2026年01月09日(金)公開
"セクハラ辞職"も『退職金6000万円』前福井県知事だけじゃない...首長のハラスメントなぜ相次ぐ? 「内部通報は"握りつぶされる"危険」など知事経験者らが語る
解説
「キスできたら安心できるかなぁ」 「ぼくとは濃厚接触でね 一心同体だよ」 調査報告書によりますと、福井県・杉本前知事は私用メールなどを使い、少なくとも4人にセクハラを裏付けるメッセージを送信。その数は約1000通にのぼるということです。 さらに報告書では、「太ももを触ってきた」「足を絡めてきた」などの“痴漢行為”も3件確認されたとして、ストーカー規制法や不同意わいせつ罪に抵触する可能性も否定できないと指摘しています。 なぜ、自治体トップによるハラスメントが相次いでいるのか?なくす術はあるのか?ハラスメント対策専門家・山藤祐子氏と元鳥取県知事・片山善博氏の見解、元大阪府知事・元大阪市長の松井一郎氏の意見を交えてお伝えします。
「〇〇ちゃんのことを考えると体が熱くなるの」“セクハラ認定”も退職金6162万円支給

セクハラ問題で辞職した福井県・杉本達治前知事。調査報告書によると、女性職員4人に対して深夜・休日問わず、約20年間にわたって性的なメッセージなどを送っていたということです。
その数は約1000通にのぼり、身体的な接触もあったことから「セクハラ」と認定されました。
<職員へのメッセージ(例)>
▼「〇〇ちゃんのことを考えると体が熱くなるの」
▼「〇〇ちゃんを骨が折れるほど抱きしめます」
▼「ハグとチューをしていいってこと!?」
▼「後ろ姿は肉付きがよくてとても好きなの」
<身体的接触(例)>
▼「飲食店でソファの横から太ももを触られた」
▼「懇親会の席でテーブルの向かいから両足の間に足を入れ絡めてきた」
▼「突然スカートの中に手を入れ太ももの裏と臀部を触ってきた」
報告書を受けて杉本前知事は、「私の行ったことは低俗かつ愚劣なものであり、被害者の方々の尊厳を傷つけたことであると深く反省しております」とコメント。
一方、杉本前知事に対して、去年12月10日には「冬のボーナス325万2000円」、去年12月26日付で「退職金6162万円」が支給されたということです。
当初上司は半信半疑「また同じようなLINEが来たら…」

このセクハラ問題の背景には、「セクハラ被害を通報しにくい組織風土」があったと調査報告書は指摘。
通報者は被害直後に上司へ相談したものの、その上司は“半信半疑”で受け止め「また同じようなLINEが来たら言ってほしい」と助言したのみだったということです。
また、福井県の人事課にはハラスメント相談窓口が設けられていましたが、通報者はその存在を知らず、内部通報体制が機能していないことが明らかになりました。
内部通報は“握りつぶされる”危険が? 松井一郎氏「外部通報の拡充を」

実際、日本の自治体では、被害を申告しにくい組織風土が存在するのでしょうか?
元鳥取県知事・片山善博氏は「首長本人が加害者の場合、内部窓口では訴えが握りつぶされ、被害者が不利な立場になる危険がある」と指摘。また、ハラスメント対策専門家・山藤祐子氏は、職員が被害を訴えにくい理由を3つ挙げています。
<自治体職員が被害を訴えにくい理由>
▼裁判にすれば多額の費用と時間がかかる
▼地方公務員は転職が難しい
▼地方では首長と支援者の距離が近く被害を訴えにくい
かつて大阪府知事・大阪市長を務めた松井一郎氏は「公益通報制度の中で、『いかに簡単に外部通報できるか』を作りあげていくのが一番重要。内部通報だと今回のように『また同じようなLINEが来たら…』となってしまう」と、外部通報の拡充を訴えています。
「セクハラ気質のある人が首長になってしまった」

前福井県知事だけではありません。近年、首長のセクハラが相次いでいます。
<首長のセクハラ 2023年以降>
▼岐阜・岐南町 小島町長(74) 99のセクハラ
▼岐阜・池田町 岡﨑町長(76) 15人にセクハラ
▼愛知・東郷町 井俣町長(57) セクハラ発言
▼沖縄・南城市 古謝市長(70) 9件のセクハラ告発
※役職・年齢は当時
山藤氏は、「首長だからセクハラをする」のではなく「セクハラ気質のある人が首長になってしまった」ことが一因だと指摘。周囲から持ち上げられ、「自分は特別だ」「これくらい許される」といった誤った認識が増長されていくと分析しています。
また、片山氏は知事経験者の立場から、「首長は権限が集中し、部下から注意を言われにくい立場」であり、「止める人がおらずハラスメントが生まれやすい」。「だからこそ、トップに立つ人間にはより強い自覚と自律が求められる」と言います。
同じく首長経験者として松井一郎氏は「意思疎通しやすい職場作り」の大切さを話します。
(元大阪府知事・元大阪市長 松井一郎氏)
「(首長は)人事権・予算権を持つので、部下から見るとなかなか注意できるような対象にならないけれど、知事や市長に対して『これは駄目ですよ』と言えるような職場作りが大切。万博の時も、幹部の3割は『今じゃない』という意見がありました。意思疎通しやすい、話しやすい職場環境作りが必要」
「1期目は職員から進言あったが2期目は…」権力長期化の弊害も

首長によるセクハラをなくす術はあるのでしょうか?
山藤氏は「賠償額が高額」な海外の事情に触れ、「罰則強化は一定の抑止力になる」と指摘。会議室をガラス張りにするなど、「上司と部下が1対1になる状況を作らない」などの対策を挙げています。
また、組織改革案として次の4つを提案しています。
<組織改革の具体案>
▼社内外に信頼できる相談窓口の設置
▼定期的な実態調査
▼首長・職員向けハラスメント研修の義務化
▼首長への規則の強化
一方、元鳥取県知事・片山善博氏は「制度が整備されても職員が存在を知らなければ意味がない」「公益通報が信頼される制度になることが今後の課題」と指摘。今回、福井県の通報者が相談窓口の存在を知らなかったことは上述した通りです。
また知事時代を振り返って、「1期目は職員から進言や異論があったが2期目には減った」と回想し、「権力が長期化すると組織に遠慮や萎縮が生まれる」ため、「権力は長く持たないほうが組織は健全」だと話しました。
そして、松井一郎氏は首長の心構えとして「権力者としての自覚」を持つべきだと言います。
(元大阪府知事・元大阪市長 松井一郎氏)
「4期・5期という知事や市長もいます。選挙で選ばれるので一概に否定はできないと思いますが、権力を持っているという自覚を、知事や市長は絶えず忘れずに持つべきです」
2026年01月09日(金)現在の情報です
