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【財界激震の電撃辞任】新浪氏は潔白主張も...浮かぶ疑問点「サプリの"2回目の郵送"はなぜ行われた?」 大麻由来の2つの成分「CBD」「THC」とは?【専門家解説】

解説

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  9月2日、日本を代表する経営者の一人でサントリーHDの新浪剛史会長が電撃辞任し経済界に激震が走りました。 理由は違法サプリメントを入手した疑いで警察の捜査を受けた、ということですが、本人は合法のものだと説明しています。 本人が違法性を否定していて、かつ逮捕されていない時点での辞任。企業のリスク対策はどうあるべきなのか。そしてサプリメントの成分が違法なのか合法なのか、大麻由来の成分とは?購入時に気をつけるべきポイントなどをコンプライアンスに詳しい経営コンサルタントの小宮一慶氏と、薬物に詳しい元埼玉県警・科学捜査研究所の雨宮正欣氏への取材し、まとめました。

法律は"疑わしきは罰せず" 企業のコンプライアンスは?

 "疑わしきは罰せず"というのが法律の世界ですが、疑わしい時点で罰さないといけないのが企業コンプライアンスです。

 9月3日の経済同友会の会見で新浪剛史氏は「適法という認識」だとしています。

 捜査で違法薬物は自宅から発見されておらず、簡易の尿検査でも陰性でしたが、「疑惑を抱かれた時点でトップとしての資質を欠く」ということで新浪氏はサントリー側と協議のうえ「辞任」しました。

 新浪氏は1981年に三菱商事に入社。2002年、43歳の若さでローソンの社長に就任すると、東南アジアなども進出。国際化をすすめ11期連続の増益を達成しました。

 その後、サントリーHDの国際化を期待され、2014年には創業家以外では初めてサントリーの社長に就任。約10年にわたりトップを務め、去年1年間のグループの決算では、売上・営業利益ともに過去最高を達成しました。

 2023年3月からは経済同友会の代表幹事にも就任しています。

 今年の3月にはサントリーHDの会長にも就任しましたが、9月1日にサプリ購入めぐる捜査を受けサントリーHD会長を辞任しています。

「法令違反」「倫理違反」が売り上げに直結 リスク回避は早いほうがいい?

  “早すぎる辞任劇”について経営コンサルタントの小宮一慶氏に話を聞きました。

 小宮氏は「SNS時代のいま、消費者に直接モノを売る企業は、「法令違反」「倫理違反」などのスキャンダルでのダメージというのは売り上げに直結するのでとてもおそれている」と分析。

 最悪の事態を考え、損失を最小限に抑えるためにはどうしたらいいかと考えると、早め早めの対応というは仕方ないというのが経営の考え方だということです。

 企業からすると“現役会長”が逮捕・有罪は避けたいという考えですが、個人からすると“疑わしき”の段階での段階で処分は厳しい?のでは考えるかもしれません。

 小宮氏の推測では、素早い辞任の背景には以下の4つのキーワードがあるのではと分析しています。

「公人」 ▽経済同友会の代表幹事 ▽経済財政諮問会議の民間議員
「会長」 ▽会社における決定権は社長
「実績」 ▽サントリーHDの売上1兆円増 (2.4兆円(2014年)→3.4兆円(2024年))
「外様」 ▽サントリー初の“外部社長”
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 サントリーの初代社長は鳥井信治郎氏でそれ以降同族経営が続いていましたが、5代目の新浪剛史氏が外部から入り、再び創業家の6代目の鳥井信宏氏へと続いています。

大麻由来の2つの成分 合法な「CBD」と違法な「THC」

 今回の論点のもう1つ、大麻由来の「CBD」「THC」について見ています。

 新浪氏は「麻薬及び向精神薬取締法違反」の疑いで家宅捜索が入った段階で辞任しました。

 新浪氏は会見で、購入したのは(合法の)CBDサプリメントだと認識していると述べました。

 薬物に詳しい元埼玉県警科学捜査研究所・雨宮正欣氏によりますと、大麻草の数百ある成分のうち人体に大きく作用する主なものが「CBD」と「THC」の2つです。

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雨宮氏によると・・・

 ・CBD(カンナビジオール)は、合法で脳に直接作用せず、リラックス効果やリフレッシュ、ストレス解消などの効果があり、依存性はなく、痛み止め効果について議論が分かれるもの。

 ・THC(テトラヒドロカンナビノール)は、日本では違法で脳に直接作用し、陶酔感や気分高揚、感覚異常などの効果があり、依存性は強くはないものあり、医療用大麻としても利用される。

 合法の「CBD」と違法の「THC」のどちらだったのかが争点となっています。

「CBD」製品に「THC」が残ってしまうことも?

 海外では、合法の「CBD」、違法の「THC」どちらのサプリも存在しています。

 「CBD」は、リラックス効果などをうたい、サプリだけでなく飲料や菓子、化粧品などにも使われています。

 雨宮氏によると、わざとではないが「CBD」の製品には「THC」が混ざっていることがあります。植物から精製するときに、「THC」だけ取り除くのは手間でコストもかかるため、いい加減な製品だと残ってしまうことがあるということです。

 「CBD」製品には「THC」の含有量が厳しく決められています。

 油脂・粉末・・・0.0010%
 水溶液・・・0.000010%
 それ以外・・・0.0001%

潔白を主張も…浮かぶ疑問点

 新浪氏の会見での発言から今後の争点を見ていきます。

「アメリカにおいてCBDサプリメントを買いました」
→「合法」の認識

「知人が日本で持ち帰り自宅に送ったが、家族が捨てたと考えている」
→手元にない

「知人が、福岡県に住む知人の弟にサプリを郵送し弟が逮捕」
→新浪氏は知らない

 上記の会見での発言に疑問点が浮かび上がります。

「知人が日本で持ち帰り自宅に送ったが家族が捨てたと考えている」
→新浪氏の依頼で自宅に送ったのなら「到着を伝えていない」不思議

「知人が福岡県に住む知人の弟にサプリを郵送」
→捨てられたことを知らないのなら、なぜ2回目を送った?

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 雨宮氏は、家宅捜索令状をとるには裁判所の許可が必要で、捜査する警察も相手が“大物”とわかっているいて、今後は知人の証言やスマホの解析、毛髪検査などの捜査が行われる可能性があるとしています。

2025年09月04日(木)現在の情報です

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