2025年08月20日(水)公開
"令和のコメ騒動"収束は「2026年・27年産以降」か...専門家「約2年前の価格水準に戻ることはない」 新米が"不作"の見込みのなか備蓄米は継続販売へ メリット・デメリットは?
解説
全国で流通が始まっている、今年の新米。その価格が反映されたこともあり、スーパーで販売されるコメの平均価格は5kgで3737円(8月4日~8月10日)と195円値上がり、統計史上過去最大の上げ幅となりました。 一方、販売期限が迫っている備蓄米については、「約30万tの約1割、2万9000tのキャンセルが生じている(小泉農水大臣)」という業者の動きも。物流や精米で遅れが生じ、各社が一部の備蓄米をキャンセルしたとみられていて、こうした事態に農水省は9月以降の販売も認める方針を固めました。 備蓄米をめぐり何が起きているのか?新米流通でコメ価格はどうなるのか?流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員の見解をもとにお伝えします。
新米の影響か…ブレンド米が2週間ぶり価格上昇
農水省によると、8月4日~8月10日におけるコメ5kgのスーパー販売平均価格は次のとおり。
▼銘柄米:4239円
▼ブレンド米(備蓄米を含む):3190円
銘柄米は高止まりが続いています。一方、ブレンド米は、備蓄米放出後に一度下がったものの、新米出始めの影響か、2週間ぶりに上昇しました。新米が比較的高値で取引されているため、「今のうちに買っておこう」という心理が働いたとみられています。
東北・北海道が豊作だと「新米が少し安くなる可能性」
今年の新米が本格的に流通するのは、関西・関東では「9月上旬から」、東北・北海道は「10月上旬から」で、全国的には「10月上旬から」とみられています。
猛暑・水不足・カメムシの大量発生などの影響により、現時点では「不作」の見込みだということです。政府は、今年のコメ生産量を735万t(去年から56万t増)と見込んでいますが、実際にはそこまで収穫できない可能性が高く、質もまだ不透明だということです。
新米価格の見通しは「5kg4200円~4500円程度」で、2024年産並みか、やや高値になると、流通経済研究所・折笠俊輔主席研究員は見ています。その背景として、次のような点が考えられるということです。
▼不作への不安から確保競争が進んでいる
▼概算金(JAから農家に支払われる前払い金)が8月以降さらに上昇
▼水不足報道が相場を押し上げ
生産コスト上昇などの影響で、約2年前の水準には戻ることはないと折笠氏は指摘。一方、生産量の多い東北・北海道が豊作であれば、「少し安くなる可能性」はあるといいます。
コメ増産の効果が出るのは「2026年・27年産以降」
政府は「コメは足りていなかった」と認め“増産”に舵を切りましたが、この方針転換により価格はどうなるのか?折笠氏は、余剰分については需要喚起や輸出などの政策が必要だとしながら、増産により供給が需要を上回れば「米価高騰の抑制・安定化につながる」と評価しています。
ただ、「効果が出るのは2026年・27年産以降」と指摘。今年については、すでに作付けが終了しているため、新米価格への影響はないということです。
「古いコメを食べて新しいコメは備蓄」という“ねじれ”も?備蓄米が販売継続へ
備蓄米については、今後どうなるのか?現在の備蓄米の放出状況は次の通り。
▼買い戻し条件付き:24年産、23年産(古米)⇒計31万t売り渡し済み
▼随意契約
・22年産(古古米)20万t + 21年産(古古古米)20万t
⇒契約確定数:約30万t
販売:10万7000t
キャンセル:2万9000t
・20年産(古古古古米)10万t⇒未放出
このうち随意契約の備蓄米について、政府が8月末までとしていた販売期限を延長する方針を固めたことがわかりました。折笠氏は「期限を延長すれば販売できるのではないか」と見ています。
また、9月以降も備蓄米を販売継続するメリットとして、「安価なコメが9月以降も選択肢として残る」という点を指摘。一方、デメリットとしては、「新米より備蓄米が先に売れて新米が余る可能性」、つまり「古いコメを食べて新しいコメを備蓄する」という“ねじれ”を挙げています。
コメ適正価格は「5kg=3500円前後」と専門家
“令和のコメ騒動”はいつ収まるのでしょうか?折笠氏によると、「落ち着くのは早くても2026年・27年産以降。今年も高値が続く見通し」だということです。今後は「気候変動リスクを考慮し、高温に強い品種や新しい栽培法への対応が必要」とも話しています。
また、コメの適正価格について折笠氏は、「消費者と生産者の折り合う価格は5kg=3500円前後」で、これを達成するには、国・自治体による生産者支援が必要だと言います。特に、生産効率を上げるための支援が非常に重要になってくるということです。
さらに、日本のコメを守っていくためにも、消費者側が生産コスト増加に一定の理解を示すことが大切だと言います。
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