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「幹事長に義理の弟の鈴木俊一氏、が一番の肝」麻生太郎氏と高市早苗氏が人事で取引? ジャーナリスト武田一顕氏の指摘「ある意味、二人羽織政権になっちゃうんです」

解説

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 自民党総裁選で勝利した高市早苗氏。今後の臨時国会で女性初の総理大臣に指名される見通しですが、逆転劇の裏に「議員票をコントロールしていた」麻生氏の動きがあった、と専門家は指摘します。義理の弟の鈴木俊一総務会長を幹事長に…といった人事の取り引きがあったというのです。 すると6日に、幹事長に鈴木俊一総務会長が内定、政調会長に総裁選で争った小林鷹之元経済安全保障担当大臣が内定、といったニュース速報が伝わってきました。麻生氏を『後ろ盾』に、高市新総裁は手腕を発揮できるのか?閣僚人事はどうなるのか?女性議員の登用は?ジャーナリスト武田一顕氏の見解などをもとにお伝えします。

「麻生太郎氏が議員票をコントロールしていた」

 自民党総裁選で、各候補者の得票数は以下の結果となりました。

 【1回目投票】
 高市早苗氏 183(国会議員票64 党員票119)
 小泉進次郎氏 164(国会議員票80 党員票84)
 林芳正氏 134(国会議員票72 党員票62)
 小林鷹之氏 59(国会議員票44 党員票15)
 茂木敏充氏 49(国会議員票34 党員票15)

 【決選投票】
 高市早苗氏 185(国会議員票149 都道府県連票36)
 小泉進次郎氏 156(国会議員票145 都道府県連票11)

 多くの人の予想を覆した高市氏の逆転劇。武田氏は、麻生太郎氏が議員票をコントロールしていたのではないかといいます。

 (武田一顕氏)「決選投票では、林さんなど他陣営の票が雪崩を打って小泉さんに流れるだろうとの予測があったんですけれど、小林陣営と茂木陣営の票が全て高市氏に乗っかった。それをコントロールしたのが、今回は麻生氏だった」

 なぜ麻生氏がコントロールできたのかというと、武田氏は、事前に幹事長人事をめぐり取り引きがあったからとみています。

 「麻生さんは、非主流派に甘んじて意志決定の場に入れない。だから何としても主流派に戻りたいということで、幹事長を自分のところから押し込む、それを唯一約束したのが高市氏だから、高市氏に投票した。だから結局、利害関係。(各候補者は)要職に入れますから、とは言うんですよ。だけど、幹事長に誰を入れますということは今の時代なかなか言わないのに、今回高市氏はどうしても当選したいから麻生氏と約束したわけです」

麻生派の狙いは?

 今後、党・閣僚人事はどうなるのか?現段階で分かっているのは…

 鈴木俊一総務会長:自民党幹事長(起用方針を決定)
 麻生太郎最高顧問:自民党副総裁(打診)
 小林鷹之元経済安保大臣:自民党政調会長(起用方針を決定)
 木原稔前防衛大臣:官房長官(起用方針)
 茂木敏充前幹事長:外務大臣(検討)

 (武田一顕氏)「幹事長も副総裁も麻生派から出るのはあまりにも露骨ですから、麻生さんは副総裁を辞退するかもしれません。一番の肝は、金も人事も握っている幹事長に、麻生氏の義理の弟である鈴木俊一氏を持ってきたこと。ここを唯一高市氏が約束した。自民党には政調会長というのもありますけども、最終的な政策の決定権はやっぱり幹事長なんですよね。政策も金も人事も握ってるところに、かわいい自分の義理の弟を、何としても要職にしたいというのが今回の麻生派の狙いです」

(注:鈴木俊一氏は、鈴木善幸元総理の息子で、俊一氏の姉が麻生氏の妻)

女性初の総裁 執行部に女性登用を増やすか

 内閣にも執行部にも女性を入れる、と総裁選告示日の立会演説会で発言したという高市氏。今後の女性の起用について武田氏はこう述べます。

 「自民党の最高幹部は党四役と言うんですが、そのうちの2人を女性にすると、これまで1人はありますが2人女性はありませんでした。ただ、自民党はもともと女性の数が少ない。その中で無理やり入れると、“女性だから”で、登用されると困る。ときどき会社でもありますよね。女性を女性を、とやった結果『あんまりこの人…』となってしまう可能性も出てきます」

 今回の総裁選では▽松島みどり元法務大臣、▽有村治子元女性活躍担当大臣、▽生稲晃子参院議員、▽小野田紀美参院議員、▽片山さつき元地方創生担当大臣、この5人の女性が推薦人に名を連ねました。総裁選当日は、松島氏が高市氏の隣に座り、その反対側には生稲氏が座って応援している様子も見られました。

