました。足の踏み場がない階段を下りた先には…
(「ゴミ屋敷」に住む男性)「2階から出入りしてるんですよ」
―――本当はこの奥に1階がある?
(男性)「あそこにドアがあるんですけど」
男性は現在50代。6年ほど前からこの家で一人暮らしをしていて、「もったいない」という気持ちでさまざまな場所からモノを拾ってきているといいます。
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家があるのは神戸市北区の閑静な住宅街。自宅の敷地だけでなく周りの土地にまでモノがあふれ、近隣からは憤懣の声があがっています。
(近隣住民)「みんな迷惑してますよ。とても残念なことです」
(近隣住民)「電池もそこらへんに捨てていることもあるので、発火ということも考えられて危険」
こうした声に男性は…
(男性)「迷惑かけているかもというのは重々わかっています。そりゃもう自分がわかっていますから。やりたい気持ちはある。でも足踏み状態でどうしようどうしようと。そんな情けない人間なんですよね」
ただ、記者が説得を重ねると…
(男性)「自分の不始末は自分で片をつける。ある程度は」
―――いつごろをめどに片づける?
(男性)「年内ですね、やっぱり涼しくならないと」
「涼しくなったら片づける」と約束して去っていきました。
再び訪問すると「片づけていたけど、全然片づかない」

あれから1か月。取材班は10月に再び、あの家を訪れました。
―――大丈夫ですか?
(男性)「片づけていたけど、全然片づかなくて。相も変わらずです」
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男性は約束通り「片づけを進めていた」と話します。しかし、8月と比較してみると…モノの量は変わっていないように見えます。
(男性)「ちょっとずつ見てアレ(片づけ)していかないとと思ってるんですけど、自分でも考えるとやっぱりなんて言うんですか、人手もかかるし時間もすごくかかるだろうと」
記者が一緒に片づけることに しかし…

そこで、取材班も手伝って、まずは周りの敷地にはみ出しているモノの片づけを試みます。しかし…
―――これは?
(男性)「くぎとかネジとか入ってるんですよ」
―――何に使うんですか?これ。
(男性)「棚作ったりするときに必要かなと思って」
―――靴ちょっと減らしません?
(男性)「これでも結構捨てたほうなんですけどね。こういうのでも、貼り付けて修理した跡あるでしょ?こっちも貼り付けて、どれぐらい持つかな?みたいな」
―――捨てるの難しいですか?
(男性)「捨てるの難しいです」
一向に進みません。明らかに不要と思われるモノでも…
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―――プラスチックのこの破片、危ないんで捨てますね。
(男性)「あ、それそこ置いといてください」
―――捨てましょう。こういうところからですよ、一歩ずつ。
(男性)「いや、例えばこういうところ欠けたりするじゃないですか。それをノコギリで切って樹脂でペタっと貼り付けて補強するんですよ」
―――本当ですか?
(男性)「意外と使うんですよ、それ」
―――捨てていかないと減らないですよ。
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何とか説得しながら3時間かけて袋3つ分に不用品をまとめ、ゴミの日に捨てることに。
その後も取材班は計4日間、片づけを手伝いました。
記者「これって前に一緒に捨てたやつですよね?」

ところが後日、男性のもとを訪れた際、“あること”に気づきます。
―――多分ですけど、これって前に一緒に捨てたやつですよね?
(男性)「これですか?まだあれですよ」
―――もう捨てるだけかと思うんですけれども。
(男性)「うっかりしてゴミの日忘れたりするんで」
以前まとめたゴミ袋。結局、捨てていませんでした。さらに…
―――最近は拾ってます?また。
(男性)「このごろはちょっと抑えてますね」
―――『抑えてる』ってことは拾ってきてしまってるってことですよね?
(男性)「たまに」
―――我慢できませんか?
(男性)「例えばこれなんかでもそうなんですよ(リュックを拾い上げる)」
―――これいつ拾ったんですか?
(男性)「これはきのうです」
―――ってなると僕が一生来て、○○さん(男性)が一生片付けても、量が減らないってことですよね?
(男性)「可能性はあります」
男性とともにカウンセリング施設を訪問

どうしてもモノを拾ってきてしまうという男性。背景には心理的な原因があるのではないか…。10月下旬、取材班は男性を、大阪市北区にあるカウンセリング施設「大阪メンタルサポートオフィス」へと呼びました。
臨床心理士の佐野正剛さん。これまで「ゴミ屋敷」住民の生活改善を行ってきた実績を持ちます。今回、特別に男性のカウンセリングに協力してくれました。
(佐野さん)「いまの状態から改善していきたいと?」
(男性)「少しはしょうがないにしても、いまの状態はさすがにすごいんじゃないかと自分でも思うんです」
佐野さん、男性の話を聞きながら原因を探ります。
(男性)「歌に『わかっちゃいるけどやめられない』っていうのがあったと思うんですけど、わかっちゃいるけどどうにもならないっていうか、わかっちゃいるけどどうしていいかわからない」
(佐野さん)「それはね、いわゆる強迫症(および関連症群)の一つに『ためこみ症』というのがありまして」
佐野さんによると、男性は物を手に入れて取っておくことの必要性を強く感じ、持ち物を捨てることに大きな苦痛や不安を感じてしまう「ためこみ症」にあたる可能性があるといいます。
治療の第一歩「きょうの持ち物から1つだけ捨てる」

では、治す方法はあるのでしょうか。
(佐野さん)「『曝露反応妨害法』という、不安が高いけど、その不安の反応を頑張って妨害する」
「曝露反応妨害法」はあえて不安を感じる状況に身を置き、普段してしまう行動を我慢することで、少しずつ不安を和らげていく治療法です。つまり男性の場合は…
(佐野さん)「使ってないやつをまず捨てる」
(男性)「うわ難しい。つらい」
(佐野さん)「つらいけど頑張っていかないと。これからの生き方が変わってきますから」
(記者)「ちなみに、きょう持ってきた物の中から1個捨てるものを決めるというのは?」
治療の第一歩として、大量のモノが詰め込まれたベストの中から、何か1つだけでも捨てることを提案します。
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(男性)「捨てるもの1つですか?捨てるもの1つだったら、じゃあ第一歩か、なんかあったかな…。とりあえず、もうこれ要らないからこれは捨てますよ。このつまようじから。でも罪悪感がすっごくあります」
(佐野さん)「これが一歩になりますから」
(男性)「これがですか?」
苦渋の決断をした男性。小さな一歩を踏み出しました。
(男性)「片づけるために“断捨離”しなきゃ、決断いるんだっていうのは改めて感じさせてもらいました。おかげさんで本当、ちょっと変われそうな気がします」
今度こそ変わることができるのか。近隣住民たちのためにも、決断が揺るがないことを願うばかりです。
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