2025年11月03日(月)公開
高市政権は「国家前面主義」と橋下徹氏 「石破政権と何も変わってない」点にも注目促す 解散総選挙の有無は「高市さんと吉村さんとの信頼関係」【解説】
解説

「国会の古い慣習を変えるためには、ヤジだけでなく一つ一つを変えていかないと」。元大阪府知事・市長で弁護士の橋下徹氏は、高市政権発足直後の国会運営についてこう苦言を呈した。82%という高い支持率でスタートした高市内閣だが、その実態は歴代政権から変わっていない点も多いという指摘も。さらにクマやコメ、経済、現政権の動きをまとめると「国家前面主義」の特徴があると表現した。
「ヤジは地方議会でほぼ無くなっている」
高市総理の初の所信表明演説では、壇上に上がった途端に野党議員による野次が飛び交い、ネット上で批判の声があがったり、「ヤジは国会の華」と投稿されるなどの事態となった。国会のヤジについて橋下徹氏は明確に反対の立場を示した。
「反対派です。それはヤジだけが悪いということじゃなくて、国会の古い慣習を変えるためには、一つ一つ、こういう古いことを変えていかないと変わらない。立憲民主党のヤジが批判されていますが、公平性の観点で言うと、自民党のヤジもひどいんです。だから国会全体でヤジはやめようというふうにしなきゃいけない」
橋下氏自身も大阪府議会・市議会の野次に対して強硬な姿勢を取った経験があるという。
「僕も野次がひどかったから議会に申し入れて、もうそんなに野次があるんだったらもう出ないから、と一言も喋らないでずっと黙ってたときがあった。そしたら向こうから一緒に議論しましょうと言われて、いまは地方議会ではほぼないと思います」
パソコン持ち込みできず「国会改革やってもらいたい」
「議長――!って叫ぶやつなどもそう。議長を選ぶときの投票で1回の投票に1時間もかかる。参議院などボタンがついているんだから、パパっと投票してリアルタイムに票がわかるようにするとか」
本会議場へのパソコン持ち込みなど、非効率な慣習が残っていることも指摘した。
「もう本当に古い国会だから非生産的。本会議場に未だにパソコンを持ち込めないとか。だから野次だけを見るんじゃなくて、今の国会の古いやり方を変えていこうってことで野次もやめる。議長――!もやめる。投票もボタン使うとか、そういう国会改革やってもらいたいと思います」
支持率82%でも政党支持率は伸びず
JNNの最新の世論調査では、高市内閣の支持率は82%に上った。これは政権発足直後の支持率としては小泉内閣に次ぐ2番目に高い数字だ。しかし、政党支持率を見ると自民党は前回との差1ポイント、維新も0.3ポイントと大きく伸びていない。一方で野党はマイナスで、特に国民民主党はマイナス4ポイントという結果だった。
いっぽう、高い支持率を背景に、解散総選挙という選択肢はないのだろうか。
「この状況なら、解散総選挙をやったほうが自民党が勝つ可能性は高まります。自民党としては野党の準備ができていない方が勝てる、となっているとは思いますが、自民と維新の、これは法的な連立じゃないから、解散権の封じ込め、勝手な解散は止めてねという密約がないと連携できません、密約があるのは当然なんですが、あとは高市さんと吉村さんの信頼関係になると思います。」(橋下氏)
「全て国家前面主義」新政権の政策方針
新たな閣僚たち。小泉進次郎防衛大臣はクマ被害について自衛隊派遣の方針を示し、鈴木農水大臣は米政策を転換。小野田経済安全保障担当大臣は外国人政策の見直し、片山さつき財務大臣は責任ある積極財政を打ち出している。橋下氏はこれらの政策に共通する特徴を「国家前面主義」と表現する。
「大臣たちのいろんな動きをまとめると、国家前面主義なんですよ。国家がとにかく前に出る。維新は、自立した個人が最上位、そして自立した地域、国家っていうのは個人の生活を守る手段ぐらいの位置づけだったんだけど、今回の連立合意書では、自立した個人はすっとんで国家なんですよ。自立した国家。」
クマ対策への自衛隊派遣をみても「国家」なのだという。
