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【神戸女性刺殺事件】5年前にも別女性に"つきまとい行為"繰り返す 弁護士「どう防ぐかすごく難しい問題」自分を守るためにできることは?護身用品のルールは?

解説

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 殺人の疑いで逮捕された東京都新宿区の会社員・谷本将志容疑者(35)。8月20日、神戸市のマンションで女性(24)の胸などをナイフで数回刺し、殺害した疑いがもたれています。 自分で身を守るうえで、スタンガンや催涙スプレーなど護身用品のルールは?専門家がおすすめする護身用品は?防犯アドバイザー・京師美佳氏への取材を含めて川崎拓也弁護士が解説します。◎川崎拓也:弁護士 刑事弁護に注力し企業法務も手掛ける 京都大学客員教授・大阪大学非常勤講師

谷本将志容疑者は5年前も女性につきまとい行為

 捜査関係者によりますと、谷本容疑者は、事件後、マンションから徒歩で立ち去り、タクシーに乗車。宿泊したホテルに戻り、スーツケースを持って再びタクシーで新神戸駅に向かい、新幹線で東京方面へ逃走したとみられています。

 一方、その2日後に東京都奥多摩町の路上で警察が身柄を確保した際にはスーツケースを持っていなかったということで、警察は証拠隠滅を図った可能性もあるとみて、事件前後の足取りを調べています。

 事件3日前に撮影された防犯カメラの映像。谷本容疑者とみられる男が女性(24)の勤務先近くを歩く様子が映っています。

 捜査関係者によりますと、同じ日に、谷本容疑者とみられる男が被害女性(24)とは別の20代女性の後をつけていたといいます。男は女性の後をつけ、マンションのオートロックをすり抜けるいわゆる『共連れ』で中へ侵入。女性は男の存在に気付いたため、エレベーターに乗るのを避け、けがはありませんでした。谷本容疑者の逮捕後に警察に情報提供があったということです。

 そして事件当日、谷本容疑者は約50分にわたって女性(24)の後をつけ、マンションのオートロックをすり抜けて侵入。エレベーター内で谷本容疑者が女性(24)を羽交い絞めにしている様子がモニター越しに目撃されていたということです。

 谷本容疑者をめぐっては、3年前に神戸市内の女性につきまとってマンションに侵入し、首を絞めるなどしたとして殺人未遂容疑で逮捕、執行猶予付きの有罪判決を受けていました。さらに、5年前にも別の女性のマンションに侵入し、つきまとい行為を4回繰り返したとしてストーカー規制法違反などで罰金の略式命令を受けていたことも新たにわかりました。

「振り返ってみれば保護観察をつけたほうが…」

―――川崎拓也弁護士は今回の事件をどう受け止めていますか?

 (川崎拓也弁護士)「本当に執行猶予でよかったのか、という問題がありますが、一方でなぜ執行猶予という制度があるのかというと、更生することが最大の目標。そのために社会と切り離すのがいいのか、社会の中で(執行猶予期間中に)もし犯罪を犯したら執行猶予が取り消され懲役、拘禁刑にのってくるほうがいいのか、ジャッジが難しかったとは思います」
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―――3年前の事件の判決文に「再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」という文言もありました。しかし結果的に執行猶予付き有罪判決でした。執行猶予とはどのような制度なのでしょうか?

 「執行猶予だけのときは生活に特に支障はないです。ただその期間に再犯をすれば、(執行猶予付きで)言い渡された判決が再犯の刑に足されることになります」

 「また、保護観察を付ければ、毎月、保護司に日常生活を報告するほか、変わったことはないかと声をかけてもらえる。そういった措置がつくこともありますが、それは裁判官の判断になります。(今回は)保護観察が付いていたほうがよかったのかなと、いまとなれば思いますが、なかなかリアルタイムで判断するのは難しい」

「エレベーターには原則1人で乗る」

 谷本容疑者をめぐる事件に共通しているのが、オートロックをすり抜けて侵入する“共連れ”です。

 事件の3日前、谷本容疑者とみられる男に後をつけられていた別の20代女性は、マンションに入ったあと男の存在に気づき、エレベーターに乗るのを避け、その結果けがはなかったということです。

 この行動について、防犯アドバイザーの京師美佳氏は、「非常に良い判断だった」と評価。このように後をつけられて不審だと思った際は、エレベーターには一緒に乗らない、外に出てコンビニやお店など人のいるところに行くのがよいとしています。

 8月20日の事件では、被害女性はエレベーター内で羽交い締めにあっていたということですが、京師美佳氏によると▽エレベーターには原則1人で乗る、▽ナイフを持っていたら言うことを聞くほうが被害を減らせる、ということです。

護身用品の所持は銃刀法の規制対象外だが…

 最悪の事態を回避するために行う防犯対策。しかし、護身用品を持ち歩くことは問題ないのでしょうか?川崎弁護士によると、スタンガンや催涙スプレーなどの護身用品は、銃刀法の規制対象外ですが、「軽犯罪法」により正当な理由なく外に持ち歩くことは禁止。正当な理由の判断は状況などで異なるということです。

―――スタンガンや催涙スプレーなどの護身用品、所持の場合と使用の場合での違いは?

 (川崎拓也弁護士)「まず、6cm以上のナイフは銃刀法違反にあたります。スタンガンや催涙スプレーなどは、持っているだけでは犯罪になりますが、正当な理由があれば犯罪にはならない。ただ、仮に正当な理由で持っていたとしても使用した場合、相手に対して暴行罪や傷害罪などが成立する可能性が出てきます。しかし、不審な相手などに対して正当に防衛するのであれば、正当防衛として免責される。それが過剰であれば、過剰防衛として処罰される場合もあります。ややこしいですが、持っているだけでは『軽犯罪法』だと思っていただければいいと思います」

―――もし本人が襲われると思って使用したが、実際は襲われていない、襲うつもりがあるのかどうかも確認できていないとき、どういう判断になるのでしょうか?

 「非常に難しい。犯罪の成立が否定されるときもありますが、極めて稀な状況。正当防衛が成立するときは、攻撃がありそれに相応する反撃ということになる」

 「護身のために持っておくことが犯罪になってしまうなら、皆さん所持できないですよね。それが許されるかどうかは正当な理由の有無で決まってきます。例えば、体格の大きい男性が昼間に人通りの多い場所で催涙スプレーを持っているのは正当な理由か、と言われたらそれはどうかなと。例えば、深夜に女性が1人で歩いていてストーカー被害にあっているということであればスタンガンや催涙スプレーを持っていても正当な理由だと言える。その線引きははっきりしないので、非常に難しい」

―――護身用品を家に置いておくのは?

 「家に護身用品を置いておくのは所持していないので、犯罪にはならない。しかし、その護身用品を持ち帰るとき所持しているのでそれがどういう目的だったのかを客観的にみていく。持っているものの能力によっても変わってきます。非常にジャッジが難しいです」

専門家おすすめは逃げる隙を作る「催涙スプレー」

 防犯アドバイザー・京師美佳氏によると護身用品は、逃げる隙を作れるため「催涙スプレー」がおすすめということです。一方でスタンガンはもし奪われたら相手の武器になる可能性があるため危険かもしれないということです。

 この催涙スプレーは、一度練習をしておくことが大切だといいます。天然の唐辛子成分のものを選ぶのがよいということです。一部の海外製の商品は失明・やけどのおそれがあるため、注意が必要です。

 護身用品がなくても、周りを見渡す、警戒しているというアピールをすることで抑止力にもなります。

2025年08月29日(金)現在の情報です

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