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「相続人が93人いる空き家」の今...市の働きかけで相続人の数減るも空き家は放置状態 パイプやフェンスを応急で設置『特定空き家』に指定

2021年11月16日(火)放送

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兵庫県姫路市にある「相続人が多すぎる空き家」。長年放置され、適切な手続きがとられなかったために相続人が93人にまで広がり、撤去が進まない現状を今年3月にMBSテレビの番組でお伝えしました。あれから8か月、空き家に進展はあったのでしょうか。再び取材をしました。

"屋根が崩れ落ち…"50年以上放置された空き家

今年3月、取材班が訪れたのは兵庫県姫路市にある空き家。屋根が崩れ落ち、建物は原形をとどめていません。近くの住民らの話によると、50年以上前に住人の男性が亡くなって以降、誰も住んでいないと言います。
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(近所の住民 今年3月)
「朽ちてからだいぶなりますからね。朽ちているところから、ここまでがお家だったと思いますよ。市に何度もお願いにあがって、『撤去できないか』という相談はずっとしていると思うんですけれども」

孫、ひ孫、玄孫…“多すぎる相続人”所有権は「総勢200人」うち93人が生存

撤去が進まないのには理由がありました。所有者が多すぎるのです。姫路市が120万円を投じ、半年かけて、空き家の所有者を辿った家系図を作成しました。
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なぜ、市がこのような家系図を作ることになったのでしょうか。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん 今年3月)
「江戸時代の方の所有のまま、ずっと登記上残っていて。その方がお亡くなりになった」
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姫路市によると、1940年頃に所有者の男性が亡くなり、いったんは長男ひとりが相続します。その長男が死亡した後、民法の改正により遺産相続が兄弟などにも適用されることになったため、所有権が7人に移ります。
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市が空き家の存在を把握した2008年時点で、兄弟7人全員が亡くなっていたため、所有権はその子どもたちへと枝分かれし、所有権のある人はなんと総勢200人になりました。その内、93人が生存していることが分かりました。
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(姫路市住宅課 坂本孝文さん 今年3月)
「(Q末裔の方は最初の所有者からみたら何にあたる?)まず、被相続人がいて、子どもさん、孫、ひ孫、玄孫、来孫。93人の方にお話しをしても、『どこですか?』『誰のものですか?』と。誰も空き家の存在すら認知していない方ばかりなんですよ。見た目はあんなボロボロの空き家で、もう資産価値なんかないやろうと、もう誰が見ても思われるんですけど。でも、それは財産なんですよ。それを役所が何の手続きもなしに勝手にっていうことはできない」

仮に、市が代わりに撤去するにも、93人全員の実印が押された同意書が必要なため、難しい状況となっていました。

93人の相続人はどうなったのか…39人にまで減少

あれから8か月、93人の相続人はどうなったのでしょうか。今年10月に再び市の担当者を訪ねました。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「(Q倒壊した空き家は何か進展は?)いろんなやりとりをするのなかで、相続人がだいぶ減ったというのが、進展があったといえば進展ですね。前回の93人から、39人まで減りましたね」

相続人の数は半数以下に。市が、相続権があることを93人に文書で通知したところ、54人が「相続放棄」を申し出て、相続人は39人にまで減ったといいます。
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(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「(Qこの39人は相続放棄していない?)まだしていないですね。連絡があった方は、ほぼほぼ全員(相続)放棄の手続きを選ばれまして。39人の方に関しては、特に連絡がなかったんですよ、市の方に。財産を相続したいのか、いらないのかという意思までは確認できていませんね」

『空き瓶』に『野良猫』倒壊の危険がある「特定空き家」に

市の働きかけで、相続人は約3分の1に整理されましたが、問題の空き家の周辺に変化はあるのか。現場を訪ねました。

(リポート)
「周辺には草が覆いしげっています。この場所だけ、なにか空気が違います」
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近くに70年以上住んでいるという住民は、「空き家周辺の環境が悪くなっている」と言います。

(近くの住民)
「空き缶とか空き瓶、捨てに来る人がおるんですわ。野良猫がね、この(空き家の)中で繁殖するんですよ。虫なんかもすごい。洗濯物にすごく虫がついてくる。ほんま言うたら更地にしてもらいたいな」
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姫路市は、倒壊の危険がある「特定空き家」に指定し、周囲への危険を防ごうとパイプやフェンスなどを応急で設置。これにかかった費用も、相続人93人から徴収しようと納付書を送っていました。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「応急措置費用として53万円ぐらいかかりましたけど、そのうちの4万円ぐらいはご納付いただいた」
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93人のうち、13人が納付し、約4万円が賄われました。残りは市が税金で肩代わりしている状態です。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「市の方もかかった債権を回収しないといけないし。ただ、果たして回収できるのかという現実的な問題もあるので、いま現時点では現場に関しては動けない状態」

撤去費用は最低500万円…市「相続人らによる解決望む」

残り39人、相続人らは今後どうなっていくのでしょうか。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「(Q市からの連絡を無視し続けるとどうなる?)(相続人が)どんどん減ってくる。最後の最後、例えばお一人になった場合、その方は市の持っている債権を全部かぶらないといけなくなりますので、無視は一番いけないと思いますね」
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撤去するとなると、最低でも500万円はかかるといい、姫路市は相続人らによる解決を望んでいます。

(姫路市住宅課 坂本孝文さん)
「(Q30数人の相続人にあたる方々が、みんなで話し合いを行って、お金を出し合って撤去をするということは現実問題として?)難しいと思いますね」

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