2025年08月13日(水)公開
「摂津市の給食も作るならわかるのですが...なぜ吹田市のための施設を?」摂津市民が恩恵受けない『給食センター』計画の理由は? 歴史ひも解くと千里ニュータウン
特盛!憤マン
大阪府摂津市に持ち上がった給食センターの建設計画。その中身が“摂津市民にはなんのメリットもない”として近隣住民が憤っています。建設予定地の目の前に建つマンションの住民に取材しました。
「健康と医療」がコンセプトの町で「給食センター」建設計画
大阪府摂津市千里丘新町。JRの吹田操車場跡地が再開発されてできた町で、「健康と医療」をコンセプトに国立循環器病研究センターや医療関係の企業が集まる「健都イノベーションパーク」として整備されています。大阪市中心部まで電車で10分ほどと便利な立地で、大規模なマンションが建つ人気のエリアです。
5年前、ここにマンションを購入した今井さん(仮名)夫婦。周りの環境に惹かれたといいます。
(今井さん・妻)「緑も多くて近くに大きな公園が2つもあるので、将来的に住むにはとてもいいかなと思って購入しました」
(今井さん)「散歩をするのが習慣化されて、1日1万歩とか歩くようになって、すごく体調も良くなって。“健都”というくらいですから、健康になれているのかなと思っています」
新居でのんびりと過ごしてきた今井さん。しかし今、頭を悩ませていることがあると言います。今井さんが暮らすマンションの目の前に2028年度の操業開始を目指して、中学校の「給食センター」を建設する計画が進んでいるのです。
(今井さん)「正直びっくりしました。食品を扱うので、配送のトラックもたくさん往来することが容易に想像できましたので」
「摂津市」で作られた給食はすべて「吹田市」へ
「健康と医療」をコンセプトに再開発されたエリアだけに、給食センターができることは想定外だったという今井さん。
今年4月、知人から計画について聞いたときには、既に住民向けの説明会は終わっていました。説明会の資料を手に入れ目を通すと、さらに気になることが…
(今井さん)「調理食数最大1万1500食、稼働日数190日、配送先が吹田の市立中学校18校ということで、摂津市の立地なんですけど、すべて吹田市のための施設ということで、到底納得のいかないような内容になっています」
給食センターが建設される場所は摂津市ですが、計画したのは隣接する吹田市で、ここで作られる給食はすべて吹田市内の中学校向けだったのです。
(今井さん)「摂津市の給食も作るというのならまだ分かるのですが、なぜ吹田市のための建物を摂津市に建てるのかかなり疑問でした」
もう一度、吹田市から説明を聞きたいと、今井さんは再度、説明会を開くよう打診しましたが、吹田市は「説明責任は果たした」として応じなかったといいます。
吹田市がこの場所に建設するワケは?
吹田市はいったいなぜこの場所に建設をするのか。そのわけはこの土地の歴史にありました。
1960年代。吹田市や豊中市で「千里ニュータウン」の開発が行われました。その際、ニュータウンの下水を処理する施設が必要となり、大阪府は府の土地だったこの場所に「正雀下水処理場」を建設。2013年まで稼働していました。
その間に下水処理場の管理者は吹田市に移り、閉鎖後の2018年には土地の所有権も取得しました。
2021年には、この土地に吹田市と摂津市が共同の給食センターをつくる計画が持ち上がりましたが、財政面やコンセプトの違いなどから計画が白紙になったため、吹田市が単独で建設することになったというわけです。
「最大5億円」奨励金の可能性? 住民から「理解できない」との声も
摂津市内にできるのに市民が恩恵を受けられない給食センター。建設予定地の前に住む今井さんは他にも納得いかないことがあると言います。
(今井さん)「摂津市から事業者に奨励金が支出されると聞いています。その原資はわれわれ摂津市民の“血税”になります」
摂津市は市内への企業誘致のために、年1億円を上限として最大5年間、建物や設備投資などの費用を補助する制度「摂津市企業立地等促進奨励金制度」を設けています。
民間の事業者で、“健康と医療”という街づくりのコンセプトに合致しているという要件を満たせば活用することができます。
吹田市は給食センターの設置・運営を民間の事業者に委託するとしていて、今井さんはこの奨励金制度が使われるのではないかと危惧しているのです。
(今井さん・妻)「摂津市民にはデメリットしかないのに、さらに奨励金で5億円も払わないといけないというのは到底納得できないですね」
吹田市のための施設に摂津市の税金が最大5億円使われるかもしれない事態に摂津市民は…
(摂津市民)「絶対に理解できない。吹田市のものにどうして摂津市の税金が使われて、しかも摂津市民が嫌がっているものを建てるのかなって」
(摂津市民)「摂津市民からしたら関係のない話だし。逆にお金をもらうだったら分かるけど、摂津市がお金を払うのはおかしいと思う」
「事業の見直しは検討していただきたい」摂津市長の見解
市民から疑問の声が上がる給食センターの建設。摂津市の嶋野市長は…
(摂津市 嶋野浩一朗市長)「今回の給食センターについては、建都の価値を決して高めるものじゃないと思っていますし、事業の見直しは検討していただきたいなと思います」
市民が危惧する奨励金については…
(摂津市 嶋野浩一朗市長)「健都のコンセプトに合致しないという認識ですので、奨励金については提供することは考えられない」
建設の見直しを求めた上で、奨励金の適用についても否定しました。
吹田市はカメラ取材は断った上で、書面で次のように回答しました。
「吹田市内での候補地を検討したが、各中学校への配送の利便性を考慮すると、摂津市内の予定地以外に適した場所は無かった。給食を提供する以外の機能も持った施設となっており、健都イノベーションパークのコンセプトに一致していると考えている」
奨励金の制度を活用するかどうかについては…
「給食センターを設置・運営する事業者が、奨励金の利用を予定しているかどうかについては把握していない」
吹田市は委託する事業者の判断に任せているとしました。
「住民に寄り添い説明責任を果たしてほしい」
建設予定地の前に住む今井さんは、「摂津市民が恩恵を受けないからこそ丁寧に説明してほしい」と話します。
(今井さん)「どうしても給食センターの建設を進めていくのであれば、もう少し吹田市にはわれわれ住民に寄り添ってもらって、きっちり対話をして説明責任を果たしていただきたい」
子どもに給食を届ける施設をつくるのに、地域住民との関係は冷めたままで本当にいいのでしょうか。
2025年08月13日(水)現在の情報です