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【神戸女性刺殺事件】事件3日前~当日の「谷本容疑者とみられる男の足取り」独自検証 前日には10回以上「女性の勤務先周辺」の防カメに映る

解説

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 8月20日、神戸市中央区のマンションで24歳女性がナイフで刺され死亡した事件。殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者(35)は事件当日、勤務先から出た被害者を50分以上にわたって後から追い続けたとみられていますが、事件前の足取りも徐々に見えてきました。 MBSは今回、事件3日前から事件当日までの「4日間」の“谷本容疑者とみられる男の足取り”を独自検証。さらに、今後の捜査のポイントについて元大阪地検検事の亀井正貴弁護士に聞きました。

犯行計画や性的嗜好に関する証拠を捜査

ーーー8月27日朝、谷本容疑者が勤めていた東京都内の社員寮で家宅捜索が行われましたが、どのようなことを調べているのでしょうか?

 (亀井正貴弁護士)「犯行の客観的状況は防犯カメラ等の物的証拠で抑えられるのであまり意味がありません。大事なのは犯行動機。何を目的としたか、何を考えていたかという計画の内容です。

 事件の筋からしたら捜査機関はおそらく性的欲望と関係すると考えます。そうなるとネットなどで性的な動画などを検索していないかどうか、LINE・メールで関係者とやり取りをしていないか、場合によっては余罪があるかもしれないので日誌やメモで書いてないかなどを調べます。

 犯行計画で言うと、どこまで事件の筋書き・展開などを考えていたのかを示すような物的証拠などを調べていると考えられます」

事件3日前にも被害女性の勤務近くに?

 被害女性は事件当日、職場を出て郵便局に寄った後、阪神電鉄の西元町駅から神戸三宮駅へ。そしてスーパーで買い物をした後にポートライナーで貿易センター駅へ向かい、そこから自宅に戻りました。この間約50分間、谷本容疑者は被害女性の後ろをつけていたということです。

 取材班が入手した防犯カメラ映像には、事件3日前から、女性の職場付近の防犯カメラに何度も谷本容疑者とみられる男の姿が映り込んでいました。谷本容疑者は事件の3日前の8月17日に東京から神戸に来たということです。

【女性の勤務先付近の防犯カメラに谷本容疑者とみられる男が映った回数】
・当日(8月20日)…7回
・前日(8月19日)…10回以上
・2日前(8月18日)…2回
・3日前(8月17日)…1回

 亀井弁護士は、こうした状況から見える谷本容疑者の“計画性”について次のように言及しています。

 「犯罪を実行するために下見している可能性もあるし、凶器を準備している可能性もあるため、一定の計画犯罪を実現するための計画性はあります。しかし、証拠隠滅してばれないようにするところを含めた計画性で言うと、半分欠けているんです。ずさんで稚拙であると言わざるを得ない」

 犯行の後、新神戸駅まで移動して新幹線に乗って東京に向かい、そこから奥多摩町という東京都西部まで移動していた谷本容疑者。その際も再び防犯カメラに谷本容疑者とみられる姿が映っていて、亀井弁護士は「逮捕されると思っていないのではないかと想像できる。そこまで頭の回転が回っていないんじゃないか」と指摘します。

過去には類似事件で執行猶予付きの有罪判決 なぜ防げなかった?

 谷本容疑者は被害女性を約50分間尾行し、オートロックのかかった女性の住むマンションで、女性の後に続いて侵入し殺害したとみられています。

 新たに判明した情報として、事件3日前に谷本容疑者とみられる男が別の女性の後をつけてマンションのオートロックをすり抜けていたことも新たにわかりました。女性にけがはなかったということです。

 また、2022年には神戸市内の20代女性に対して5か月間つきまい、オートロックのマンションで5回、同じように“共連れ”で建物に侵入。この時は女性宅に押し入り首を絞めたということで、殺人未遂容疑で逮捕されています。その後の裁判で傷害やストーカー規制法違反などで執行猶予付きの有罪判決が出ています。

ーーー過去に有罪判決が出ていたにもかかわらず、なぜ再犯を防げなかったのでしょうか?

 「前回の判決は殺人未遂ではなく傷害・ストーカー規制法違反・住居侵入。傷害の重さでは実刑もありえますが、この罪名で初犯で実刑になることはほぼあり得ない。これが量刑相場なんです」

「保護観察を付けてもよかったのでは」

 2022年の判決では、次のように指摘されています。「住居侵入・傷害事件の翌日に謝って許してもらいたいと考えて被害者方へ赴こうとした経緯からしても、思考の歪みは顕著である。再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」

 「初犯でここまで踏み込む判定はなかなか難しいと思います。他にも何らかの事情があると思われる。以前にも同じようなことをやっているなどで再犯の可能性を指摘されている。思考の歪みが顕著であるというのは、おそらく犯罪実行までは向かうが、それ以外のところまで知恵が回っていないということだと思います。なので、2022年の判決では保護観察は付けてもよかったのではと思います」

ーーー保護観察というのはわかりやすく言うと?

 「執行猶予は出しっぱなしになるため自由になりますが、保護観察の場合は、保護観察所が関与して保護司が前科のある人たちを定期的にケアします。就労支援や教育的な指導をしていくということで、再犯を予防することはできるのではないか」

ーーー刑法犯の再犯者率は2003年が35.6%だったのに対して2023年は47%と、20年で11.4%も上昇しているという警察庁のデータもあるようですが?

 「犯罪の初犯は減ってると思いますが、再犯者が増えているのは就労の問題や様々な要因があるのではと思います」

動機と主観的な事実が今後の捜査のポイント

 亀井弁護士は今後のポイントとして「動機と主観的な事実」を挙げています。

 「事件の筋としては性的な要求の実現じゃないかと推測されますが、動機が何かを探っていく。物的証拠から供述を引き出す。それから被疑疑者は何を考えていたのか、マンションに侵入してからどういう展開までを予測していたのか。その後、逃走や証拠隠滅はどこまで考えていたのか。計画の時系列をどこまで考えていたかを供述と物的証拠で探っていくという捜査になると考えられます」

2025年08月28日(木)現在の情報です

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