2025年11月05日(水)公開
【代表質問】高市答弁で目立った表現『野党とも』『他党とも』"支持率82%の少数与党"初の国会論戦は慎重&低姿勢?「外交では批判を承知で勝負に出ていたが...」【ジャーナリスト・武田一顕氏が解説】
解説
高市政権の発足から2週間。11月に入り、外国人政策、AI・半導体分野への投資促進、造船や防衛産業など、“総理肝いり”の政策会議が始動しました。 また国会では、衆議院本会議で高市総理に対する各党の代表質問がスタート。野党第一党の立憲民主党・野田佳彦代表の質問への応答から、高市総理の国会に対する姿勢が見えてきました。 長年国会を取材してきたジャーナリストの武田一顕氏によると、高市総理は今のところ"慎重姿勢”の様子。強気に見えた外交に対して、少数与党ゆえか「勝負に出ていない」と見ています。 今後、国会ではどのような駆け引きが行われていくのか?解散総選挙の可能性は?武田氏の見解をもとに解説します。
「外弁慶」の高市総理 少数与党ゆえ議会では慎重派?

11月4日、衆議院本会議で各党の代表質問が行われ、高市総理就任後初となる論戦がスタートしました。
衆議院の与党議席数は自民・維新合わせて230で、過半数(233)に達していない「少数与党」ですが、内閣支持率は82%(JNN世論調査)と非常に高い数字が出ています。
「少数与党で高支持率」の高市内閣。国会での高市総理の印象について、ジャーナリスト・武田氏は「外弁慶」と表現します。
「代表質問での高市氏の姿勢を一言で言うと、『内弁慶』ならぬ『外弁慶』。トランプ大統領や習近平国家主席への対応など、外交では非常に強気に出る。ところが議会では、少数与党なので非常に低姿勢で臨む。『各党とも』『野党とも』『他党とも』といった表現が目立ちました」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
【政治とカネ】“旧安倍派7人起用”に批判も「人事については開き直った答弁」

4日の代表質問では、立憲民主党の野田佳彦代表から「政治とカネ」「議員定数削減」「ガソリン暫定税率廃止」「企業・団体献金」などについて質問が出ました。
まずは、政治とカネの問題を見ていきます。立憲・野田代表と高市総理の答弁は次のとおり。
▼立憲・野田代表「政治とカネの問題は、けじめがついたと考えているのか」
▼自民・高市総理「二度と繰り返さない。厳しい姿勢で臨み、ルールを徹底的に順守する」
野田代表は、副大臣や政務官に旧安倍派が7人起用された点についても批判的に質問。対する高市総理は、「信頼を損ねたことは総裁としてお詫びしたい」としながらも、「不記載の問題について、当事者は会見などで説明し、努力が進められ、真摯に説明責任を果たしてきた」と述べました。
「つまり『説明責任は果たしてきた』と言ったあと『二度と繰り返さない』と言った。ある意味、人事については開き直った答弁。ここでは野党側から、かなり大きな野次がわいていました」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
【議員定数削減】総理大臣と自民党総裁…立場を分けて答弁

維新が連立の条件としていた「議員定数削減」についてはどうでしょうか?
▼立憲・野田代表「議員定数削減の方向性には賛成だが、比例区だけでなく、小選挙区と比例区のバランスを考慮すべきでは」
▼自民・高市総理「具体的な削減案の策定・実現に向けては、今後与党内、各党ともに真摯な議論を重ねていきたい」
「高市氏は、この件について所信表明演説では触れませんでした。今回野田氏から質問され、『総理大臣としての立場ではコメントを控えたいが自民党総裁として』と立場を分けて答弁を行いました」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
【ガソリン暫定税率廃止】「やや消極的な答弁」のワケは“財源”か

次は、ガソリン税の暫定税率です。本当に、年内に廃止されるのでしょうか?
▼立憲・野田代表「ガソリン税の暫定税率を年内に廃止すると、ここで明言すべきではないか」
▼自民・高市総理「与野党6党の実務者間では今年12月31日で廃止することに合意。政府としては、この結果にしっかり対応する」
「政党間で合意しているので、基本的には廃止で決まり。ただし、高市総理は『政党間でご議論いただきたい』と逃げを打っているところがあるので、本気で実行するかどうかはまだ分からない」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
棚上げになっている「財源」については…
「臨時国会は12月半ばで終わります。12月31日までに廃止すると言った以上、その間に財源の議論をしなければなりません。そこが、高市氏のやや消極的な答弁につながっていると見て間違いないでしょう」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
【企業・団体献金】「私達はあまりやりたくないが…」と消極的な姿勢?

最後に、企業・団体献金についてです。あまり積極的な姿勢は見られなかったようですが…
▼立憲・野田代表「企業・団体献金の受け取り先を、政党の本部と都道府県の組織に限定し、廃止に向けた第一歩を踏み出すべきでは」
▼自民・高市総理「企業・団体の政治活動の自由に関わるものなので、必要性や相当性については、よく議論する必要がある」
「ガソリン暫定税率よりも消極的だと、この答弁から分かります。『私達はあまりやりたくないが、国会で議論するならしてください』と」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
「誘惑に駆られますよね」年内の解散総選挙あるか?

外交が評価され、内閣支持率は82%。高市総理は解散総選挙に打って出るのでしょうか?
「誘惑に駆られますよね。今のうちに解散総選挙を行えば、自民・維新を合わせて過半数を取れる可能性がかなり出てくる。特に維新は政党の支持率も上がっています」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
しかし、高市総理自身は会見などで「解散している暇はない」と否定しています。
「ここで変に解散に打って出て、『言っていることと違う』と言われると、去年の石破氏のように負けてしまったりする可能性があるので、ここは非常に悩みどころです。この支持率が持てば、年内に解散したいという誘惑に駆られていることは間違いありません」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
高市総理の今後の国会運営について武田氏は…
「外交においては、トランプ大統領とマリーンワンで横須賀に行くなど、ある程度の批判を承知で『勝負』に出ていて、その姿勢が評価されている部分があります。ところが、国会内の議論になると、少なくとも4日の代表質問では、まるで勝負をしていない。少数与党なので仕方がないのかもしれませんが、外交という対決の場だけでなく、国会内という対決の場でももう少し勝負に出てくれないと、この支持率が長く続くことはないでしょう」(ジャーナリスト・武田一顕氏)
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