「確かに今困ってるから自衛隊を派遣するのはわかるんですけども、本来クマ被害対策っていうのはその地域で。もし市町村で無理なら、周辺の東北地方とか広域連携の形で。それからハンターの人たちにもしっかりお金を渡しながら、地域で本来はやらなきゃいけないことなんだけども、もう地域ができないということになればすぐ国が出ますっていうのは国家前面主義かなと。」
米の政策転換についても同様の懸念を示す。
「米もそうです。農家さんの力を信じて増産してもらう、増産ができないと未来を感じませんから、若い人たちは就職しませんよ。それも国家が保障していくと、コメ券配るぐらいだったら現金を配って何に使ってもいいですよってしたらいいのに、完全に農家さんだけを守るっていうね。僕の意見だけど全て国家全面主義なのは高市さんの特徴です」
これに対し、行政学の専門家、中野雅至教授(神戸学院大)は、「個人より国家、ってこれはまさにその通りだと思います。ただ国家が前面に出ても今の政府が機能するかどうかです。本当に強い政府であれば国家主義で機能すると思うけれど、財務省とか、お金がないので国家主義と言ったところで何ができるのだろうか。」(中野雅至教授)
「石破政権と何も変わってない」物価高対策
支持率の高さを背景に期待値の高い高市政権だが、橋下氏は印象論で見るべきではなく、実は石破政権と何も変わっていない点もあると指摘する。
「実は石破政権と何も変わってないんです。というのは消費税の減税も棚上げしました。それから現金給付もやめると。ガソリン税の減税、年収の壁引き上げについても、石破政権のときに決まったことをそのままやるだけで、新しいものは年内には決まらないのではないか」
それは外交においても言えるという。
高市総理は、トランプ大統領との初の日米首脳会談を行った。80兆円規模の対米投資合意文書に署名し、防衛費については当初2027年度にGDP比2%としていたものを今年度中に前倒しする方針を明らかにした。また、公用車にアメリカ製のトラックを導入する方針も示された。橋下氏は、パフォーマンスとしては素晴らしかったと評価する。
「パフォーマンスを見た感じ、これはもう素晴らしかったと思う。やっぱりトランプさんとの強固な関係が築けてるなと。ですけども、石破政権と比べてかなりお土産もたせてます。防衛費GDP2%以上に上げるべき、僕は賛成ではあるんだけども、石破政権もここまで譲歩はしませんでした。米国製トラックを公用車に・・これはどうするんですか。日米の力関係からすればやむを得ない面もあると思うが、石破政権の時に、外交悪い、弱腰だとは言われていたけど、高市政権の方がかなり譲歩しているということも、我々は見ておかないといけない。」
「以前の発言を取り下げている面も」
中国との首脳会談についても、歴代政権と同じ対応だと指摘する。
「中国との力関係から言えば、この外交ラインが、日本としては精一杯だと思います。でも高市さんは相当中国にきついことを言っていた人だから、『今回も中国に毅然たる態度をとった』とか高市さんを熱烈に応援している人たちは言うんだけども、これは歴代政権と同じことですから。石破さんも同じで深刻な懸念を伝えている。」
むしろ高市総理が以前の発言を取り下げている点を指摘した。
「高市さんは政治家時代に言っていたことをどんどん取り下げています。高市内閣は村山談話に対し、あんなもん認められへんって言ってたのに、習近平さんから村山談話は継続するよね、って言われたときに何も言わなかった。それから韓国の竹島は日本のもの、と言ってるのに、韓国の大統領に何も言わなかった。ただそれ、日本の外交としてはしょうがない」
「でも高市さんたちの応援団はそういうことを弱腰外交だって言ってたんだから、高市さんを非難しないんだったら、これからの総理が同じことやっても非難しないでねと言いたいですね」
82%という高い支持率の高市政権だが、外交などでは現実的な対応を示している。橋下氏は印象論だけでなく、政策の中身を見極める重要性を示した。(2025年11月3日 MBS「よんチャンTV」)
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