2025年09月26日(金)公開
10年後には校数が半減?女子大の未来はどうなる 共学化・募集停止が相次ぐ中「女子大宣言」で学生の確保を狙う大学も 専門家「大学側はアピールポイントを増やす必要がある」
解説
女子大学はピーク時には98校ありましたが、少子化や女性のキャリアの変化などによって共学化が相次ぎ、その数を大きく減らしています。 そんな中、9月25日、女子大学宣言をしていた「京都女子大学」が改革案を発表。この時代にあえて女子大学であり続けると改めて決意を表明しました。そこにはどんな意図があるのか?そして女子大の未来はどうなるのか?大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏への取材を含めまとめました。
共学化や募集停止する女子大
日本は現在、少子化が進んでいるため、大学全体が厳しい経営状況になってきています。特に女子大学は、1998年のピーク時に98校あったのが、2025年現在69校(石渡氏による)と、約3割減っています。
なぜ減少しているのか。まず、女子大は女性しか入れない大学のため、対象者は約半数になります。また意識調査では、女子高校生の約半数は女子大を志望しない(Studyplus トレンド研究所調べ)というデータもあるため、女子大の対象者はそもそも4分の1程度しかいないと考えられます。
そんな中、募集停止する女子大も増えてきています。例えば、神戸海星女子学院大学は、2024年度から募集停止。京都ノートルダム女子大学は2026年度から募集停止となります。
一方で、共学化という方法を取る女子大もあります。
▽神戸親和女子→神戸親和(2023年度)
▽園田学園女子→園田学園(今年度)
▽京都光華女子→京都光華(2026年度)
▽武庫川女子→武庫川(2027年度)
特に衝撃が走ったのが武庫川女子大学の共学化。大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏は「ここまで大規模な女子大学が共学化するというのは前例がなかった」と話し、実際に反対署名も集まっているということで社会に大きな影響を与えているということです。
京都女子大学は「女子大学宣言」を発表
そんな中、あえて“女子大学として生き残る道”を選んだのが「京都女子大学」。今年7月に「女子大学宣言」を発表し、その宣言について9月25日に説明がありました。
【7月に出された「宣言」の冒頭】
京都女子大学は、創立以来の建学の精神に基づき、女子大学であり続けることをここに宣言します。女子大学という環境だからこそ、性差にとらわれることなく、一人ひとりが対等な関係の中で学び合い、自立した“人”として成長することを可能にします。
石渡嶺司氏は、共学化という動揺が広がっている中、それを抑える戦略として「非常にうまい」と話し、「特に地方の女子高校生や保護者は安心感を求めて女子大に進学することも多い。こうした宣言がアピールポイントになるのでは」と評価しています。
京都女子大学・竹安栄子学長は、「実質的な男女平等が実現していない。それを実現するためには、当事者である女性ががんばらないといけない。その担い手を女子大学が育成し続けなければならない」と話しています。
では、実際に京都女子大学に通う学生はどう思っているのか?話を聞いてみると、こんな声が聞かれました。
(文学部3年生)
「女性だけで教育を受けたくて女子大を選んだ」
「英文を学んでいて、ジェンダーのことも学べていい」
「女子大は不安なことはない。就職率も高い」
(現代社会学部2年生)
「女子大は気を遣わなくて済むのがいいところ」
「“京女”というブランドがある」
「就職率も高いし女子大でも心配ない」
京都女子大学は会見で「Be the change! 変化を求めるのであれば自らも変わらなければならない」というスローガンのもと、新たな学部などを設置する計画を進めるということです。
2027年 食科学部
2028年 経営学部(仮)、大学院データサイエンス研究科
2029年 新学部設置構想中
2030年 大学院経営学研究科(仮)
そもそも「女子大」って?
そもそも女子大はなぜできたのか。戦前の旧制大学は一部例外を除いて男性のみが通える場所でした。
「女性も男性と対等な地位に」と津田梅子が1900年に創設した「女子英学塾」の理念を受け継いで、1948年に「津田塾大学」が設立されました。同じ年に「東京女子」「日本女子」「聖心女子」「神戸女学院」の5女子大が設立許可されたのが始まりということです。
国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、女性の大学進学率は1955年で2.4%(男性は13.1%)。2023年は54.5%の女性が大学に進学しているということです。
石渡嶺司氏によると、女子大学は大学設立時の社会情勢から「家政系」「栄養系」「教育系」「福祉系」が多いということです。「手に職」のこれらの分野は2000年代までの就職難の時代は学生にとって良かったといいます。しかし近年は、これらの職種の給料が比較的安いことに加え、キャリア構造の変化で女性は専門職から総合職に、男女関係なく就きたい職業に就けるようになったことで、こうした学部のニーズが減りつつあるということです。
石渡嶺司氏は「近年は幅広い学問を学びたいというニーズが高まり、新たな学部を作る必要がある」としつつ、一方で「学部新設にかかる費用は、億単位。従来の学部しか持たない中規模・小規模の女子大は苦労する」と話します。
女子大は今後さらに減少?「アピールポイントを増やす努力を」
石渡嶺司氏は、女子大はこの先10年でさらに半数(30校程度)になるのではないかと指摘。「経営の厳しい中小の女子大は、閉学するか、共学化して数を減らしていくだろう」と話します。
【女子大の規模 ※石渡氏による】(大は学生数8000人以上、中は4000人~8000人未満、小は4000人未満)
大 1校(武庫川女子)
中 11校
小 57校
ただ、共学化すれば成功というわけではないようです。2027年度に武庫川女子大学が共学化して武庫川大学になりますが、在校生やOGから反対の声が上がっています。
石渡嶺司氏は「過去10年に共学化した女子大13校のうち7校が今年度定員割れ。そのため大学側はアピールポイントを増やす努力をしていく必要がある」と話します。
時代に合った魅力をどう生み出していくか。各大学の今後の動きが注目されます。
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