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【新浪氏サントリーHD辞任】捜査ポイントは「LINEやメール」"ブツ"がある2回目のサプリ郵送が問題に...知人らとの『共謀』示す証拠は出てくるのか?【元検事の亀井弁護士が解説】

解説

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 9月2日に突如発表された、新浪剛史氏のサントリーHD会長辞任。発端となったのは、新浪氏が大麻成分を含む海外のサプリメントを入手した疑いで警察の捜査を受けたことでした。その新浪氏は、3日午後3時から代表幹事を務める経済同友会の会見に出席。自らの言葉で今回の件について釈明しました。元大阪地検検事・亀井正貴弁護士と、経済キャップを長年務め新浪剛史氏への取材経験を持つMBS中村真千子デスクの見解をもとに、捜査のポイントと経済界への影響について解説します。

「法を犯しておらず潔白」新浪氏は会見で何を語った?

 まず、3日に行われた新浪剛史氏の会見を振り返ります。

 (経済同友会代表幹事 新浪剛史氏)
 「このたびは私のことで皆さまをお騒がせしまして申し訳ありません、深く反省しております」
 「私は適法な商品と認識しまして、アメリカでCBDサプリメントを購入しました。これは市販されているものでして、本CBDサプリメントは日本でも某ブランドの同様の商品が売られていました」
 「同氏(知人)から『日本に私自身が持っていくから』ということになったので、お願いすることにした」
 「(知人が)福岡県在住の弟に郵送し、その弟に私の自宅に送るようにと依頼していたところ、その弟が逮捕された。弟に依頼していたために、私に対して警察の捜査があったと理解しております」
「私は法を犯しておらず、潔白であると思っております」

 ―――どうして適法と思って買った?
 「(商品に)書いてある内容をちゃんと読みましたし、その中に違法性のあるものが入っているという表記もございません。そういった意味で、私はこれは大丈夫と」
 ―――何のために購入したのか?
 「私は出張が多いものですから、時差ボケがすごく多い。私の健康を守っていただいている知人から強く勧められたということがまず第一です。アメリカの方が安いからという経済的な意味合いです」
 ―――辞任は納得のいくものか?
 「注意をしないといけないところで、結果的に私自身の手元にもないし、飲んでもいないのではありますが、こういったことで世間を騒がせているのは大変問題があったと感じている。そういう意味で辞任は納得している」

“経済界のドン”新浪氏の経歴

 新浪氏は1981年に三菱商事に入社。2002年、43歳の若さでローソンの社長に就任すると、「ナチュラルローソン」や「ローソンストア100」などを展開し11期連続の増益を達成しました。

 その実績を買われ、2014年には創業家以外では初めてサントリーの社長に就任。約10年にわたりトップを務め、去年1年間のグループの決算では、売上・営業利益ともに過去最高を達成しました。

 また、経済財政諮問会議の民間議員として政府に助言するとともに、2023年からは経済同友会の代表幹事に就任。“物言う経営者”として歯に衣着せぬ発言で存在感を発揮してきました。

「すごく存在感が大きい人」新浪氏の人柄は?

 「とにかくすごく存在感が大きい人」「インタビューには本当に丁寧に答えてくださった」と、新浪氏の印象を話すのは中村真千子デスク。新浪氏の知人が語る「常識にとらわれず、強いリーダーシップがある人」というイメージそのものだったと言います。

 (中村真千子デスク)「サントリー115年というタイミングで、新しい風を吹き込んでほしい、グローバル化も進めてほしいと招かれたのが新浪さん。最初は“外様”な感じ、よそから来た経営者ということで、社内でも若干引いた感じもあったそうですが、会社の方向性を示してグイグイと引っ張っていく姿勢や、飛躍的に業績を拡大させた実績などで信頼を得ていたようです」

 2日の会見で「二人三脚でやろうといったのに大変残念」と言葉を詰まらせた鳥井社長との関係については…

 (中村真千子デスク)「関係は良かったと聞いています。新浪さんがサントリーに来る直前、アメリカのビーム社を1.6兆円で買収する動きがありましたが、その際『失敗するわけにはいかない』と二人三脚で一緒に頑張ってきた、そこを乗り越えてきたという想いもあると思います」

