2025年07月25日(金)公開
混迷する石破総理退陣論 党分裂に最も危機感があるのは"経験者"の石破総理?ジャーナリスト・武田一顕氏の分析「石破さんは辞めるが(いまはまだ)辞めない」「心はもう折れている」
解説
7月23日に報道された総理退陣の見通しに関するニュース。そうした中、自民党本部では石破総理が麻生最高顧問・菅副総裁・岸田前総理の総理経験者と会談を行いました。会談終了後、石破総理は退陣報道を完全否定しました。 「退陣」するのかしないのか、石破総理の“本音”とは…。ジャーナリスト・武田一顕氏らに見解を聞きました。
党内から「下野するべき」との声も…
―――武田さんが考える石破総理の“胸の内”は「(そのうち?近々?)辞めるけれど…(今はまだ)辞めない」だと?
(武田一顕氏)「石破総理の周辺の人から聞いた話でも、もう総理は実は心は折れていると。石破総理としては、心が折れていて8月いっぱいで辞めるというニュアンスのことを周りに伝えていることは、どうも間違いがないようです」
「だけど、今辞めてしまうと政治日程的に非常に苦しい。元々8月1日がトランプ関税の交渉期限だったし、その後6日と9日には原爆の日、15日には終戦記念日があります。そして、TICADというアフリカとの会議もありますから、その間はしばらく辞められない」
武田氏は、自民党の中には野党に政権を明け渡した方がいいという「下野論」も出ているとし、「そんなことをやってもっと混乱したらどうするんだというところで今は辞めないという状況」と話します。
石破総理は「党の分裂」に危機感?
23日の「退陣報道」と石破総理の「否定」までの間に、歴代総理との会談が行われました。石破総理・岸田前総理・菅副総裁・麻生最高顧問の4人で行われたこの会談は約1時間20分に及びました。
石破総理は会談後、「強い危機感をみんなで共有したこと、党の分裂は決してあってはならないということなど、いろんなお話がございました」と述べました。
細かい内容については語られていませんが、武田氏は石破総理の「党の分裂」という言葉から「1993年の細川政権誕生」が連想できるといいます。
1993年6月、自民党の宮沢喜一内閣に出された不信任案で、自民党の一部議員が造反し、可決され解散という運びになりました。このとき、自民党が自民党・新党さきがけ・新生党の3党に分裂。
不信任案に造反し、離党した議員によって作られた新党さきがけ、新生党、その他野党6党と組んで、8党連立政権の細川政権が誕生しました。
―――この歴史が石破総理の考えに大きく関わっているという見立てですか?
(武田一顕氏)「自民党は元々、自由党と民主党という2つの政党が合わさってできた政党ですから、分裂しやすい特性を持っています。従って、今回も自民党が分裂して政権から転落するようなことは避けたい。これについて石破総理ら4人の会談で一致したということが、石破さんの発言の内容です」
―――1993年当時、石破総理は造反したうちの1人。また分裂してしまう可能性があるということを一番感じているのは石破総理?
(武田一顕氏)「そうです。他方で石破総理は1回党から出ましたから、快く思わない自民党の議員もいて、『出戻りは駄目なんだ』と。1回離党して、また戻ってきて、そして総理大臣になったという例は基本的にはない。石破総理自身が離党した経験があるからこそ、党が分裂することの恐ろしさを一番よく知ってる人の1人でもありますね」
田中角栄氏の言葉「逃げ出すことはしない」を実践?
石破総理からは「政治には一刻の停滞も許されない」という発言もありました。なぜ辞めると言わないのか?武田氏は、田中角栄氏の「逆境に強いと言うが、必ずしもそうでない。ただ逃げ出すことはしない」という言葉を実践しているのではと分析します。
―――ここで田中角栄氏の言葉を出した意図は?
(武田一顕氏)「石破総理にしてみれば、逃げちゃいけないんだと。ここで踏ん張らないと自民党が壊れて、日本が壊れてしまう。選挙で負けたんだからそんなこと知ったことではないと思う人もいるでしょうが、石破総理の心情としては、ここで踏ん張らないと駄目なんだと思っているということですね」
―――石破総理自身も田中角栄氏を尊敬していると聞きました。
(武田一顕氏)「そうです。石破総理は、田中角栄氏の派閥の事務所で働き始めたのが政治家人生としての第一歩です。そして、田中角栄氏の最後の弟子というのを任じているので、ものすごく尊敬してるんですよね」
8月まで総理大臣として出席する行事が多数
今後の主な政治日程を見ると、総理大臣として出席予定の行事が多くあります。
・7月28日 両院議員懇談会
・8月1日 臨時国会召集へ
・8月6日 広島原爆の日
・8月9日 長崎原爆の日
・8月15日~ 全国戦没者追悼式
・8月20日~ 第9回アフリカ開発会議(横浜市)
―――これらが終わった後の9月に総裁選、その後10月に総選挙なのではないかというのが武田さんの見立てですね?
(武田一顕氏)「私が聞いてる範囲内では石破総理の心はもう折れていますから、どこかの時点でやめるだろうと。ただ、それが今でいいのか、政権を投げ出してより混乱が大きくなることがいいのかというところで、夏の日程が終わるところで判断を示すだろうというのが今のところの大方の見方です」
「しかも8月1日に臨時国会が開かれます。本来は参院選が終わった後の議長や委員会を決めるだけの国会のはずですが、もしかすると野党が内閣不信任案を出すかもしれないとか、ガソリンの暫定税率について法案を審議しようとかいろいろなことを言ってますから。ここでもまだ未知数な状況が続いている」
全く読めない「ポスト石破」
―――“ポスト石破”は全く読めない?
(武田一顕氏)「全く読めないです。こんな混乱しているときに誰が火中の栗を…って思うじゃないですか。自民党総裁になったからといって、衆議院で少数与党なので、総理大臣になれるかもわからない」
「ただし、政治家というのは非常に変わった人たちで、こんなに混乱してるからこそ俺なら私なら何とかできるんだと思う人たちでもあるんですよ。おそらく前回の総裁選候補者の中で調整が進むと思いますけども、必ず自分ならこの混乱を収集できるんだと思う人が出てくることは間違いありません」
また、武田氏は「野党とうまく話し合える人材」をポイントに挙げました。
―――ジャーナリストの立岩陽一郎さんに聞きますが、転換期になることは間違いない?
(立岩陽一郎氏)「なぜこの人たちが俺だ私だと言ってるかというと、自民党を強くしたいから。良い悪い別として、自民党が選挙で55年体制のような一強状態を作りたいために、石破総理じゃ駄目だと言ってるわけです。日本が本当にいろいろな意味で制度が劣化してるのに、なぜこんなコップの中の争いをしてるんですかというところにみんな怒っているわけです。絶対失ってはいけないのは、自民党がどうなるかを議論するのではなくて、日本がどうなるかを議論する。その視点を絶対失ってはいけないと思います」
(武田一顕氏)「メディアの情報は玉石混交でいろんな情報が出てくるのが一番良い。ここは自民党寄り、ここは反自民党とか、そういう中で読者や視聴者が判断するというのが本当は一番健全な姿だと私は思います」
2025年07月25日(金)現在の情報です