 (武田一顕氏)「(隣に座ったから)それですぐ閣僚になるかどうかはわかりませんが、総裁選の候補者に近づくというのは、自分が権力を取りたい、大臣になりたいという欲求の表れですから、もしかしたら登用されるかもしれない」

「今回は党員票が効いたと真正面から説明しないと」

 行政学者の神戸学院大学・中野雅至教授は「僕は政局報道の手のひら返しの激しさにちょっと呆れている」と苦言を呈します。

 (中野雅至教授)「総裁選の前、麻生氏が差配できる票なんてほとんどないと政治ジャーナリストみんな言っていたわけですよ。それが急にキングメーカーって言い出したでしょ。政局報道、もういい加減にした方がいいと思います、そういう報道のやり方。僕は党員票が大きいと思うんですよ。」

 「それなのに、また麻生氏をキングメーカーとか新聞やテレビが取り上げるから、ますます調子に乗りますよ。それって政治が逆戻りするだけですよ。ちゃんと今回は党員票が効いたと真正面から説明しないと、何でもかんでも裏の政治の取り引きじゃないからね。(高市氏と小泉氏の)党員票がもう少し競ってたら、小泉氏に行った可能性もある。ここで議員心理がどう動いたかという話であって、高市氏が何をやるか見た方がいい。キングメーカーに縛られたら『縛られただけの存在やった』と報道すればいいんですよ」

 これについて武田氏は、麻生氏と政策の違う部分に、高市氏がどう出るかが注目点になると見立てています。

 「鈴木俊一氏も麻生太郎氏も財務大臣の経験者で、消費税の値下げには頑強に抵抗する人で、高市氏は消費税を下げたい。そういうところで出てくるわけですよね。それでも高市氏が消費税を下げると言うんだったら、麻生さんの影響力なんて実は、ってことになるけども、どうなるのかはこれからわかってくると思います。ある意味で『二人羽織政権』になっちゃうんですよ。政治的な力は麻生さんの方が上だから、人事を握られるとこうやって麻生さんが後ろで二人羽織でやってるというふうになりかねない」

 高市氏は今後どう動くのか。羽交い締めとなるなのか、それを振りほどいて自身がやりたいことをできるのか、見ていく必要がありそうです。

今後の動きは?

 10月4日と5日に実施されたJNN世論調査によると、高市新総裁に期待する人は66%(2024年の石破内閣発足時の支持率は51.6%)でした。取り組んでほしい政策は、物価高対策・景気対策・外国人対策が挙がりました。

 (武田一顕氏)「今度、総理になった後に初めての内閣支持率が出て、例えば66%とか70%とか高い数字が出ると、高市氏は今度、解散総選挙を考え始めます。今、衆議院では過半数を取っていませんから。そんなことも支持率を見ているとわかってきます」

 今後のスケジュールは次のようになっています。

 10月7日:自民党役員人事 連立相手を模索
 15日~?:臨時国会召集 総理大臣指名選挙 新内閣発足
 27日~29日?:トランプ大統領来日
 28日?:日米首脳会談予定
 31日:APEC首脳会議(韓国)

連立相手は?トランプ大統領との外交は?

 現在は少数与党の自民党。自公合わせて衆議院の過半数233まで13議席が足りません。13議席以上ある野党は立憲(148)・維新(35)・国民(27)ですが、自民公明にプラス1で連携していく可能性はあるのでしょうか。

 (武田一顕氏)「小泉氏が総裁に選ばれていれば維新だったんですけど、高市氏の場合、政策的に近いのは国民民主党。早速、二人羽織の麻生太郎最高顧問が、6日に国民民主党の榛葉賀津也幹事長と会って連携を模索した。あの2人は漫画を貸し借りする仲ですから、2人でまずは連携の前さばきをやっていると思います」

 現在自民党と連携している公明党については…

 「公明党の本音は、総裁選の5人の立候補者の中で高市氏が一番嫌だったんです。公明党の人に聞いたことがあるけども、当選する前の取材では、『高市氏だけは困る』と言ってましたから。だから今けん制しているんだけど、ただやっぱり連立を離脱する度胸もないから、公明党は非常に今困ってるとこです」

 10月末には、トランプ大統領の来日が予定されていますが、外交面については…。

 (武田一顕氏)「トランプ大統領には、高市氏はおそらく『私は安倍晋三の後継者だ』というのを売りにする。それより問題は中国あるいは韓国との関係がどうなるのか。靖国神社参拝をどうするのかとか、外交的にはいろいろな問題が山積しています」

2025年10月06日(月)現在の情報です

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