“適法との認識”でサプリ購入「きちんと弁解できている」

 3日の会見で新浪氏は、アメリカ出張の際にCBDサプリメントを「適法との認識」で購入したと説明。海外出張による時差ぼけがあり、「健康を守ってくれる知人から強く勧められた」と話しました。アメリカで買った理由については、「アメリカの方が安いから」と述べていました。

 また、サプリメントが適法と判断した理由については、「内容を確認した」「体を見ていただいている著名な方も認めていた」と説明しました。この点について、亀井弁護士は「違法だと認識して入手」あるいは「違法のリスクを感じながら入手」した場合、罪に問われるケースがあると指摘します。

 (亀井正貴弁護士)「『これは大麻である』と認識していればアウト。『違法と疑われるものかもしれない』ものでも、違法薬物の認識があればアウトです。ただ、新浪氏は具体的に成分を特定して、『大麻成分は入っていない』と明確に否定しています。その意味では、きちんとした弁解ができているということになります」

捜査のカギは「LINE・メールなどのやり取り」

 新浪氏のもとには、CBDサプリメントが2回届いたのではないかと言われています。

 ▼1回目
 米国の知人→新浪氏の自宅に送った
 ⇒家族が廃棄したか

 ▼2回
 米国の知人→福岡の弟を経由→新浪氏の自宅に送ろうとした
 ⇒知人の弟が逮捕

 この知人の弟の逮捕がきっかけとなり、新浪氏に捜査が及んだとみられていて、新浪氏は2回目の郵送については「把握していない」と言及しています。亀井弁護士によると、問題になるのは1回目ではなく2回目だということです。

 (亀井正貴弁護士)「1回目については“ブツ”がないため絶対に起訴できない。2回目については、知人の弟が逮捕されているので“ブツ”があり、それが大麻由来であることが鑑定できている」

 この2回目の郵送で論点になるのは…

 (亀井正貴弁護士)「新浪氏がこの2回目に何らかの形で関与したか、あるいは、知人やその弟との間で共謀がなかったか、そこが今後の論点になります。それは同時に、大麻であると認識していたか否かという論点にもなります」

 捜査のカギとなるのは…

 (亀井正貴弁護士)「一番欲しいのはLINE・メール・メモなど、口頭ではないやり取り。知人・知人の弟・新浪氏の3者で共謀を示すようなものがあるか否かがポイント。『これを入手してください』『〇〇円で買ったので送ります』といったやり取りがなければ、新浪氏が“白”だと決められます」

「納得しないことにサインをする人ではない」

 3日の記者会見で「そもそもサプリメントを所持も使用もしていない」「日本国内で輸入を指示していない」と主張した新浪氏。サントリーを辞任した理由については、「法に触れる行動をとっていないが、大好きな会社に迷惑をかけたくない」と述べました。また、サントリーはサプリメントを扱っている会社であり、信頼を失わせたくないという考えがあったようです。

 (中村真千子デスク)「そもそも新浪氏は、納得しないことにサインをする人ではありません。その意味では、ご本人も『仕方がない』と思っているのでは。『潔い』『新浪さんらしい判断だ』と話している人もいました」

 一方、経済同友会の代表幹事は辞任せず、当面は活動を自粛。透明性の高い仕組みに判断を委ねるとしていますが、経済界への影響は大きいようです。

 (中村真千子デスク)「何人かの経営者に話を聞きましたが、経済界としてもかなりショックを受けているようです。また、経済同友会の代表幹事である新浪氏は大阪・関西万博の万博を運営する博覧会協会の副会長を務めています。今後、同友会に残るかどうか、それは万博の役職にも影響してくると考えられます」

起訴・不起訴の判断時期は「読みにくい」

 亀井弁護士は「8月22日に押収した物の解析は約1~2週間で終わるのでは」と指摘。起訴・不起訴の判断の時期については、「アメリカの知人女性の話もある、3者間の供述のやり取りもある。特に期限の縛りはないので、なかなか読みにくいですね」と述べています。

2025年09月03日(水)現在の情報です

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